カール・オノレイ
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昨年1年間を通じて 学んだことが事があります とても皮肉なことですが 「スロー」に関する本を出版すると 宣伝活動で「忙しく」なります 最近では 各所の都市の放送局で インタビューを受け 本の内容を要約してお伝えしています すべての人達が どうやってスローダウンするか 急いで学びたがっているからです CNNでは出演時間よりも メークの方が時間がかかりました これが現実ですから 当然ですよね スピードに縛られ

強迫観念のように 限られた時間で詰め込む 風潮があります 生活のすべてが 時間との勝負です 本にも記載しましたが キャリー・フィッシャーはこう言っています 即席の楽しみでさえ時間がかかりすぎだと(笑い) 我々は 何かを改善しようとすると スピードをあげるという方法をとります 速く電話する 速く読む 速く歩く デートでさえ 速くデートする風潮があります 元来 スローがコンセプトのものでさえ 速くする傾向にあります NYでスポーツクラブの前を通ったとき 新しいコースが宣伝されていました それはスピードヨガです 忙しい人にはぴったりです ヨガはしたいけど 20分ぐらいでという人です これらの極端な例は 冗談として笑えますが

気をつけなければならないのは スピードを重視する日常に潜んでいます 速さ優先の生活スタイルがもたらす 害を見落としがちです 速さの文化にどっぷりつかり 引き換えの代償に気付きません 日常のあらゆる側面 健康 食事 仕事 人間関係 環境 そして 社会における代償です それは時として 豊かな生活をせず 生き急いでいる私たちへの 警告となって 現れます これはしばしば 病気として表面化します 燃え尽き症候群や 体の拒否反応 もしくは 誰かと一緒にいても 時間に追われ 辛抱できず 平静を保てなくなり 人間関係がだめになるかもしれません

私への警告は 子供を寝かしつけるときに やってきました 「帽子をかぶった猫」を読むのですが ゆっくりと読むことに我慢できず 所々を 時には1ページ全部を とばしてしまうのです 息子は本を全部憶えているので 口論になります 一日の中で最もリラックスし 父として大切なわが子を 寝かしつけるという行為が 喧嘩になります 原因は私の速さと 息子の遅さの不調和です この問題はしばらく続きました 新聞記事を見ていて 時間節約のヒントという記事に 次のような本がありました 「1分間で済むベッドタイムストーリー」 今ではあまり賛同しないタイトルですが 当時の私の反応は 違いました 「なんていいアイデアだ」 「これで早く寝かしつけることができる」 しかし 有難いことに ふとおかしいと感じたのです 距離を置いて考えてみると 本当にそんな必要があるのか 息子との時間を削って スピードを重視する必要があるのか その時 飛行機に乗っていましたが 新聞を置いて 久しぶりに何もしないで よく考えてみました 降りるまでに決めたことがありました スピード偏重の社会を調査し 私たちにどんな影響を与えているのか

二つの論点が浮かびました 一つ目は どのようにスピード偏重になったのか 二つ目は スローダウンは可能なのか そして 受け入れられるのか スピード偏重にどのようになったか考えると まず頭に浮かぶ理由は 都市化 大量消費 労働環境 技術革新などです しかし これらに惑わされず より根本の原因を考えると 問題の核心に辿り着きます それは時間の概念です ある文化では 時間は 循環すると考えられています ゆっくりと循環し 絶えず更新し新調されるという概念です 西欧では時間は直線的です 時間は限りあるもので 絶えず失われていきます 使わないと失われてしまうという 「時は金なり」という概念です 心理的に私たちは 方程式を作っています 時間は有限で貴重だから スピードを上げよう 短時間でより多くのことをしようとします 日常の全てを レースに置き換えます そして そのレースには ゴールがありません このような考え方から 脱却することは可能なのでしょうか ありがたいことに 可能なのです 今 世界中で 速い方がいい 忙しいほうがいい という風潮への反発が起こっています

以前は考えられなかったことです 社会通念上 遅いことは悪いこととされていますが そうではない場合もあります 適切なときにスローダウンすることで よりよい成果が出るとわかってきました 食事 恋愛 運動 仕事など そして 生きるということもそうです 様々な場面で 見られるスローダウンを勧める 現象は いわば世界的な スロー運動といえます

スロー運動とはどういうものなのか 私なりに急いで お話しします まず食べ物です スローフードがブームですね イタリアから始まり世界に広がりました 現在50の国にわたり 10万人の会員がいます ゆっくりしたペースで食べ物を 栽培し 料理し 食することで もっと喜びと健康を 得ることができるというメッセージで成り立っています 有機農業の人気や 農業市場の再興からも 人々が忙しい時間枠の中で 食べたり料理したり することから脱却したいと 考えているのがわかります スローなリズムを取り戻したいのです スローフード運動から派生したものとして スローシティ運動があります  イタリアから ヨーロッパ全土に広がりました 都市の景観を見直して 住民がスローダウンをしやすくし 休息し 人とのつながりを増やそうという 運動です 交通量を減らし ベンチを置いて緑を増やすなど

スローシティーへの活動が 最終的には 哲学的な宣言になります 町の人に そして 世界に向けて 21世紀では スローが大切という宣言です 医療においても多くの人が その場しのぎの治療に 幻滅しています そして それらを 補完 もしくは 代替する スローで全人的な形態の 治療に注目し始めています これら多くの治療に結論は出ていません 個人的にはコーヒーのかん腸が 人気になるとは思いませんが しかし他の方法  針治療や マッサージ そして リラックスには 何らかの効果があります 多くの有名な医大が これらがどのように効いているのか 学ぼうとしています

セックスも忙しいセックスが多いです 最近 イッたときも・・・ いや そっちじゃなくて オックスフォードにですよ 店頭で雑誌を見ました その男性誌のカバーには 「30秒でいかせる方法」と書いてありました セックスでさえ 時間との勝負です 速いセックスが だめというわけではないですが スローなセックスから得られるものは 非常に多いと思います 感情的にも精神的にも より深く触れ合うことで より快感を 得ることができます ポインター・シスターズの歌にあるように スローハンドが大切ですね スティングが数年前に タントリックセックスに言及した際は 馬鹿にされましたが今では多くのカップルが ワークショップに行ったり よりスローなセックスを 求めています イタリア人は喜びを見つけるのが 上手ですが スローセックス運動が正式に始まっています

労働に関しても 北米は例外としても 多くの国で労働時間が 短くなっています ヨーロッパは労働時間を 短くすることが生活の質だけでなく 仕事の効率もあげるということが わかってきました フランスでの 週35時間労働制は 柔軟性がなく 早計だったのは確かですが 北欧は 仕事中毒になることなく 良好な経済状態を 保つことが可能という 証明しています ノルウェー スウェーデン デンマーク フィンランドは今 世界の上位6カ国以内にランクされています 労働時間はアメリカ人が 泣いてうらやましむほどです 国レベルではなくミクロレベルで 見てみると 多くの企業が 従業員の労働時間を 短縮するか 休憩時間を増やし 携帯やPCを切り 仕事の合間や週末に リフレッシュすることで 創造的な考えを 促しています

大人だけではなく子供でさえ 働きすぎです 私は今37才なので80年代中盤に 幼少時代を終えましたが 今日の子供は たくさんの宿題 家庭教師や課外活動で 比べ物にならないくらい忙しいです 私のサイトに届いた 胸の張り裂けるようなメールは 疲れ果てているという 若者からで 私に自分たちの親を説得し 全速力の生活から救い出してほしいとの お願いでした しかし今 アメリカのいくつかの町では 課外活動を禁止する日を 協力して設定することで 家族とゆっくり過ごすよう 促しています

宿題に関しても同様です 先進国では長年にわたり 子供を宿題漬けにしてきましたが 宿題禁止が広がっています スコットランドでは最近 私立の有名な進学校で 13才以下への 宿題を禁止しました 親たちは驚愕し子供の成績が 落ちることを危惧しましたが スローダウンすることが大切と 校長は説き伏せ 結果的に 数学と科学の成績は昨年平均の 20%増になりました また 英才教育の 代名詞となっている有名大学が 生徒たちの力量の低下に 気づき始めました その生徒たちは考えられないくらい 成績優秀で 課外活動も多くこなしています しかし ひらめきが そして 想像力が欠如し 夢がありません アイビーリーグや オックスフォード ケンブリッジ等の有名大学は 親や生徒にもう少しスローダウンするように進言してます ハーバード大学では 新入生に手紙を送り スローダウンして 一つ一つのことを 深く味わい学ぶことで より多くのことを得ることができると 伝えています 何もしないということでも 学ぶことができるとも言っており この手紙は「スローダウンしよう!」という題が付いています

このようなメッセージを見て 減らすということでより多くを学べ スローにすることで より良くなると 改めて感じますが スローダウンすることは容易ではありません スローの効果に関する調査をしている時 スピード違反で捕まってしまいました スローフードのレストランでの 夕食に向かう途中でした それはイタリアでのことでしたが イタリアの高速で運転したことがある人なら どれだけスピードを出していたか お分かりいただけると思います

(笑い)

なぜスローダウンするのは難しいのでしょう 理由はたくさんあります スピードは時に楽しいものです アドレナリンが出て病みつきになります 形而上学的には スピードは大きな深い疑問から 自分を守る手段です 忙しさで頭をいっぱいにし 健康や幸せ 子供たちの成長 国政について等 深く考えないように しているのです もう一つの大きな理由として 文化的なタブーが関わっています 私たちの文化でスローダウンは よくないことと見なしてきました スローは怠惰や 怠け者の代名詞です 「彼はスローだ」という言葉は 「馬鹿」と同義です

スロー運動の目的は タブーに立ち向かうことです もちろん スローが常に正しいわけではなく 悪いスローというものもあります ロンドンの25号線で 3時間半も 渋滞に巻き込まれました これは 悪いスローといえます しかし新しい考え方では 良いスローという革新的なことに 着眼しています 良いスローとはテレビを消して 家族とゆっくり食事をすることです また 仕事では時間をかけて 問題を様々な角度から 検証することです また 単純に ゆっくり自分の人生を 楽しむことです

本を出版してから 一番うれしいことは その反響です スローに関する本が 新しい世代に共感されることは 予想していましたが 業界紙に取り上げられ 大企業や組織も 興味を示してくれました 組織のトップの方々が スピード偏重の問題に 気づいて スローダウンする必要性を 感じています また 先進国だけでなく 先進国の仲間入りを果たそうとしている 新興国である 中国やブラジル タイやポーランドでも 同様にスロー運動の考えが 多くの人に共感を与えており メディアや市民間で 話し合われています 彼らにとって西欧諸国は 見習うべきものでもありますが そうでないところもあると感じているのです

つまるところ 私たちの前に立ちはだかる疑問は スローダウンすることは 本当に可能なのかどうかです 答えは はっきりと可能といえます その証拠として 私自身が スピード中毒から 更生できています いまだにスピードは好きです ロンドンに住んでますし 記者ですから 忙しさからくる アドレナリンを感じることは好きです スカッシュやアイスホッケーという スピード重視のスポーツが好きです しかしここ数年 心の中の亀とも共存しています

(笑い)

以前のように やみくもに背負いすぎない ようにしています スピード偏重でも なくなりました 時間が刻一刻と 迫りくる感覚は もう感じられなくなるほどになりました 今日の残り時間が迫っているのは見えています これらの結果として 私はより幸せに より健康に より生産的になることができ 人生をレースするのではなく 生きていると感じることができます そして 何よりもの成功は 人間関係が より深く豊かに強くなったこと だと思います

うまくいっているかは いつも子供を寝かしつける時に わかります スローへの回帰が始まった原点です 一日の終わりに 子供の部屋に入る時 腕時計はつけません パソコンも消します 子供のペースに合わせて本を読みます 子供たちは自分たちのペースを もっています 10分間のベッドタイムストーリーを 子供のペースで読んで聞かせると 突然 「今日学校で 嫌なことがあったんだ」と 話し始めます そして 二人でそれについて話すのです 以前は本を読み聞かせるのは To Doリストの一つであり 時間がかかるため 好きではありませんでした 今では一日の終わりのご褒美で とても大切な時間です ハリウッド映画の ハッピーエンドみたいですが 数ヶ月前に

本の宣伝ツアーのため 荷物を用意して 一階でタクシーを待っていると 息子が手作りのカードを持って 二階から下りてきました 二つのカードを重ねて留めて 好きなキャラクターが前面に 貼ってあります 受け取って 読んでみると 「お父さんへ愛をこめて」と 書いてあり 「ありがとう 本のツアーのお守りかな」というと 「違うよ お父さんは世界で一番 本を読むのが上手だからだよ」 やはりスローダウンすることは大切ですね

どうもありがとうございました