ロビン・スタインバーグ
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依頼人との面会に 初めて刑務所を 訪れた時のことは忘れられません 私の背後で 金属製の扉が荒々しく閉まり 鍵のかかる音が 耳に響きました セメントの床は粘着性のシートに覆われて 一歩進むごとに 段ボール箱からテープが剥がされる時のように バリッと音がしました 外界とを結ぶ たった一つの小さな窓は 覗きみるには高すぎる位置にありました 小さい 正方形のテーブルが 床に固定され 金属製の椅子が テーブルの両側に一つずつ この時初めて体感しました ほんの一瞬のことでしたが― 収監されるとは どういうことなのか 駆け出しの公選弁護人であった当時の私は 心に決めました この気持ちを決して忘れないようにと ずっと覚えています その時の感情は依頼人 一人ひとりの自由を 勝ち取る戦いの原動力となりました 我が身の自由を勝ち取る思いでした

「自由」 アメリカ人の精神の根本であり 憲法にも記された重要な概念です それにもかかわらず アメリカは 自由を奪うことに慣れきっています 奴隷制に始まり 今日の大量収監に至るまで 自由を奪い続けてきました 驚愕すべき事実は 皆さんもご存知でしょう アメリカ人 一人当たりの受刑者数が 地球上のほとんどの国よりも多いという 事実のことです では この事実はどうでしょう アメリカではいつでも 50万人近くの人が 有罪判決がないにも関わらず 刑務所に収監されているのです 誰かの肉親であり 子である この人たちが 収監されている理由は ただ一つ 自由を買うだけの お金がないからです この自由の値段を「保釈金」と言います

保釈金はもともと 条件付き釈放の一種として 作られた制度でした 分かりやすい仕組みでした まず 被疑者が払えるだけの 保釈金を設定します 被疑者は支払います 後で出廷するように動機付ける— 担保のようなものです 保釈金は 刑罰の一種として 設計されたものではありませんでした 人を牢屋に閉じ込める手段として 設計されたものではありませんでした ましてや 司法制度を二段構造にするために 設計されたものでは到底ありませんでした 金持ち向けと それ以外 という構造です しかし まさにそんな構造に なってしまったのです

アメリカの地方刑務所の入所者のうち75%は 保釈金が払えないために収監されています ラメルも その一人です ラメルは 10月の肌寒い午後 地元サウス・ブロンクスで 自転車を走らせ 牛乳を買おうと市場に向かうところでした 警察官に止められたラメルは 呼び止められた理由を求めました 会話は口論になり 次の瞬間 彼は地面で拘束されていました 逮捕の罪状は「歩道で自転車に乗り 逮捕に反抗したこと」 彼は法廷に引き出され 500ドルの保釈金を言い渡されました でも ラメルは 500ドルも 持っていなかったのです そこで 32歳 父親でもあるラメルは 「ザ・ボート」と呼ばれる イースト川に繋留された浮動式の刑務所― 下水処理施設と魚市場に挟まれた 刑務所に送られました 聞き間違いではありません 2018年のきょうび ニューヨーク市に 川に浮かぶ牢屋船があって 収監されている人のほとんどが 保釈金を払えない 黒人や褐色人種の男性です

ちょっと考えてみましょう 数日間でも 収監されてしまうことで 何が起きてしまうのでしょうか まず 仕事を失いかねません 家を失いかねません 移民資格が危機に晒されます 子供の養育権だって 失いかねないのです 刑務官からの性的被害の3分の1は 収監から3日以内に発生します 自殺を含めた死亡事件の半数近くは 収監されたその週に発生します しかも 保釈金が払えず収監された場合 収監されてない場合と比べ 実刑判決を受ける可能性が4倍高く 服役期間も3倍長くなるのです 黒人かヒスパニック系の人に 保釈金が設定された場合 刑務所に収監され続ける可能性は 白人の2倍あります

アメリカの刑務所は 恐ろしい場所です 人間性が否定され 暴力的です ちょっと想像してみてください あなたは今刑務所にいて 500ドルの保釈金が払えません すると誰かがやってきて 釈放される方法を指南します 「罪を認めなよ」と言うのです 「家に帰れるし 仕事にも戻れる 罪を認めなよ 今夜 子どもにおやすみのキスができるぜ」 そこであなたは 同じ状況に置かれた人 誰もが選ぶ行動を取ります 罪を認めるのです 自分が本当にやったか否かに関わらず しかし これであなたは前科持ちです 一生付いてまわる記録です

保釈金を払えないという理由で 人を刑務所に収監することは 社会として行い得る 最も不当で 最も不道徳な行為の一つです しかも 費用はかかり 逆効果です アメリカの納税者が納める 税金のうち毎年140億ドルは 人を刑務所に収監し続けるため― 未決者の収監に使われています 1日あたり4千万ドルにあたります それなのに これだけお金をかけて 治安がよくなるわけでもありません 調査から明らかなのは 刑務所に収監された人は 出所後に罪を犯す可能性が その間 収監されていなかった場合に比べて 著しく高いということです

自由こそ 重要なのです 低収入者の共同体や 有色人種の共同体では何世代にも渡り 常識とされてきたことです 彼らは共同体の中で 資金を出し合い 愛する人の自由を買い戻してきました 強制労働や刑務所が登場してから ずっと続けられてきたことです しかし 刑事司法制度が肥大化して 数が追いつかなくりました アメリカでの収監者増加数のうち99%は ここ20年間での増加については 公判前勾留が原因です

私は 人生の半分以上を 公選弁護人として過ごし その間ずっと 何千という依頼人が 保釈金が払えないというだけの理由で 刑務所に引きずられていく様子を 間近で見てきました また 正義の話が 金銭の話に 飲み込まれてしまう様子を見てきました アメリカの司法制度全体の 正当性が疑われる事態です 私が主張したいのは単純なことです わかりきったことです しかし切迫していることです 自由こそ 重要であり 自由は 無料であるべきです

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でも どうやって実現すればいいのでしょう 私が10年以上前に 格闘していた問題です 私は 夫のデイビッドと キッチンテーブルに座っていました 夫も 公選弁護人です 中華のテイクアウトを食べながら この世の不正義を愚痴っていたところ ふと 夫が顔を上げて言ったのです 「保釈金の基金を作って 依頼人を刑務所から 保釈していくのはどうだろう」 その 思いがけない瞬間 アイデアが生まれました ブロンクス自由基金 (Bronx Freedom Fund)の誕生です

何もかもが初めてでした たくさんの人に言われました 馬鹿げた考えだ とか 資金を全損するぞ とか 自分で金を出していない依頼人は 出廷をすっぽかすんじゃないか とか でも 依頼人がちゃんと出廷したら? 刑事事件が終わると保釈金が 返金されることは 知っていました 戻ってきた保釈金を基金に戻して 次の保釈金に充てれば 資金が循環して どんどん保釈ができます 大きな賭けです でも 成功したのです

ここ10年の間 私たちは ニューヨーク市に住む 低収入世帯の保釈金を払ってきました そこから得た知見は 様々なことを気づかせる契機でした 人々が出廷する理由は何か 刑事司法制度はどういう仕組みで働くのか そこでわかったのは お金のために 出廷するわけではないということです というのも ブロンクス自由基金が 保釈金を払った後 依頼者の96%が無欠席で出廷したからです 被疑者が保釈金目当てに出廷する という考えを すっかり打ち砕きました これは強力な証拠です お金も 追跡用足首ブレスレットも 余計な監視や管理の仕組みも 必要ないという証明です 必要なのは 出廷催促状だけです いつ出廷すべきか教えてくれる 催促状でいいのです

他にも発見がありました 軽罪で起訴・収監された人のうち 90%は罪を認めます しかし 基金が保釈金を支払った場合 起訴の半分以上が取り下げられることが わかりました そして ブロンクス自由基金の設立から 現在に至るまでの間で 依頼人のうち 何らかの実刑判決を受けた人は わずか2%にも満たないのです

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ラメルは 1週間経っても 川に浮かぶ刑務所に入れられていました まさに全てを失う寸前で 罪を認めようとしたところに ブロンクス自由基金が介入し 保釈金を支払ったのです 今や 娘と再会できた彼は 刑務所の外から 無実を訴えて戦うことができました 時間はかかりました 2年かかったのです でも 最終的には 彼の公訴はすっかり取り下げられたのです ラメルにとってー

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ラメルにとって ブロンクス自由基金は命綱でした しかし 収監されている 他の多くのアメリカ人には 自由基金の助けは来ません 今こそ それを変えるべきです 今こそ 大きなことをすべきです 今こそ 勇敢なことをすべきです 今こそ 「大胆な」ことを すべきかもしれません

(笑)

うまく機能することが実証された この循環型の保釈金モデルを ブロンクスから アメリカ全土に広め 司法制度の最前線に攻め込みたいのです 誰かが拘留される前に

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計画を説明しましょう

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できる限りたくさんの人を保釈します それもできる限り迅速にです 今後5年間のうちに 公選弁護人や地域団体と協力し 最も必要とされる40の管轄区に 基金を設置します 目標は16万人の保釈です この計画が利用するのは 訴訟の終結後に 保釈金が戻ってくる仕組みです ブロンクスでの例では 1年のうち 同じ1ドルが 2回か3回 使いまわされます 強大な増力装置なのです 今日 寄付された1ドルは 最大15人の保釈を 今後5年間で助けるのです 私たちの計画は経験 知恵 リーダーシップ面での助力を この不正義を 直に経験した人たちから得ています

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保釈計画が実施される各地域に 保釈支援者のチームを設置します 熱意に溢れ 献身的な 地元の活動家から成るチームで 多くは収監経験のある人たちです 彼らの任務は 依頼人の保釈金を支払い 訴訟の過程の間 力になることです 依頼人の必要とする あらゆる資源や支援を提供するという形です 既に2つの地域で運営が始まっています オクラホマ州タルサ市と ミズーリ州セントルイス市です ラメルは 現在 ニューヨーク州クイーンズ郡の 保釈支援者になる訓練を受けています

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もうすぐ運営が開始される3地域は ダラス市 デトロイト市 ケンタッキー州ルイビル市です The Bail Project(保釈プロジェクト)は 前例を見ない規模で 保釈金制度と戦います 同時に 依頼人の体験談を 傾聴し 収集し 尊重し 敬意を表すことで 賛同者を増やしていきます そして決定的に重要な情報を 全国規模で収集し活用して より有効な方法を開拓します この抑圧の仕組みを 単に形を変えただけで 再生産することのないように です The Bail Projectでは 16万人を今後5年間で保釈することで 人々を収監から解放する非政府団体としては アメリカ史上最大規模となるでしょう

つまりー

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現行の刑事司法制度は 解体されなければいけません ただ この制度の中で 数十年過ごした経験から言うと 制度全体にわたる本当の改革には 時間がかかり 色々な働きかけが必要となります 私たち全員の関与が必要なのです 市民権弁護士や 共同体のまとめ役や 学者 メディア 慈善家 学生 歌手 詩人 そして 制度に苦しめられた人々の 声と尽力が必要です それに私は知っています 全員で団結すれば 大量収監問題に終止符を打てることを

でも 忘れてはならないのは 今 アメリカ全土の刑務所に 収監されている人たち この国の隅々にまでいる 保釈金が払えず刑務所にいる人たちは 今日 命綱を必要としているのです そこでThe Bail Projectの出番です 私たちには 公開が実証されたモデルと 行動計画と 増加の一途にある保釈支援者たちがいます 大きな夢に動かされ戦い続けるに足る 大胆さを持つ人たちです どんなに時間がかかろうと 保釈を一つひとつ勝ち取り続けます 真の自由と平等な正義が アメリカにやってくるその日まで

ありがとうございました

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