クレイグ・ベンター
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以前、これらのプロジェクトに関してお話したと思います ヒトゲノムの解読や 新しいいくつかの遺伝子を発見することが どのような意味を持ちうるかという事です 私たちは、新しい出発点にいます 私たちは、生物をデジタル化してきましたが そのデジタル情報を用いて 生命のデザインや合成を行うという まったく新しい生物学の時代に 突入しようとしています

私たちはいつも、大きな謎について問いかけています 「生命とは何か」という問いかけは、多くの生物学者が 様々な観点から理解しようと していると思います 私たちは様々な手法で 生命をその最小構成要素にまで 切り刻んできました かれこれ20年近くデジタル化を進めています ヒトゲノムの全塩基配列を決定した時 生物学はアナログなものから一転して コンピューターで扱うような デジタルな世界に変化しました 現在私たちは、このデジタルな世界の中で生命を再生させる もしくは新しい生命を創造することが 可能かどうかを問いかけています

これは、マイコプラズマ・ジェニタリウムという 小さな生物のゲノム地図で 研究室の中で自己複製が可能な種の中で 最小ゲノムを持っています 私たちは、これ以上に小さいゲノムを 作れるかどうか調べています およそ500遺伝子の中から、100遺伝子の単位で 遺伝子を取り除くことに成功しました この代謝マップを見ると ヒトの代謝マップよりも 比較的シンプルです 信じてください、これでもシンプルなんです しかし、個別に取り除けるかどうか 全ての遺伝子を見渡してみると 生きた細胞を生み出す 見込みはほとんどありません そこで、私たちはこの問題を打開するには いくつかのもっとも基本的な疑問を問うために 構成要素を変化させられるよう 染色体を実際に合成するしかないと考えました そこで、私たちはまず 「染色体を合成することは可能か」という命題に取り組みました 果たして化学で 今までやった事がないような 巨大分子を作ることが可能なのでしょうか もし可能な場合、染色体を「起動」させることは可能なのでしょうか 染色体は、ただの不活性な化学物質に過ぎないのです 私たちの生命のデジタル化に向けた研究は 急激なペースで進展してきました

私たちの遺伝子コードを合成する能力は そこまで早くはないものの 着実に加速されてきています そして最近の成果は、指数曲線上に乗ります 私たちはこの研究を15年前から始めました 実際には、最初の実験を行う前に 生命倫理に関する審査を始めとする数々の段階を踏まねばなりませんでした 実験で分かったのは、DNAを合成することは 非常に難しいという事です 世界には、30から50塩基程度の小さなDNAの断片を 合成する装置が何万台も 存在していますが DNA合成は縮重的なので 合成されるDNA断片が長くなるほど 多くのエラーを含んだ断片が出来てしまいます そこで、これらの小さな断片を結合させ、全てのエラーを修正させる 全く新しい手法を開発しなければなりませんでした

これは、PhiX174ゲノムのデジタル情報を元にゲノムを人工合成した 私たちの初めての取り組みです これは、細菌を殺す小さなウイルスです 私たちは、DNA断片を設計し、エラーの修正過程を経て およそ、5000塩基程のDNA分子を 合成することに成功しました 最も興奮したのは、この不活性な化学分子を細菌内に 注入した時に、細菌がその遺伝コードを 自発的に読み込み、ウイルス粒子が 産生された時でした 次にウイルス粒子が細胞外に放出され 再び細胞内に侵入した後、大腸菌を殺したのです 私は最近、石油業界の方々と話をしましたが 皆さんこのモデルをよく理解して おられると私が言うと—

(笑)

彼らは皆さん以上に笑っていましたよ

これは、生体システムにおいて ソフトウェアが自身のハードウェアを構築することができる 状況に他なりません しかし、私たちはもっと大きなものを 作りたかったのです 細菌の染色体をまるごと作成したかったのです これは、58万文字もの遺伝子コードに相当します そこで、私たちはウイルスサイズの カセットとしてDNAを作り それらを実際に変化させることで 生きた細胞の 構成要素とは何であるか理解しようと考えました 染色体のデザインは決定的に重要であり コンピューター上のデジタル情報から 設計を始める為には その情報は非常に精確でなければなりません 私たちがはじめてこのゲノムの塩基配列を1995年に決定した時 その精度は標準的に、1万塩基につき、 1塩基の誤差が含まれるものでした 私たちが、再度配列決定を行った際 実際に30塩基 誤りを見つけました オリジナルの配列を使用していたら 人工染色体は起動しなかったでしょう 設計の一環としては 50塩基長の配列が、他の50塩基長の配列と 重複することで小さなサブユニットを 形成するようにしていることです それぞれの配列が互いに重なり合うように設計しなければなりません 私たちはこれにユニークな要素を加えました

「透かし」を入れたのです つまりこういう事です 遺伝コードは、A、C、G、Tの4文字です そのうちの3文字の組み合わせで およそ20のアミノ酸に対応します それぞれのアミノ酸には、一文字の記号が 指定されています これにより、遺伝子コードを用いて単語や、文章を (アミノ酸配列として) 書くことが出来るのです 私たちが最初に行ったのは、自分たちの名前を埋め込む事でした ある人々は詩を埋め込まなかった事に落胆したようです 私たちは、これらの断片を 酵素分解できるように設計しました これらの断片を修正しつつ、つなぎ合わせる酵素が存在します このような手順で、私たちはまず 5千から7千塩基長までの断片を用意し それらを繋ぎ合わせて 2万4千塩基長の断片にし このセットを元に 7万2千塩基長までの断片を作りました

それぞれの工程で、断片を多量に作ることで それらの配列決定ができるようにしました なぜなら、今ご覧に入れるように 誤差の生じない合成プロセスの構築を目指しているからです この工程が自動化されるレベルにまで到達できることを目指しています これは、まるでバスケットボールのプレイオフのように見えます このように、10万塩基以上もの巨大な断片が 合成される段階に入ると 大腸菌内ではたやすく合成されなくなってしまいます 分子生物学における最新手法が通用しないことから 私たちは他のメカニズムに目を向けました 生物には、自身のDNAをつなげ、修復する 相同組み替えというメカニズムが 存在します これはその例です 300万ラドの 放射線に耐えられる デイノコッカス・ラディオデュランスという生物がいます

図の上半分を見て頂くと、染色体が粉々になっていることがわかります 12時間から24時間後 染色体は以前と同じように修復されます 多くの生物種はこのような能力をもっています これらは完全な乾燥状態を生き抜くことが可能で 真空でも生きることが出来ます 私は、生物が宇宙空間に存在し、移動して、新しい水性の環境を 見つけ出す事ができることを確信しています 実際に、NASAはこういうことをいろいろ示しています

これは私たちがこれらのプロセスを用いて合成した分子の 実際の顕微鏡写真です 酵母菌のメカニズムを利用し 正しく設計したした染色体の断片を細胞内に導入しました 酵母菌はそれらを自動的に繋げ合わせます これは電子顕微鏡写真ではなく 光学顕微鏡写真です あまりにも巨大な分子のため 光学顕微鏡で見ることができます これらの写真はおよそ6秒の間に撮影されました

これはつい最近、私たちが発表した論文です これは58万塩基以上もの遺伝子コードで構成されています 人類によって生み出された最大の定義された分子であり 分子量は、3億以上です もし、スペース無しでフォントサイズを10に指定し印刷した場合 この遺伝子コードを 印刷するだけで、142ページ必要となります それでは、この染色体を始動させるにはどうすればよいでしょうか ウイルスの場合は非常に簡単です 細菌を扱う場合は、はるかに複雑になります 私たちのように 真核生物の場合も簡単です 細胞から細胞核を抜き出し 別の細胞核を入れるという 皆さんがご存知のクローン技術を使うのです 細菌や古細菌の場合は、染色体は細胞内に一体化しているのですが 最近、私たちは、細胞内の染色体を 別の細胞に完全に移植し、機能させることが できることを証明しました 私たちは、まず単一の微生物種の染色体を精製しました 大雑把に言うと、移植先と移植元は、ヒトとマウスと同じくらい異なる種です 次に私たちは、この染色体を判別できるように 新たにいくつかの遺伝子を加えました そしてタンパク質を全部取り除くため 酵素消化をしました 私たちイラストを見ての高度に洗練されていると ご理解いただけるかと思いますが この染色体を細胞内に加えた時の瞬間は驚くべきものでした この新しい染色体は見事に、細胞内に移植されたのです 実は、私たちは可能なのは この段階くらいまでかと 考えていましたが、更に先の過程まで取り組む事にしました

皆さんがご覧になっているのは進化の主要なメカニズムそのものです ほかの種から、2つ目や3つ目の 染色体を自身の細胞に取り込み 数千種類もの新しい特性を 即座に獲得した多くの種を 今までに発見しています 進化を、単一の遺伝子が一つずつ 変化するものであると考えられている方々は 生物学の大部分を見逃していると思われます

DNAを切断する制限酵素という 酵素が存在します 細胞内における既存の染色体には 制限酵素遺伝子は存在しませんでしたが 細胞内に加えた染色体には存在しました その制限酵素遺伝子が発現し 既存の染色体を異物と認識して切断した為 最終的には、新しく導入した染色体のみが 細胞内に存在することになりました 青色に染まっているのは 私たちが加えた遺伝子によるものです そして非常に短時間のうちに 元の生物種が持っていた全ての特徴は失われ 私たちが導入した染色体 いわば新しいソフトウェアによって まったく新しい生物種に生まれ変わったのです 全てのタンパク質は変化し 細胞膜も変化しました 遺伝子の塩基配列解析をしたとき 移植した染色体そのものでした

まるでゲノムの錬金術に聞こえるかもしれませんが ソフトウェアとしてのDNAを移し替える事によって 細胞の性質を劇的に変化させることが出来るのです これは生命の創造ではありません 35億年もの進化の上に作られた研究であることを私は先ほど言いました そして、私たちはもうすぐ このデジタルデザインを元に 膨大な種の分化に伴う 新しいタイプのカンブリア爆発を引き起こすことになるでしょう

なぜこのような事を研究するのでしょうか この研究は ニーズという点に関して言えば 理由は明確だと思います 次の40年間に人口は 65億人から90億人まで増加すると予測されています 私自身を例としますと 私は1946年生まれです 地球上には 現在生存している 1946年以前に生まれた人の 3倍の人がいます 40年後には それが4倍という数になります 65億人を対象として、全員に安全な水と 薬や、燃料を 提供することは困難な状態です 90億人になったら更に困難が予想されます 私たちは、50億トンもの石炭を消費し 300億バレル以上もの石油を消費します これは、一日1億バレルの消費量に相当します この状況を解決する生物学的プロセスや その他のプロセスを考えた時 それは、途方もなく大きな挑戦になるでしょう そして、当然のことながら、それらの 物質から大気中に二酸化炭素が 排出されることとなります

私たちは現在、世界中の発見によって およそ2千万の遺伝子データベースを持っていますが これらを私は、未来への設計要素であると考えています エレクトロニクス産業において、ほんの一握りの構成要素から 生まれた多様性に目を向けてみてください 私たちには、主に生物学的現実と 私たち自身の想像力により 限界が設けられています 私たちは今、「コンビナトリアル(組み合わせ) ジェノミクス」と呼ばれる DNAの高速合成技術を使った 研究方法を持っています 今では、一日に100万もの染色体を合成する 巨大ロボットを製造する能力もあります 2千万種類の異なる遺伝子を処理したり オクタンの生成過程を最適化したり 薬剤や新しいワクチンを 生成するために ほんの少人数の研究チームで この20年間の科学以上の 分子生物学的実験を行えます 様々なデザインの選択が可能となります 生存能力の向上をはじめ 化学物質や燃料の生成 ワクチン生産など、様々なデザインの選択が可能です

これは、私たちが開発している 生物のデザインソフトウェアの画面ですが 生物種の設計をコンピューター上で 椅子に座りながら取り組むことができるものです その生物種が実際どのような姿となるのかは、分かりかねますが その生物種の遺伝子コードがどのようかは 確実に分かります 私たちは、今、第4世代の燃料に関心を寄せています 最近は、トウモロコシからエタノールを精製することが 非常に効率の悪い実験であることを、皆さんもご存知のはずです 砂糖からもっと高付加価値の燃料である オクタンや、ブタノールなど 第2、第3世代の燃料が 近々登場することになると思います

一方、私たちが考える 食料の生産コストの増大と供給量の制限をかけない 効果的な生物学的手法は 二酸化炭素を原料にすればよいのです 現在私たちは、この目的に即した細胞を設計しており 第四世代の燃料を18ヶ月後には発表できると 考えています 日光と二酸化炭素を利用するのは一つの手法ですが (拍手) 私たちの発見によって 様々な別の手法も利用できるようになりました

これは、1996年に私たちが発表した生物種です 2.4キロメートル程の深海において 熱湯に近い水温の中で 生息しています この生物種は二酸化炭素を 分子水素をエネルギー源として メタンを生成します 私たちは、収集した二酸化炭素を 簡単に一カ所に集め それらを燃料に変換し この過程を繰り返すことが 可能かどうか研究を続けています

短期間のうちに 「生命とは何か」という命題の答えを 増やせると私たちは考えます 皆さんもご存知のように 私たちは全ての石油化学産業を 置き替えるという控えめな目標を持っています

(笑) (拍手)

ええ、TEDで出来なければ、どこでやれるでしょうか

(笑)

エネルギー源の主要な生産手法となることの他に 更に私たちは同じ技術を用いて ワクチンの即時生産手法の開発を行っています この年はインフルエンザの流行が記憶に新しい所ですが 私たちは、効果のあるワクチンを用意するまでに いつも一年遅れで 予算面でも不足です これは、前もって組み合わせワクチンを 準備しておくことで事態は変わると考えます 将来は以下のようになるでしょう 合成細菌、合成古細菌、そしていずれは登場するであろう 合成真核生物が 進化を促進させ 新しい進化系統樹を作ります 人間を改良するという目標は果てしなく遠い道のりですが 私たちの目標は それが実現する日まで 人類を生き延びさせることです ありがとうございました

(拍手)