ケヴィン・ケリー
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テクノロジーはどこへ向かうのか 少しお話ししたいと思います 新たなテクノロジーが 次々に到来し それが もたらすものには 驚かされます でも 実は テクノロジーの大部分は 思っているより ずっと 予測できます テクノロジーの仕組みには 必ず傾きがあるからです 特定の方向に働く力 流れがあるのです こうした流れは ワイヤーやスイッチ、電子にある― 物理、化学的な特性そのものに 由来するものです これにより同じパターンが 繰り返し生み出され このパターンによって 流れや傾きができるのです

これは 重力のようなものと 考えていただいても良いでしょう 谷間に落ちていく雨粒を 想像してみてください ひとつの雨粒が 谷間へと流れていく道筋は 予測できません どこを通るかなど分からないのです でも 大まかな方向性は 不可避なもので 下へ下へと向かいます テクノロジーにまつわる仕組みには 流れや必然性なるものが こうして刷り込まれているので 物事が だいたいどう進むのか 推し量ることができます ですから 大きな意味では こう言えるでしょう 電話の出現は 不可避であったが iPhoneはそうではなく インターネットは不可避だったが Twitterはそうではなかった

今 さまざまな流れが 同時進行しているわけですが そのなかでも特に重要だと思うのが なんでも かしこくする という流れです 私はこれを「認知化」 と呼んでいるのですが 人工知能(AI)としても 知られています 私はこれこそが 今後20年で 社会に最も影響を与える― 発展であり傾向、方向性、原動力の ひとつになると考えています

もちろん それは すでに始まっています 私たちはAIを すでに手にしていて AIは 目に見えないところで 動いています 病院の管理棟では AIがレントゲン画像を 人間の医者より正しく診断しています 法律事務所でも 法的証拠をくまなく調べるのに AIが使われ 人間のパラリーガルより よくやっています 皆さんが会場に来るときに乗った 飛行機の操縦にも AIが使われています 人間のパイロットが操縦するのは 7、8分だけで 残りはAIが操縦しているんです もちろん NetflixやAmazonでは 裏でAIが動いて いろいろお勧めをしてくれます 今は こんなところでしょうか

それから ご承知のとおり もっと先進的な側面をあらわす例として AlphaGoが世界トップ棋士に 勝利をおさめたことがあります でも それだけでは ありません ビデオゲームをすることは AIと対戦することでもあります さらに最近では GoogleはAIを訓練し ビデオゲームのプレイ方法を 学習できるようにしました ビデオゲームのやり方は すでに教えていたわけですが ビデオゲームのプレイ方法を自ら学ぶのは 新たな段階になります これが「人工知性」です 私たちは今 この人工知性を どんどん かしこく 高めていこうとしているのです

この大きな流れのなかで 十分認識されていない側面が 3つあります この3つのことを 理解すれば AIに対する理解も ぐっと深まるはずですし AIも受け入れやすくなるでしょう AIを受け入れなければ AIの舵取りなどできませんから 大きな流れを受け入れてこそ 実務的なことも動かして行けるのです

それでは この3つの側面について お話ししましょう 1つ目は 私たち自身の知性は 何が知性たるかを ほとんど理解していないことです 私たちは知能を とかく1次元で考えがちです 音で言うなら 音量がどんどん上がるようにです 知能指数(IQ)が まさにそうです ネズミのような 単純で低いIQに始まり つぎが チンパンジー 頭の悪い人と 高くなって行き 私のような 平均的な人間が来て それから天才といったように このIQだけで表される知能は 高くなる一方です これは 完全な間違いです これは知能ではありません 少なくとも人間の知能では ないでしょう 知能は むしろ いろんな音の調和に近いもので さまざまな認知機能で奏でられる音が 集まったものです

人間には 多種多様な知能があります 演繹的な思考や 感情的な知能 空間的知能など おそらく100種類くらいの知能を みんな 持っているのですが それぞれの知能の高さは 人によって違います そして動物は動物で また別の一式― さまざな知能をひと揃え 持っています 私たちと同じ機能を 持っていることもあるでしょう 動物も人間と同じように思考できますが 持っている知能の組合せが違うので 人間より動物の方が 優れている場面もあります 例えば リスの長期記憶は 本当に卓越したもので 木の実を埋めた場所を ずっと覚えていられますが それ以外の知能は より低いかもしれません

私たちが機械を作るにあたっても 同じように設計することに なるでしょう つまり ある種の知性は 人間より ぐんと高くするけれども ほかの多くは 必要ないので 人間には遠く及ばないまま という風にです 私たちは このようにして さまざまな知能を 人工的に寄せ集め より変化に富んだ人工的認知能力を AIに与えようとしているのです そして それはもっと 特化したものになっていくでしょう

計算においては 計算機の方がすでに 人間より かしこいですね 空間ナビゲーションは GPSの方が かしこく 長期記憶においては GoogleやBingが人間より上です 私たちは こうした様々な思考を 取り出して 今度は 自動車に 搭載しようとしています 自動運転のためですが そうするのも それが人間のように 運転しないからです 人間と同じようには考えない― そこがミソなのです 気が散ることもなければ コンロの火の消し忘れを 心配したり 会計学を専攻したら良かったと 悩んだりもしません ただ運転するだけです

(笑)

ただ運転するだけですよ? もしかしたら こんな宣伝文句で 販売されるかもしれません 「意識ゼロ」 その車には意識がないので さっき話したようなことに 関心はなく 気が散らないんです

つまり 私たちが やろうとしているのは できるだけ多くの種類の思考を 作り出すことなのです この空間を あらゆる種類の思考で いっぱいにしようと いうのです ビジネスや科学の世界では 難しすぎて 人間自身の思考だけでは 手に負えないような問題も 実際にあることでしょう そんなときは 2段階で対処します 新たな種類の思考を作り出して 私たちがそばで協働しながら とても大きな問題― 暗黒エネルギーや量子重力といった問題を 解いていくのです

つまり 未知の知能を 作ろうというわけです 「人工エイリアン」とでも 言えるかもしれません ある意味でね 違った考え方をする(think different)のに 役に立つはずです 違った考え方が 創造や富、新しい経済の 原動力なのですから

2つ目の側面は 私たちがAIを使うことで 次の産業革命が 起きようとしていることです 最初の産業革命が起こったのは 「人工動力」とも言うべきものの発明が あったからです それより前の 農業革命においては 何かを作るとしたら すべては人間の筋肉か動物の力を 使わねばなりませんでした それ以外に やりようがなかったのです 産業革命における 大きな革新は 蒸気や化石燃料を使って この人工動力を生み出し それを使って 何でもできるように なったことです ですから今では 高速道路を走りながら スイッチをポンと押すだけで 250馬力を 意のままに操れます 250馬力ですよ さらに そうした力を使って 高層ビルや都市、道路を作り 工場では 人力では到底 作れないほど 大量の椅子や冷蔵庫などが 生み出されるようになったのです こうした人工動力はまた 送電網を通じて すべての家庭や工場、農場に届けられ ただ 何かを接続するだけで 誰でも その人工動力を 買うことができます

これは 新たな革新の源 にもなりました 農場では 手押しポンプに この人工動力 つまり電気を合わせて 電気ポンプが生まれました そんな変化が 何千、何万と 膨れ上がる中で その公式が生み出したのが 産業革命でした 身のまわりの あらゆるもの 私たちが享受している この発展は その かけ合わせの産物なのです

そして今 同じことを AIでやろうとしています AIはネットワークを通じて 届けられますから あの電気ポンプを手に取って それに人工知能を足せば スマート・ポンプができます そんな変化が 何百万と生じれば 次なる産業革命となるのです 高速道路を走る車は 250馬力を積んでいましたが それに250の知力が加わって 自動運転車になります AIは 新たなコモディティ 新たな公共資源となります AIは「クラウド」という ネットワークを流通していきます 電気がそうして広まったようにです

そして かつて電化した あらゆるものを 今度は 認知化するわけです ここで言いたいのは これから出てくる 1万のベンチャー企業の公式は とてもシンプルなもので 何かに AIを加えるだけです この公式こそが 私たちが やろうとしていることです それによって これから 次なる産業革命を 起こそうとしているのです ところで 今 この瞬間 Googleにログインすれば AIを購入して6円で 100 回の処理をできます すでに手に入るんです

さて3つ目の側面ですが それは このAIに 体を与えることで ロボットができることです ロボットがボットになり 私たちが これまでやってきた 多くの作業をこなすことになります 仕事も 作業の集まりですから 私たちの仕事も 再定義されるでしょう 一部の作業は ロボットがするわけですから でも ロボットが入ることで 新たなカテゴリーができ 新たな作業も大量に 生まれることになります これまで必要だと 気づかなかったものです ロボットによって 必要になる新たな仕事― 新たな作業が生まれてくるのです ちょうど自動化によって 新たに作り出されたものの多くが それまで必要とは思っていなかったのに 今では なくてはならないのと 同じです ロボットは 人間から奪う以上の 多くの仕事を生み出していきます 大事なのは ロボットに託す作業の多くは 効率性や生産性という観点で 定義されるものであることです 肉体労働であれ 頭を使うものであれ ある作業が 効率性や生産性に 落とし込めるものであれば それはボットがやります 生産性はロボットのものです 私たちはとかく 時間の無駄遣いに長けていますから

(笑)

私たちは非効率なことが すごく得意なんです 科学なんて そもそも 非効率なものでしょう 次から次へと失敗することで 前に進むのです 試験や実験をして うまく行かないから進展するのであって それがなければ進歩しません 科学はそれ自体に 効率性があまりないことで 成り立っています 革新も 本質的には 非効率なことです プロトタイプを作って うまく行かない 機能しないものを 試すんですから 探検も 元来 非効率ですし アートも効率的ではありません 人間関係も効率的ではありません こうしたことに 私たちが引き付けられるのは それが効率的でないからです 効率性は ロボットのものです 今後 私たちは こうしたAIと 協働していくことになるでしょう AIは人間とは違う考え方をしますから

ディープ・ブルーが チェスの世界チャンピオンを破ったとき これでチェスも終わりと 思われていました でも 実際のところ 今の チェスの世界チャンピオンは AIではありません 人間でもありません 人間とAIのチームです 医療診断に最も長けているのは 医者でもAIでもなく 両者のチームです 私たちはこれから こうしたAIと協働し 将来は どれだけボットと うまくやれるかで 給料も決まってくるでしょう これが3つ目の側面で ロボットは私たちと違い 誰もが使うものだから 敵対するのではなく協働するものだ ということです 敵対するのではなく 協働していくのです

さて これからの未来は どうなるんでしょう? 今から25年先にいる人が 過去を振り返って 私たちがAIを語るのを 見たとしたら こう言うでしょう 「それはAIなんかじゃない インターネットだって 25年先に使っているのと比べたら ないのも同然だ」 現在 AIの専門家はいません AIには多額のお金が流れており 何兆円ものお金が つぎ込まれています 非常に大きなビジネスです でも 今後20年で期待される大躍進に 見合うだけの専門家がいないのです まだまだ始まったばかりです まだ すべてが始まって1時間 インターネットが始まって1時間 これから来たる未来が始まって1時間です これから20年後に最も人気を博し 誰もが使うようになる― AIを使った商品は まだ発明されてもいません つまり 皆さんも まだ間に合うということです

ありがとうございました

(笑)

(拍手)