メアリー・ルー・ジェプセン
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18年前に脳の手術を受けて以来 — 脳科学に 夢中になりました 私は技術者です Googleの ムーンショット・プロジェクトに 最近加わり Xラボで ディスプレイ部門を担当しています 今日お話しする研究は それより前の Google社外での話です さて 脳の手術を受けると ある種の烙印が押されます つまり頭が悪くなっていないか — もし悪くなっていたとしたら 元に戻れるのか・・・ 脳神経外科手術を受けて 脳の一部を失ったので 対処が必要になりました 失ったのは灰白質ではなく 重要なホルモンや 神経伝達物質を作る 中心部のブヨブヨした部分です 手術を終えるとすぐに 毎日 飲まなければならない ― 12種類以上ある薬品の量を 個々に決める必要がありました もし飲まなかったら 数時間で死んでしまうからです この18年間 毎日欠かさず 薬の組み合わせや 調合を決定し それを理解しようと努めました 生きるためにです 何度も危険な目にあいました でも幸い私は 根っからの実験家なので 最適な投薬量を見つけようと 実験を続けることにしました 投薬量には明確な 目安がなかったからです 色々な調合を試して驚いたのは 投薬量のほんの わずかな違いによって 自意識や 自分が何者かという感覚 — 思考や 他者に対する行動が 劇的に変化することでした 特に印象的だった事があります 2か月に渡って 投薬量を20代前半の 男性に典型的な量にしてみたのです びっくりする程 思考が変化しました (笑) どんな時も怒りっぽくなり セックスのことばかり考え 自分が世界一の天才だと 思うようになったのです (笑) これまで そういう男性にも そこまででもない男性にも 出会ってきましたが 私の場合は少し極端でした ただ 驚いたのは 自分では大きな態度など とるつもりは なかったことです 本当は不安を抱えながら 目の前の問題を 解決しようとしただけなのに 行動には現れないのです 私の手に負えず 投薬量を変えましたが この体験のおかげで 男性の経験することが 理解できました それ以来 男性達とは 前よりうまく つき合っています 私が目指したのは ホルモンや神経伝達物質の 量を調整して 病気と手術を経た自分に 知性と創造性 — そして湧き出るアイデアを 取り戻すことでした 私は普段 イメージで考えるので イメージは重要でした つまりアイデアを思い描いたり 新しいアイデアを試したり シナリオをなぞるための 方法であるイメージを 取り戻す方法です この思考法は新しいものではなく ヒュームやデカルト ホッブズといった哲学者も 事物を同様に捉えました 彼らは心的イメージとアイデアを 同じだと考えたのです 現在は この考えに 反対する人も多く 心の働きに関する 議論も盛んですが 私はシンプルに考えています 私達の大部分にとって 独創的で創造的な思考の 中心にはイメージがあるのです 私は数年かけて 自分を調節することで かなり精巧で 分析的な基盤をもった 多くの鮮明なイメージを 取り戻しました 今取り組んでいるのは 頭の中にあるイメージを 即 コンピュータ画面に 表示する方法です 想像できますか? 映画監督は想像するだけで 目の前の世界を 映像化できるようになります 作曲家は頭の中から 直接音楽を取り出せます クリエイティブな人々にとって アイデアを光速で共有するという ― 大きな可能性が開かれるのです 実現するための 最後の障害は 脳スキャンの解像度を 上げることです 私はもう少しで 実現できると考えています その理由を 最先端の2つの 神経科学研究を元にお話しします どちらもfMRI つまり ― 機能的磁気共鳴 画像診断装置で 脳内を可視化します これはハーバード大の ジョージオ・ガニス他による ― スキャン画像のセットです 左の列は ある画像を見ている人の 脳をスキャンしたもの ― 中央は同じ人が その画像を 想像しているところを スキャンしたものです 右の列は 左と中央の画像の差分で ほぼ違いがないことがわかります 色々な画像を使って たくさんの人に この実験を繰り返してみると 常に同様の結果が出ました 画像を見ることと その画像を見ていると 想像することの間には ほとんど違いがないのです もう一つ実験を紹介します カリフォルニア大学バークレー校の ジャック・ギャラント他は 脳波を解読して 映像に変換することに成功しました ご覧ください 実験では被験者がYouTubeの ビデオを数百時間分 見ます 同時に脳をスキャンして ビデオ映像に 脳が反応する様子を 巨大なライブラリーに蓄えます 新たなイメージや人物 動物が映った 新たなビデオが流れると 新しいスキャン・セットが記録されます 脳をスキャンしたデータだけを使って コンピュータが新しいスキャンを解析し その人が実際に見ている映像を 推測して表示します 右はコンピュータが推測した映像で 左は実際に流したビデオです これはまさに驚きです ここまで来ているのです あとはただ解像度を上げるだけです ここで確認したいのは 実際に画像を見た時と その画像を想像した時では 同じスキャン画像が 得られるという点です これは現在 最も解像度が高い システムでスキャンされたものですが 解像度は ここ数年で 千倍向上しています もっと詳しく観察するには さらに解像度を千倍上げる ― 必要があります これをどう実現するか? いろいろな技術があります 頭がい骨を割って 電極を差し込む手もありますが 賛成はできません 新たなイメージング技術が 次々に提案され 私もいくつか開発しましたが 近年のMRIによる成果を考えると 検討が必要なことがあります この技術の進歩は 限界に達したのでしょうか? 一般的に 解像度を上げるには 磁石の巨大化が 必須だとされています ただ 磁石を大きくしても 解像度は少しずつしか向上せず 必要な千倍には達しません そこで考えました 磁石を大きくするのではなく 磁石の性能を上げてはどうだろう ナノサイエンスの分野では 次々に技術革新が起きていて 磁気構造に応用すると まったく新しい磁石が作れます このような磁石を使うと 脳全体の詳細な磁場のパターンを 捉えられます この磁場パターンを使うと ホログラフィのように 干渉構造を描き出せます そして それをずらしていけば 様々なパターンを 精密に制御できるのです 少し配置を変えると より複雑な構造を 描くこともできます 歯車を回して模様を描く おもちゃのようにです では なぜこれが重要なのか? MRIを改良する試みは 長年 磁石を巨大化する方向に 進んできました 一方 近年 解像度が向上した理由は MRIシステムの内部にある ― FM電波の送受信機における 符号化と復号化の方法が 革新を遂げたためです また均一な磁場を使う代わりに 構造化した磁気パターンと FM電波を組み合わせて 使ってみましょう 磁気パターンとFM電波の 周波数パターンの処理を 組み合わせることで 一回のスキャンで 抽出できる情報が 飛躍的に増加します こうして得た情報に 急速に進展する脳の構造や 記憶に関する知識を組み合わせることで 必要な千倍の解像度が 得られるのです fMRIを使えば 酸素を含む血流の量だけでなく ホルモンや神経伝達物質 ― 神経活動までもが 直接 測定可能になるでしょう これが実現したい夢です 私達は自分のアイデアを 直接デジタル・メディアに 書き込めるようになるでしょう 言語を介さずに 直接 思考を使って コミュニケーションをとる姿を 想像できますか? その時 何が 可能になるのでしょう? 私達は どうやって 生の思考を扱う方法を 学んでいくのでしょう? インターネットは 大きな意味を持つでしょう これは大きな課題です 思考やコミュニケーション能力を 拡張するために不可欠の 手段となるかもしれません 実際に このツールこそが アルツハイマー病などを 治療する鍵に なるかもしれません 私達は この方向に 進むほかありません 何年かかるかは 関係ありません 5年後か15年後か? でも そんなに時間が かかるとは思えません 皆で この道を進む方法を 探るしかないのです ありがとうございました (拍手)