マルグレーテ・ベステアー
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1957年に立ち戻ってみましょう 欧州6カ国からの代表が ローマに来ていました 欧州連合(EU)を樹立する ローマ条約に署名するためです ヨーロッパは壊滅的な状況でした 世界大戦はヨーロッパから始まり それから人類が受けた苦しみは耐え難く 前例の無いものでした 彼らは 平和で民主的なヨーロッパを 人民のためのヨーロッパを 実現したかったのです

そして平和実現の為の多くの 礎の1つになったものが 欧州経済共同体でした 当時 既に彼らは 市場を 放って置くと 大企業やカルテルの私有財産と なってしまうということに 気付いていました そうして顧客のニーズではなく いくつかの大企業のニーズを満たす訳です

ですから1957年 初日から 欧州連合(EU)は 公正な競争を守る規約を用意しました それは競争が 企業の業績に基づくということ つまり製品の品質や 価格や 提供するサービスやイノベーションで 競うということです それが業績による競争です そんな市場でなら誰にでもチャンスがあります 私の 競争政策担当欧州委員としての仕事は ヨーロッパで企業活動をする者が そのルールを遵守するのを 担保することです

では一歩離れて見てみましょう 何故 競争にはルールが必要なのでしょう? 企業がただ競合すれば良いのでは? 私たち消費者にとっても それは歓迎すべき状況では? 企業が自由に競争すれば 競争が増えるので 品質が向上し 価格は下がり 技術革新が生まれるのですから 確かに 大抵はそうなります でも問題は 企業にとって時に 競争は不都合だということです 競争がある限り レースには終わりが無く ゲームが 勝って終わるということはありません どれだけ過去に優位に立っていても 常に誰かが 取って代わろうと虎視眈々と 狙っているという訳です ですから 競争を避けたいという誘惑は 強力です 古くはアダムとイブの時代から既に このような動機はありました もっとお金が欲しいという欲望や 市場での地位や その恩恵を失うことへの恐れなどです

欲望と恐れが 権力に加わると 危険な組み合わせが出来上がります 政治にもそれを見ることができます 世界の一部では 欲望と恐れが理由で 権力にある者が その座を手放さなくなるということになります 私が民主主義を好み 賞賛する理由の一つに 規範があります それがあるお陰で リーダーは選挙で負ければ 権力を手放すのです 競争法は 市場で同じような働きを担い 欲望と恐れが 公正さを凌駕しないように見張ります なぜならそうした法は 企業が不当に競争力を削ぐ為に 権力を不当に行使するのを防ぐものだからです

車を例に考えてみましょう 何千というパーツがあり シートの詰め物から 電気系統を繋ぐ配線や電球 そうしたパーツの多くについて 世界中の自動車製造業者たちは たった一握りの部品メーカーに頼っています ですから それら部品メーカー達が談合して 価格を固定したくなるのも分かりますね しかし そうなれば 車の価格には悪影響です これは現実問題です 現に欧州委員会は 今までに7つの 車両部品メーカーカルテルを摘発し 今もなお捜査を続けています ここアメリカでも司法省は 自動車部品市場を捜査しており これまでに類を見ない 過去最大の犯罪捜査だと 表明しました 競争法が無ければ 捜査もできず このような談合を食い止めることができず 車の価格が上がるのを 眺めるだけだったでしょう

しかし 公正な競争を 台なしにできるのは 企業だけではありません 政府も同様です 不公平に選ばれた一握りの企業だけに 国家補助を与えることで 公正な競争を阻害するのです 政府が企業に国家補助を 与えることがありますが 元はと言えば納税者のお金です 元はと言えば納税者のお金です それは 例えば優遇措置といった 税制の特例という形で 過去にフィアット スターバックスやアップルが 幾つかのヨーロッパの国々から得ています そうした国家補助による税優遇措置は 企業の公正な競争を妨げます このような国家補助が意味しうるのは 市場で成功する企業とは 最も国家補助を受ける 最も政府とのコネクションを持つ企業で 本来 成功すべきである— 消費者の利益に奉仕する 企業ではないということです ですから時折 我々が介入し 競争が適正に行われているかを 確認する必要があります そうして我々は 市場が公正に働くように導きます 消費者は競争により 公正な価格を要求する力を得られるからです もし手頃な価格や 期待に応えるサービスを 提供できなかったら 顧客は他へ行ってしまうと 企業は知っています

そうした公正さは私たちが考えるよりも 遥かに重要なことがあります 常に政治を意識しているという人は ごく僅かです 選挙に行かないこともある人もいるでしょう でも私たちは皆市場に生きているんです 私たちは日々市場と接しています 私たちは企業に 裏で価格の談合を しないで欲しいと考えます 勝手に市場の取り分を 分け合う取り決めをしたり 1つの企業が 競合他社を締め出し 彼らの市場での可能性を 奪ったりしないで欲しい

そんなことになると 私たちは誰かに騙されたという気がして 市場に無視されたり 軽んじられたと感じて 私たちの市場への信頼は揺らぎ さらには社会への信頼も 揺らいでしまいます 最近の調査では 2/3以上のヨーロッパ人が 競争不在による悪影響を感じると答えました 電気料金は高すぎ 必要な薬の価格も高すぎ どこかへ バスや飛行機で旅行する時も 実際には選択肢がある訳では無く インターネット・プロバイダーの サービスも良く無いと つまり 市場は消費者を 公正に扱っていないと感じていました そうしたことはとても些細に思えますが これらは人々に「世界は公正な場所では無い」 という気持ちを抱かせます そして誰にとっても 平等だったはずの市場は 数社の力のある企業の所有物であるかのように 見えてしまいます

しかし市場と社会とは違います 当然 私たちの社会は 市場よりももっと複雑です ですが市場における信頼の欠如は 社会に悪影響を及ぼし 私たちの社会への信頼も損ないます そして信頼は 最も重要なものなのかも知れません 私たちは互いに対等な立場に立って 初めて互いを信頼できます 皆が平等にチャンスを得る為には 皆同じ基本的ルールを 守らなければなりません もちろん 誰かより成功している 人々や企業はいつでもいるものです でも成功が 競争する前から 与えられている社会は 信用できません

このために競争法が必要になります 市場が公正である時のみ 企業はその業績によって競争でき 市民が安心して 自分が主導権を握っていると 感じられる為に必要な信頼や 社会が機能するための信頼が築けるのです 信頼を欠いていては あらゆることが難しくなるでしょう 私たちは赤の他人を信用しなければ 日々 生活すらできません 銀行を信用し 預金をしたり 工務店を信用し 家を建てます 配線を直す 電気技師を信用し 病気の時は医師に診てもらいます 言うまでも無く 路上では他のドライバーを信用します ご存知の通り 皆クレイジーなのに 私たちは彼らが正しい行動をとると 信じるほか無いのです そして私たちの社会が発展すればするほど 信頼が重要になり それを築くのも難しくなります それが現代社会のパラドックスです これが特によく当て嵌まるのは 技術が 私たち相互の関わりを 変えてしまう場合です もちろん ある程度は技術が 共有経済を実現するような 評価システムなどにより お互いの信頼を築く手助けをしてくれます しかし 技術は全く新しい課題も負わせます 他人ではなく アルゴリズムやコンピューターを 信じるよう 人々に求めたりする時に—

もちろん私たちは皆 新たな技術の恩恵を 受けるし 有難いと思います 良いところはたくさんあります 自動運転車は障がいを持つ人々の 自立を支援できます 私たちを助け 効率の良い資源の利用を手助けしてくれます 莫大な量のデータを処理するアルゴリズムは 医師が私たちに より良い治療を施すことなどで役立ちます しかしその背後にある企業を信頼できなければ 誰も医療データを他人に委ねたり アルゴリズムが運転する車に 乗ったりしないでしょう そしていつもその信頼がある訳ではありません 例えば こんにち 1/4以下のヨーロッパ人達は オンラインビジネスが彼らの個人情報を 保護しているとは考えていません

でももし テクノロジー企業の公正さを 人々が信頼できたら どうでしょう? もしそうした企業が 競合相手を力により締め出すことでなく— 例えばライバル社のサービスを 検索結果で見つけられなく細工して 自社に有利に 計らうようなことでなく より良い行動を取ることで 消費者の役に立つことで 競争に参加するとしたらどうでしょう? もしアルゴリズム自体に コンプライアンスが 組み込まれて設計されており アルゴリズムが働き出す前に必ず競争法を 学ぶ事になっていたらどうでしょう アルゴリズムが 談合したりブラックボックスの中で カルテルを作ったり できないように設計されていたら?

規制と競争法があれば これを実現できます そうしたルールが 新しい技術が人々にとって公正なものであり 皆が平等に競争できる— そうなるように計らうのです そしてそれが 本物のイノベーションが繁栄し 社会が市民の為に発展するための 信頼を築くよう後押しするのです 信頼は押し付けられるものではなく 努力して得るものです

EUが始まったばかりの頃 60年前— 私たちの競争法は 信頼を築く手助けをしました それから多くの変化がありました 6人の代表達が スマートフォンの誕生を喜んだかどうかは 分かりません しかし現代でも 当時と同様に 競争が皆の市場を機能させます それで 私は本物の公正な競争が 信頼を築く為に 社会の最善を導き出す事に 欠かせない役割を果たすものであり それが市場を皆のために機能させるための 競争法の遵守から始まると考えるのです

ありがとうございました

(拍手)

ブルーノ・ジュッサーニ: ありがとうございました ブルーノ・ジュッサーニ: ありがとうございました

マルグレーテ・ベステアー:どういたしまして

ジュッサーニ:まず2つ質問です 1つはデータについて 技術とデータは競争の在り方を変え 競争法の在り方とその適用法を 変えていると感じたのですが その点についてはいかがでしょう

ベステアー:ええ もちろんそれは課題です 私たちは既存のツールを改善し続けると同時に 新しいツールも開発する必要があります 私たちの申立てに対する グーグルの回答では 5.2テラバイトものデータを調査しました これは莫大な量です 新しいシステムが必要でした これをやりのけるために 数年前のやり方では不可能でしたから もちろん今ある手法を改善し対応しています もう1つは 私たちは データの種類を 区別しています ある種のデータは非常に貴重です 例えば市場参加の障壁となり得るからです それらを明日には価値を失ってしまうような データから区別すべきです 私たちは データが市場で通貨のような価値を持ち 現実に競争を妨げる障壁となり得るものだ という事に常に留意しています

ジュッサーニ:グーグルについては数ヶ月前 28億ユーロの制裁金を課しましたね

ベステアー:いえ 28億ドルです 今ドルはあまり強くありませんが

ジュッサーニ:確かに見方によっては—

(笑)

グーグルは上訴しましたから これは裁判所へ行きます この係争はしばらく続きそうです 昨年あなたはアップル社に 130億ユーロの追徴課税を命じました 他の企業も捜査しましたね アメリカ企業だけでなく ヨーロッパやロシア企業も しかしあなたのアメリカ企業への捜査は 最も注目を集め 非難もまた集めました あなたは 平たく言えば 保護主義や 嫉妬という理由で 欧州市場を制覇したアメリカ企業への 反撃として法的措置を利用したのだと 「エコノミスト」誌は今週号の巻頭に 「ベステアー対シリコン・バレー」と 書きました

ベステアー:そうですね まず 私はとても真剣に受け止めています 法律を遵守させるのに バイアスがあってはなりません 私たちは証拠と事実と法学をもって 法廷で戦わなければなりません 次にヨーロッパはビジネスについては 開放されていますが 脱税に関しては話が違います

(拍手)

私たちは変化しているということです 例えば私の娘達に —彼女達もグーグルを使うので— 「何故グーグルを使うの?」と聞くと 「使いやすいからよ いい製品だから」 と言います こんなことは言いません 「アメリカ製品だから使ってるの」 使いやすいからグーグルを使うんです それがあるべき姿です しかし同様に 誰かが目を光らせて 「貴社の継続した発展は 大変喜ばしいことですが しかし もしその支配的立場を悪用し 競争相手が消費者へサービスを提供するのを 邪魔し始めたらその限りではありませんよ」 と言うべきです

ジュッサーニ:非常に興味深い事例ですね TEDへお越し頂きありがとうございました

ベステアー:どういたしまして

(拍手)