ポーラ・ハモンド
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癌は私たち皆に影響を与えます 何度も何度も 再発するタイプのもの 浸潤性の高いもの 薬剤耐性のあるもの 考え得る最良の薬剤を用いた治療も ものともしない癌などは特にそうです そこで 分子レベルで操作を行い 最も小さな規模での アプローチにより 最も攻撃的なタイプの 癌との闘いにおいて 胸を躍らせるような 新しい方法がもたらされるのです

癌はとても賢い病気です 幸運なことに いくつかの癌についての対処法は すでに確立された薬剤や手術により 比較的よくわかっています しかし これらのアプローチに反応せず 抗がん剤による猛攻撃の後でさえ 生き延びたり 再発するような 種類の癌もあるのです

このようなとても攻撃的な癌は 漫画の超悪玉に例えられるでしょう 賢く 適応性が高く しぶとく生き続けることが大得意なのです 最近の超悪玉がそうであるように 彼らの特殊な力は 遺伝子の突然変異により生まれました 遺伝子が腫瘍細胞の中で変異し 新たなそして想像もしなかった 生存方式をがん細胞に与え 最良の抗がん剤を投与しても がん細胞が生き延びることを 可能にしているのです

一つの例としては  がん細胞へ抗がん剤が働きかけようとも 何らかの影響がある前に 抗がん剤を追い出すという 遺伝子による策略です 想像してみてください 細胞が巧みに抗がん剤を吐き出すところを これは 単に悪玉である 癌の手中にある 遺伝的策略の一例に過ぎません すべて遺伝子の突然変異のためです

とてつもない特殊能力を持った 超悪玉がいるのです 私たちは新たに強力な攻撃の方法を 必要としているのです 実は遺伝子はスイッチを オフにすることが出来るのです 鍵となるのは分子のセットとして知られる siRNAです siRNAとは細胞に 特定の遺伝子をブロックさせる 遺伝子コードの短い配列のことです どのsiRNA分子も細胞中の特定の遺伝子を オフにさせることが出来るのです どのsiRNA分子も細胞中の特定の遺伝子を オフにさせることが出来るのです その発見から何年もの間 科学者たちはこの遺伝子ブロッカーを いかに医学の分野に適用できるかという事に とても熱心でしたが

そこにはある問題がありました siRNAは細胞の中でよく働きますが 私たちの体内の血流や組織の中に 存在する酵素に晒されると 数秒以内に分解されてしまいます 体内での旅路では 最終的な目的地である がん細胞の中まで 何かに包まれて 保護されなければならないのです

そして これが私たちの戦略です まずは がん細胞に遺伝子ブロッカーである siRNAを投与することにより 生存遺伝子を抑制します それから抗がん剤で完全に打ちのめすのです ですが どう成し遂げるのでしょう? 分子工学を用い 実際に 血流を進んでいくことが可能な 強力な武器を デザインすることが出来るのです 血流を通るのに十分なほど とても小さくなければいけないし 腫瘍組織に浸透するのに十分なほど 小さくなければなりません そして がん細胞に取り込まれるように とても小さいものなのです この仕事をうまくやるためには 粒子は人間の髪の毛の約百分の一ほどの サイズでなければならないのです

では どのようにこのナノ粒子を 作り上げているのかよく見てみましょう 初めに ナノ粒子の 核から始めましょうか 化学療法の薬を内包した とても小さなカプセルがあります これは実際に腫瘍の命を絶つ毒なのです この核の周りを とても薄いナノメートル級の siRNAブランケットで包んでいきます これが我々の遺伝子ブロッカーです siRNAは強く負に帯電しているため 正電荷を帯びた ポリマーの層により核を保護します この2つの反対の電荷をもつ分子は 引きつけ合いくっつきます これにより 保護層はsiRNAが 血流の中で分解してしまうことを防ぐ 保護層を作るのです さぁ もう少しで完成ですよ

(笑)

ですが もう一つ考えなければいけない 大きな障害があるのです 事実上 一番大きな障害であると言えるでしょう この強力な武器をどう配備するのか? どんな有効な武器も 標的に照準を向けなければ― 我々はこの強力な武器の照準を 腫瘍に巣くっている悪玉細胞に 合わせなければなりません

しかし 私たちの身体には自然の 免疫防御システムが備わっており 細胞が血流にのって巡り よそ者を見つけ出し 破壊し除去するのです おわかりでしょうか 我々のナノ粒子は 異物として認識されてしまうのです そのため腫瘍の防御システムをくぐり抜け 忍び込ませる必要があります ナノ粒子を変装させることにより この異物を取り除こうとするメカニズムを 通過させなくてはなりません

そこで我々はナノ粒子の周りに もう一枚の負電荷を帯びた層を 足すことにしました 2つの点で役に立ちます 1つ目は この外層は 体内に在る 水分を多く保持する多糖類で もともと負電荷を帯びているものの一つであり これが ナノ粒子の周りに 水分子の膜を作り出し 覆い隠し見えなくする 効果を与えるのです この見えないコートは ナノ粒子が血流を通じ 身体から除去されることなく 腫瘍にたどり着くまで長く遠く 旅することを可能にします

2つ目は この層は特異的に腫瘍細胞と 結びつく分子を内包しているため 一度結合されるとがん細胞は ナノ粒子を取り込み がん細胞の中にナノ粒子が入ります これで闘う準備が出来ました

ええ!私も同じ気持ちです さあ やりましょう!

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siRNAが初めに作用し 数時間ほどで がん細胞の生存遺伝子を抑制しブロックします 我々は今や遺伝子の 特殊能力を抑制しました 何が残ったかというと 特別な防御システムもないがん細胞です その後 抗がん剤治療の薬剤が核から出現し 腫瘍細胞を手際よく効果的に 破壊するのです 十分な遺伝子ブロッカーがあれば 様々な種類の突然変異に 対処することができ どんな悪者も残すことなく 腫瘍を一掃できるチャンスがくるのです

では 我々の戦略は どのように働くのでしょう? 私たちはこれらのナノ構造粒子を 浸潤性が非常に強いタイプの トリプルネガティブ乳がんで 動物実験をしました このトリプルネガティブ乳癌には 抗がん剤が届き次第 細胞がすぐに吐き出してしまう 遺伝子があります

たいていは ドキソルビシン― 「ドックス」としましょうか これが 乳がん治療の第一選択肢です まず 私たちは動物たちを ドックスの核、ドックスだけで治療しました 腫瘍の成長する速度は遅くなりましたが まだ急速に成長を続け 二週間ほどで倍のサイズになりました

その後 私たちの 強力な武器を組み合わせて試しました siRNAを含む ナノ層の粒子を用い それに加え 核にはドックスを 見てください― 腫瘍が成長を止めただけでなく 実際にサイズが縮小したのです いくつかのケースでは除去されました 腫瘍は本当に消失したのです

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このアプローチの素晴しさは 個別化が出来るところにあります 様々な突然変異や 腫瘍の防御メカニズムに対処するため 沢山の異なるsiRNAの層を 足していくことが可能です 違う種類の薬剤を ナノ粒子の核に入れることも可能です 医師が癌の検査の仕方を学び 腫瘍の遺伝子型を理解するにつれて この戦略が効果的な患者や 利用できる遺伝子ブロッカーについて 分かってくるでしょう

卵巣がんには特別な思いがあります これはとても浸潤性の強い癌です 一つには非常に進行した段階で 発見されるからでもあります 卵巣がんがかなり進行した時は かなりの遺伝的な突然変異があります 抗がん剤治療の1クール目の後 卵巣がんは75%の確率で再発し 通常 再発した時には 薬剤耐性を持っています 悪性度の高い卵巣がんは 最もたちの悪い 超悪玉の一つなのです 今や私たちはこの強力な武器で 立ち向かっています

いち研究者として 通常 患者に接することはあまりないのですが 最近 卵巣がんのサバイバーである ある母親に出会いました ミミです 娘さんはペイジといいました 私は母と娘の双方が見せた 楽観主義と強さに 彼女達の勇気と支え合う物語に 非常に感銘を受けました このイベントでは 癌治療の為の 様々なテクノロジーについての お話をしました ミミはこうした治療法の存在を知り いかに彼女の娘を含む 未来の世代への 希望をもつことが出来たかということを 涙ながらに語ってくれました これには本当に感動しました この研究は高尚な科学を 作り上げていくだけではないのです 人々の人生を変えることなのです 分子規模での工学の力を 理解することなのです

ペイジのような学生がキャリアを積み 卵巣癌や 神経疾患 感染症のような 世界の大きな健康問題に取り組み 新たな可能性が開けていくのです 化学工学がまさに 私に道を開き 最も小さな分子規模の方法を用いて 人間規模で治療する方法を 開発させてくれたように

ありがとうございました

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