2,770,412 views • 15:52

走ること それは左右交互に足踏みすることですね? 200万年も走ってきたのですから 「これまで知られていなかった走りに関する 新たな知見を紹介します」 というのは少し厚かましいかもしれません さて 私の素敵な発見とは 走りが何か奇妙な行動を 引き起こすということです 数ヶ月前のニューヨークシティマラソンを見た方はいますか? 誰も見たことのなかった すごい光景を目にしたはずです デラルツ・ツルというエチオピアの女性が スタートラインに立っていました 彼女はすでに37歳で 8年間勝利から見放されています ほんの数ヶ月前には 出産で生死の境をさまよいました ツルはマラソンから引退するつもりでした しかし 最後の舞台に一か八かの 懸けにでようと決めていたのです それが皆さんもご存知の ニューヨークシティマラソンでした ツルには災難ですが他にも同じ 思いを持つランナーがいました オリンピック金メダリストのポーラ・ラドクリフです 女子マラソン史上最速の彼女の記録は男子の 世界記録と10分しか変わらず まず彼女を倒すことはとうてい無理です ツルにとっては挑戦でした

スタートしたとき ツルは格下どころか 相手にもならない存在でした それでもツルは喰らいつきました レースの終盤 35km地点で ツルは先頭集団の中を 走っていました その時 まさにビックリする事件が起きたのです 優勝候補のポーラ・ラドクリフが 格下のツルの手をつかみ 自身の 脚をおさえて後退し始めたのです どうすればいいかわかりますね? 肘鉄を入れ ふりほどいて ゴールを目指せば良いんです ツルはそうはしませんでした ポーラを振り払わずに 手を握り返して鼓舞しました 「がんばりましょう あなたならできる!」 なんとか立ち上がったポーラは 先頭集団に追いつき ゴールを目指しました しかしポーラは再度遅れ始めました ツルは今度もポーラをひきあげようとしました ポーラは言いました 「私はいいから 行きなさい」 この感動的な話の予想される結末はこうです ツルは勝利の代わりに もっと大切なものを手に入れるのです しかしツルはここでも台本を裏切ります 負けるどころか 先頭集団に追いつき 追い抜いて1着でゴール 多額の賞金も手にしました

実に心温まる話ですね しかし もう少し掘り下げて考えると そこで何が起きたのか不思議に思われますね 例外的事象が2つも一度に 起こるのは単なる偶然ではありません 最大の競争心と思いやりを併せ持つランナー これは偶然ではありません 水かきと えらを持つ生物には 水との関連性をうかがえます

ツルのようなハートには なにか関連性が潜んでいるんです その答えはメキシコの カッパーキャニオンにあると思います ここにはタラフマラという 原住民が暮らしています タラフマラ族には3つの驚くべき秘密があります 1つ目は 彼らの生活様式です 400年前とほとんど同じです 北米大陸に侵略者が来た時に選択を迫られました 1. 戦う 2. 逃げる 戦いを選んだマヤ族と アステカ族はほとんど生き残っていません タラフマラ族には別の作戦がありました 故郷を捨ててクモの巣のように 細分化した迷宮のような渓谷― カッパーキャニオンに隠れたんです これが17世紀の話なんですが 当時から現在に至るまで 彼らの生活様式はほとんど変っていません 2つめの秘密は 70 - 80代の高齢者の方が 長距離マラソンではなく 超長距離マラソンを走ることです 42.195kmどころか 一度に160kmも240kmも走るのです 怪我もせず なんの問題もありません

3つ目の秘密はこれから お話することに関連しています 心臓病・コレステロール・ガン― 犯罪・戦争・暴力・鬱病といった 私たちが技術と知識を 総動員して解決を試みる現代の 問題はタラフマラ族には理解できないでしょう 文明社会の抱える 今日の問題とは無縁なのです ではどういった関係があるのでしょう いいですか 例外について話をしているんです

なにかしら 因果関係があるはずです ハーバード大学とユタ大学の 研究チームはタラフマラ族の 英知を解き明かすために 知恵をだし調査をしてきました この謎解きと先ほどの例外には通ずるところがあります ツルとタラフマラの謎を解き明かす鍵が この謎の中に潜む謎なのですが 更に別の3つの謎に包まれています これは誰にも分かりません ご存じの方はぜひとも前に来て下さい 知っていれば地球上の誰よりも賢いことになります 一つ目の謎: 200万年前 人類の脳は飛躍的に拡大しました アウステラロピテクスの脳は豆粒大でした ホモ・エレクトスの時代には 頭はメロンほどになっていました この大きさの脳を機能させるには 濃密なエネルギー資源が必要となります 原始人が動物の屍肉を食べていたことは 紛れもない事実ですね 唯一の問題は 最古の石器誕生がわずか20万年前ということです

要はそれ以前の約200万年間は 武器なしで狩猟をしていたということです 図体はでかいがひ弱な 人類は自力で何かを殺したりはしません 他の動物の方がよほど強いですよね 牙や爪もあるし 機敏で走るのも速い ウサイン・ボルトは速いですが リスでも追いつけます 私たちはのろまなのです リス捕獲 はオリンピック競技になりますね 放したリスを捕まえれば金メダルです 武器・スピード・強さ 全てを欠いています どのように狩猟したのでしょう? これが一つ目の謎です

二つ目の謎: 女性がオリンピックに参加してからもうずいぶん経ちますが 全女性走者に共通のことですが 走るのが底抜けに下手です 足の速い女性はいません これからも出てこないでしょう 1マイル走(約1.6km)の女子世界記録は4分15秒を下回るだけで 高校生でも男子なら このタイムはすぐに出ます 会場の皆さんは走るのがなぜか遅いですけどね (笑) しかし先ほど話をしたマラソンなら誰にでもできます マラソンが解禁され まだ20年しか経っていません 1980年代以前は 女性がフルマラソンを 走ることは医学的観点から禁止されていました その理由をご存じの方はいますか? なんと言いました? (観衆の一人: 子宮が裂けるから) 子宮が裂けるから そうです 生殖器が破壊されるからですね 子宮が実際に体外へ出てしまうそうです マラソンはたくさん見てきましたが そんな光景は見たことがありません (笑) 女性のマラソンの歴史はわずか20年です しかし この短期間に 生殖器が壊れると言われていたところから 男子世界記録まで あと10分のところまできました

フルマラソンを完走した フェイディピデスは死亡しましたし フルマラソンを超える80kmや 160km走は医学的にも危険な 全く異なる競技になってしまいます アン・トレーソン ニッキ・キンバル ジェン・シェラトンに 80kmとか160kmのレースに参加させるんです 誰が勝つのかは予想も出来ません 例を紹介しましょう 数年前 エミリー・ベアは ハードロック100というレースに出場しました そのレースについて知っておくべきことはこうです レース時間は48時間です さて エミリーは赤ん坊に 授乳するために全ての エイドステーションに寄りましたが 500人中のトップ10に入り 8位でゴールしました 最後の謎: ベアがこの長距離を 走り抜いた原動力とは

なんなのか? ユタ大学はランナーのゴールタイムの 推移を研究しています そしてこの研究で 19歳からマラソンを始めた場合 歳を重ねるごとに速くなり 27歳がピークだと判明しました それ以降はタイムが 伸び悩むそうです 加齢に従ってタイムは落ちて 最終的に19歳の頃のタイムに戻ります ベストタイムまでは7、8年かかり それから始めた頃の速さに 徐々に戻っていくのです すると8年とか10年で元に戻るとお考えでしょうが 正解は45年です 60歳の男女が 彼らが19歳の頃と同じ速さで走っているのです さて 皆さん 他の運動でいいやなんて言わせませんよ ゴルフはダメですよ お年寄りが10代の頃のように 頻繁に損傷を負うほど ハードなスポーツですからね

さて3つの謎を見てきたわけですが これらのまとめとなる パズルのピースはありましたか? 先史のことなど知るかと 怠慢になりがちなので 歴史を 振り返り世界規模の解答を 探る時には常に注意を払って下さい しかし 私の主張はこうです 最後のピースを真ん中にはめれば 突然 一貫したイメージが見えてくるんです 「なぜタラフマラ族は戦わないの?」 「なぜタラフマラ族に心臓病がないの?」 「なぜエチオピア出身の貧しいツルが 競争心と思いやりを持ち合わせていたの?」 「武器なしでどうやって 原始人は食料にありついたの?」 このように不思議に思うのは 人類は自身を宇宙の支配者と 考えるが 実のところ狩猟犬と なんら変わりないからなのです

人類は集団狩猟動物として 進化してきたのかもしれません 自然の中の私たちが持っている長所は 牙でも爪でも俊敏性でもありません これは発汗作用なんです 私たちは発汗し臭いを出すことに長けています 発汗では地球上の全哺乳類に勝っています 公の場では少し不快ですが これは炎天下で長距離を 走る際には大変 好都合なのです これこそが人類の誇れる長所です 暑い日に馬に乗るとします 10kmほど行くと馬は 1. 呼吸 か 2. 体の冷却 という選択を迫られます 人間と違って これを同時にはできないのです 私たちが集団狩猟動物として進化したという説はどうですか? 人類の生まれ持った長所とは アフリカのサバンナで 獲物が倒れるまで集団で追い回す 力ということはあり得ますかね? 私たちには炎天下での 長距離走 これしか出来ません

これが本当ならば 他の二つも真実のはずです 狩猟集団という言葉のカギは「集団」にあります 一人で獲物を追い回しても 朽ち果てて食料になってしまいます 狩猟は集団でする必要があります 獲物を見失わないためには 経験を積んだ高齢者と 集団で狩りをしなくてはダメです 散発的に追い回し 最終的に再結集します 集団には追跡の担当も必要です 集団が遠く離れてはダメです 集団には女性や子供たちも連れて行きます 授乳期の母親と思春期の子供たちには 動物性タンパク質が必要不可欠だからです いくら食料といっても80kmも 離れていては行く気になれませんね 皆 まとまって行動する必要があります 狩りには最高のパフォーマンスを 発揮する27歳が必要ですが 体験型学習を通じて未来の エースとなる10代の若者も必要です 全人員が集団で行動します

最後に この集団は物質主義ではないはずです 狩りをする際はくだらないことを考えてはいられません 「あいつにはうんざりしてるんだ 協力はできない 一人で行けばいいさ」といった 個人的な確執があってはいけません 協力して狩猟をする為には エゴは捨てなくてはいけません 換言すると石器時代と タラフマラの文化は 驚くほどに似ている つまり大きな変化は 起こっていないんです 非常に興味深い話です 200万年間も変らずしてきたことを タラフマラ族もしているかもしれないんですよ

この道から逸れたのは現代になってからです 現代では走ることは 夜間のピザへの罰とか 奇妙な捉え方がされています 少し間違っているのでは? 過去から受け継いだこの利を損ねたのは 私たちなのかもしれません どうやってダメにしてしまったのでしょう? 商業化ですね 周辺器具などとまとめて 見栄えを良くして販売するのです 「よりよい走りのため」と謳って ランニングシューズを 作ったのが事の発端です

個人的にランニングシューズが嫌いな理由は 利用中に何度も足を痛めたからです ランニングする方はいますか? 先ほど裏でキャロルと 足底筋膜炎について2 分程話をしたんですが ランニングの話をすると30秒もせずに決まって 怪我の話になるんです 人類が走者として利を得ながら進化したなら 走るのが下手で こんなにも怪我をするはなぜ?

ランニング中に起こる怪我の 不思議な点は 現在に特有ということです なんでもいいんですが 伝承や神話では 走ることは常に開放感― 活力・若さと関連づけられています ランニングが恐怖や苦痛と 結びついたのは最近なんです ジェロニモは言っていました 「私の唯一の友はこの脚 脚だけが信じるに足る」 だからアパッチ族は 砂漠を80kmも走り抜け 白兵戦の末に奪った馬から 革を持ち帰ることができたのです ジェロニモは決して言いませんでした 「あぁアキレス腱が痛い 弱ってるな 今週は休もう」とか 「クロストレーニングが必要だ」 「ヨガをしていなかった まだ準備不足だ」とかね 人類は常に走ってきました 今はデジタルテクノロジーの時代です 今日の科学では先人たちが 日常的にすごいことを していたことがわかっています 彼らは長距離を走るさい 素足を頼りにしていたのです

どうすれば戻れるでしょう? まず 走りに関する商売を 根こそぎ取り除くのはどうでしょうか 不快なランニングシューズもです 4時間かかったらアウト 1秒でも速ければ次に進む資格が 得られる都市マラソンへの 執着は捨てましょう タラフマラ族の世界的に健康的で 安心できる文化を支えているのは 裸足で走りなのです 走る楽しみと喜びを取り戻しましょう ではどのような利点があるでしょう 昨夜食べたハーゲンダッツ分のカロリー消費?

他にも利点はあるでしょう そんなに大それた事ではないんですが こんな世界はどうでしょう 誰もが屋外で エクササイズに取り組み 穏やかにリラックスができて ストレスを取り除き より健康的になれる するとストレスを抱えてオフィスや 家に戻ることもなくなります 今日の私たちとタラフマラ族にも 何かしらの共通性はあるはずです 「タラフマラ族みたいに カッパーキャニオンでトウモロコシを食え」とは言いません しかしこの中間はどうですか? これが見つかれば ノーベル賞も夢ではないでしょう 人類が1970年代まで備えていた 生来の能力を取り戻せれば 私たちは 社会的・政治的― 肉体的・精神的に 驚くべきほどの利益を 享受できることでしょう

今日は拡大を続ける シューズを捨てた 裸足のランナーのサブカルチャーを紹介しました 彼らはシューズを脱ぐと ストレスがなくなり 怪我や病気から 解放されることに気づきました この発見はタラフマラ族が 長い間守ってきたことで 走りを大いに楽しくしてくれます 個人的にも試してみました 長年怪我続きでしたが 40代前半にシューズを捨てると これは全て解消されました

皆さんにも有益となれば幸いです ご静聴ありがとうございました

(拍手)