Dan Cobley
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私の仕事はマーケティングで大好きですが 最初にのめり込んでいたのは物理でした ある素晴らしい先生のおかげです こんなに白髪がなかった頃の話です 先生が私に教えてくれたのは 物理は身の回りの世界について 教えてくれて面白いということでした そこで物理はマーケティングについても 教えてくれることがあるという話をします

ちょっと手を挙げてもらえますか 大学でマーケティングの勉強をした人は? 大学で物理の勉強をした人は? 割といますね 中学や高校では? みなさん勉強してますね では楽しい思い出が蘇ると思います 嫌な思い出が蘇る可能性もありますが (笑い)

では物理とマーケティングについてです まずは分かり易いニュートンの法則の F=ma(物体に働く力=質量×加速度)から トルコ航空はもしかすると この法則を きちんと勉強しておけば良かったかもしれませんね (笑い) キャンペーンを実施する前に (笑い) この方程式をちょっと並び替えると 加速度=物体に働く力÷質量となります つまり 物体の質量が大きくなると その運動方向を 変えるにはより大きな力が必要になるのです これはブランドについても言えます ブランドが大きく足かせが多いほど ポジショニングを変えるには大きな力が必要となります これはアーサーアンダーセンが 会計監査以外の業務もできると 世間を説得しようとはせず 代わりにアクセンチュアを設立した 理由の1つです フーバー社が掃除機だけの企業でないと なかなか分かってもらえない理由も ここにあります ユニリーバやP&Gのような企業が オレオやプリングルズやダヴのような 別々のブランドを持ち 1つに統合しない理由もそうです ですから物理では物体の質量が大きいほど 運動方向を変えるのに より大きな力が必要になり マーケティングではブランドが有名なほど ポジショニング変更が難しくなるのです 皆さんもブランドのポートフォリオや 新規事業に使うブランドについて考えてみてください

ハイゼンベルクの不確定性原理を覚えていますか? 少し専門的になっていきます この原理は 素粒子の位置と運動量を 正確に測定するのは 本質的に不可能だというものです 測定自体が粒子の状態を変えるからです どういうことかと言うと 素粒子があり それに光を当てたとすると その光の粒子に運動量があるので 素粒子を突き飛ばしてしまうのです よって素粒子が元々どこにあったのか分かりません 測定行為自体が 測定対象を変えてしまいます 観察行為が変化を引き起こすのです マーケティングでも同じです 観察されると消費者の言動は変わります 例えばフォーカスグループで 自慢の子供の話をしている母親達に ジャンクフードを沢山買うと言う人はまずいません でもマクドナルドは毎年何億ものハンバーガーを販売しています スーパーで同行されて買い物する人は ショッピングカートに 新鮮な野菜や果物を沢山入れますが 普段そのように買い物はしていません また日頃からインターネットで ポルノを見ているとアンケートで答える人が 何人いるでしょう とても少ないです でもグーグルで最も検索されているのはポルノです だから幸いにもマーケティングは やり易くなってきています 進んだ販売時点情報管理や デジタルメディアの利用状況から 消費者の言っていることでなく 実際の行動を見ることができます ですから物理では 素粒子の厳密な測定は 測定がもたらす影響の為 不可能であり これをマーケティングに当てはめると 消費者にどうするか又はどうするつもりか 尋ねるのでなく 実際の行動を計測せよということです

次は物理や科学全般の基本である 科学的方法についてです 観測で仮説は立証できず 反証することのみが可能です これはたくさんのデータを集め 仮説やポジショニングを強化できても 決定的証明はできないという意味です そしてたった1つの反証データで 理論をぶち壊しにできるということです 例を挙げると プトレマイオスは何十ものデータを基に 惑星は地球の周りを回っていると唱えましたが コペルニクスのたった1つの確実な観測で その理論は打ち砕かれました マーケティングにも似たようなことがあります 長期間に渡ってブランドに投資しても そのポジショニングに1つ反例があっただけで 消費者の信用が台無しになります BPを見てください 長年に渡り何百万ポンドも投じて 環境に優しい企業というイメージを作り上げたのに つまらない事故1つで台無しです トヨタもそうです 長い間トヨタの自動車は その信頼性の高さで慕われてきました ところが大規模なリコールがありました タイガーウッズも長い間 ブランドの顔として完璧でした その後何があったかはご存知の通りです (笑い) つまり物理では 仮説を立証することはできないが 反証するのは簡単で 仮説はすべて不確実です マーケティングで言うと どれだけブランドに投資したとしても 1週間の悪評で 何十年の努力が無駄になることもあるということです ブランドを台無しにする失敗をしないよう 細心の注意を払ってください

最後は少し難解なエントロピーの世界の 熱力学の第二法則です これによると システムの無秩序度を表すエントロピーは 常に増大しています マーケティングでも同じです 20年前は マーケティング責任者が独断で決めたメッセージ1つで ブランドのイメージを決めることができました でも今の私達の状況はそうではありません 説得力のあるブランドのイメージや メッセージを 世間に発信することは可能です 英国保守党が今年始めに選挙ポスターでやったように でもその後コントロールを失うのです 消費者誰もが利用できるデジタル化された コメントの作成/配信ツールが今はあり [Twitter:あの選挙ポスター写真修正されてるよな?] ブランドのイメージを完全にコントロールするのは無理です ブランドはだんだん拡散されます [このままでは駄目です うんぬんかんぬん] [汚いことをするやつらは許さない] (笑い) どんどん無秩序になります [マダムタッソーの館] [デジタル加工は一切施しておりません] (笑い) 収拾がつかなくなります [データの力で誤魔化します] [TEDで講演したんだから優しくしてよ] (笑い) 彼のトークはなかなかよかったですよ マーケティング担当者としては不安でしょうが これは実際には望ましい事です ブランドというエネルギーが拡散することで ブランドが人々にとって身近になり 溶け込んでいきます このエネルギー拡散は民主化させる力であり 最終的にはブランドにとっていいことです ということで物理から学ぶことは エントロピーは常に増加するという基本的法則です マーケティングではブランドは拡散するということです 逆らっても無駄なので 受け入れてください そしてそれを利用する方法を見つけてください

では締めくくりとして 私はヴァッター先生に 物理は面白いと教わりました 皆さんには物理はマーケティングにおいても 特別なヒントをもたらすと分かってもらえたらと思います ありがとうございました

(拍手)