トッド・ハンフリーズ
769,244 views • 15:45

2000年5月2日未明のことです 社会に大きな変化を もたらすことが起きました 社会に大きな変化を もたらすことが起きました 皮肉にも その変化に 誰も気付きませんでした 変化は静かで 知覚出来ず 事実を正確に知らなければ 気づきようもなかったのです その日の朝 ビル・クリントン米大統領が 特別なスイッチを入れるように命じたのです GPSを司る 周回軌道衛星のスイッチでした すぐさま地球上に存在する 民間のGPS受信機の誤差が全て フットボール場のサイズから 小部屋のサイズにまで縮んだのです 精度に起こった この変化が 私たちにもたらした影響は とてつもないものでした このスイッチが入る前は 道案内をするカーナビなんて ありませんでした なぜなら当時のGPSは 今いる道どころか 区画さえも判らなかったんですから 地理的な位置情報は精度が大事で ここ10年 ますます正確になってきました 基地局や地上局が増え 感度やアルゴリズムが向上するにつれ GPSは今いる道だけでなく 道のどこかさえも 伝えられるようになったのです 位置精度レベルの向上が イノベーション爆発を引き起こしました 今日ここに来るのに携帯カーナビや スマートフォンの力を借りた人は多いはずです 紙の地図は時代遅れになってしまいました ですが 私たちは位置精度における更なる革命を 目前に控えているのです 現在の携帯カーナビやスマートフォンが与えてくれる 2メートルの精度よりも ずっと正確な位置が 得られるようになると言ったら どう思います? 実は周知の事実なのですが GPS信号の搬送波の位相に着目し さらにインターネット接続がある場合 メートル単位だった精度を センチのレベル ミリのレベルにもできるのです なのに この機能が携帯電話に 入っていないのはなぜでしょう? 私は単なる想像力の欠如だと思いますがね どのメーカーも この位相技術を 安いGPSチップには実装していません 手のひらのしわを特定できるほどの位置精度を 人々がどのように利用することができるか 思いつかなかいからです ですが 皆さんや 私や 他の発明者は 精度の次の飛躍に潜む可能性が見えています 想像してください たとえば AR(拡張現実)のアプリ そこではミリレベルの正確さで仮想世界が 現実世界に重なります ミリの精度で配置した 3Dの構造物が 見えているのは あなたや友人だけ ということも可能なのです このレベルの位置精度は ずっと求めていたものであり 2~3年以内には必ず こういった非常に高精度な 搬送波の位相による測位技術が 安く簡単に手に入るようになるでしょう それは 素晴らしい結果をもたらします そこで欲しくなるのがGPSドット ミニチュアのGPS発信機です 『ダ・ヴィンチ・コード』の映画を 覚えてますか? GPSドットを手に取ったラングドン教授に 仲間が追跡装置だと教えてくれましたね 地球上のどこにいても 60cm の精度で測位できるのだと しかし 現実の世界ではGPS発信機が 不可能ですよね 例えば GPSは屋内では機能しません また GPSを そんな小さくはできません 特に 測定結果を送るのにネットワークを 中継しなければならないなら なおのことです こうした反論は確かに正しいのですが ここ数年で事情が変わったのです 小型化と高感度化が どんどん進む傾向にあり その結果として 数年前はこのような GPS受信機は カギの横にある ごつい箱の様なものでしたが 数か月前に発表されたものと比べてください 今やキーホルダーのサイズになっています 最先端のGPS受信機は 1辺がたったの1センチしかないのに さらに優れた感度を持っています GPSドットがノンフィクションの世界に登場するのも 間もなくだと思えます GPSドットであふれる世界を想像してみてください もはや財布も鍵も失くすことはありません ディズニーランドでお子さんが迷子になることもありません GPSドットをまとめて買い 2~3千円以上の持ち物に 片っぱしから貼りつけていくのです 靴が見つからなかったら いつもなら妻に場所を尋ねていました しかし妻をつまらぬことで悩ませる必要はもうありません 自分の家に聞けばいいんです 靴はどこ? (笑) Gmail に乗り換えたことのある方は 思い出してください メールを体系だてて整理していた作業が 単純な検索で済むようになりましたね GPSドットなら 持ち物に対して 同じことができるのです もちろんGPSドットにも良くない面があります 何ヶ月か前 職場に ある電話が かかってきました 電話の向こうの女性 キャロルというのですが うろたえていました どうやら カリフォルニアにいるはずの元彼が テキサスにいる彼女を見つけ出し つきまとっていると言うのです なぜ彼女が私なんかに相談するのかと 思うかもしれませんね 私もそう思いました 実は キャロルの事件には専門技術が絡んでいたんです 元彼が現れるのはいつも 絶対にあり得ないような時間や場所でした 元彼はノートPCを持ち歩いており やがてキャロルは 元彼が車にGPS追跡機を 仕掛けていたと気づいたのです それで私に装置を止めてくれと頼んできたのです 「腕のいい修理屋に車を見せては?」 と提案しましたが 「腕のいい修理屋に車を見せては?」 と提案しましたが 「もうした」 とのことでした 「おかしなものは見当たらないし これ以上は車を分解しないと判らない」 と言われたそうです 「警察に行ったらどうかな」 と勧めました 「それもした」 との答えでした 「犯罪の確かな証拠が無いし 警察には装置を見つける技術が無い」 と言うのです 「なるほど じゃ FBI は?」 「それもしたけど 答えは同じだった」 私は彼女に 研究所へと来てもらい 車から出る電波を丹念に検査しました しかし どの周波数に合わせても 何の反応もありません 装置は安全圏の中にいるか 移動中にしか 電波を発信しなかったのです つまり何も発見できませんでした キャロル以外にも GPS追跡装置が原因で このように恐怖を抱き 心配する状況に陥る人は 多くいるはずです 事実 彼女の事件を調べているうちに 驚愕の事実を知りました 誰かの車に追跡機を仕込むことが 犯罪だとは限らないのです 最高裁は先月 警察が長期に渡り追跡装置を使うなら 許可が必要だと判決を出したものの 一般人が行う場合については明確になっていないのです だから 強大なる「政府」の監視に怯えるだけでなく 強大なる「隣人」にも怯えなくては(笑) キャロルは ある強力な代替手段をとることもできました 「ウェーブ・バブル」です MITの大学院生リモア・フリードが開発した オープンソースのGPS妨害装置で リモアはこれをこう呼んでいます 「自分の空間を取り戻す装置」 スイッチを入れると あたり一帯にバブルが作られて もはやGPS信号は存在できません バブルによって かき消されてしまうのです リモアはこれを設計したのは キャロルと同様に GPS追跡による脅威を感じていたからです そして彼女は設計をウェブに投稿し 自作する時間の無い人には 買えるようにもしたのです 自作する時間の無い人には 買えるようにもしたのです いまや中国のメーカーがほとんど同じものを インターネットで大量に売っています 「ウェーブ・バブル」 が素晴らしく思えたかもしれませんね 家に1つあったら良いですね 車に追跡機をつけられたりしたら便利です しかし この装置の使用はアメリカでは 完全に違法だと 知っておいてください なぜかって? なぜなら これがただの「バブル」ではないからです 妨害信号は 個人空間や車内だけに 留めることはできないのです 害のないGPSも無効化してしまうんです 周囲何キロにも渡ってね(笑) あなたがキャロルやリモアや GPS追跡機に怯える人なら 「ウェーブ・バブル」を使いたいかもしれませんが 実際には 大変なことになってしまうのです 想像してください たとえば あなたはクルーズ船の船長で 深い霧を抜けようとしている時 後ろで乗客が「ウェーブ・バブル」を オンにしたとします 突然 GPSは無反応になり あなたは 霧に包まれ 使えるのは レーダーシステムからのデータだけ 使い方を覚えていればの話しですが それらは 実際 灯台の位置を更新も維持もしておらず GPSの予備だったLORAN(長距離航行装置)も去年 廃止されていました 我々の現代社会はGPSと特別な関係にあるのです 盲目的に依存していると言ってもいい 我々のシステムとインフラに深く入り込んでいます 「見えざる公共サービス」 と 呼ばれることもあります 「ウェーブ・バブル」をオンにすると ただの迷惑では済まないかもしれません 命にかかわるかもしれないのです 実は個人のプライバシーを守るために 公共のGPSの信頼性を犠牲にする ウェーブ・バブルよりも 強力で破壊的なものも存在します それが 「GPSスプーファー」 です GPSスプーファーのコンセプトは単純です GPSの信号を妨害するのではなく 信号のフリをするのです GPS信号を模倣し うまくすれば 攻撃された装置は偽者だと気づくことさえありません 仕組みを ご覧にいれましょう どんなGPS受信機も その内部に 本物の信号に対応するピークを持っています 3つの赤い点は 追跡ポイントです ピークが中心に来るように 常に調整しています ところが 偽のGPS信号を送ると この2つのピークを ピッタリと合わせられたら 追跡ポイントは見分けられなくなり より強力な偽の信号に乗っ取られてしまうのです 本物のピークはもう役に立ちません この時点でゲームオーバーです いまや偽の信号がこのGPS受信機を 完全に制御しています こんなことが本当に可能かって? スプーファーでこんな風に GPS受信機のタイミングや位置決めを 操れる人が本当にいるのでしょうか? いるんですよ 民間のGPS信号は 完全にオープンになっています 暗号化も 認証もありません 広く開かれているため スプーファーのような攻撃に弱いのです だとしても つい最近までは 誰もGPSスプーファーの心配は していませんでした 複雑すぎ あるいは高価すぎて ハッカーには作れないと 考えられていたのです しかし 私も 学生時代からの友人も そうは思っていませんでした それほど難しいとは思えませんでしたし 最初に作った者になろうと思ったのです これができれば 問題に立ち向かうことができ GPSスプーファーの予防にもなります 皆で一緒にやったあの1週間を鮮明に覚えています それを造るために私の家に集まりました つまり 3歳の私の息子 ラモンが手を貸してくれました これがラモン(笑) この1週間 パパの注意を引こうと頑張っています 当初 スプーファーはケーブルとコンピュータの 寄せ集めでしたが 最後には小さな箱に 集約されました フランケンシュタイン博士の気分でした スプーファーはついに命を宿し 恐るべき可能性を垣間見せたのです それは その夜遅く 私が iPhone に対して 試したときでした 一番最初の実験のときに撮影した 本物の実験記録をお見せしましょう 私はこの小さな青い点と そのまわりに輝く光に 全幅の信頼を寄せていました 話しかけられてる気がしました 「ここにいるよ ここにいるよ」 って(笑) 「信じてね」 って そして とても不快なことが起きました 裏切りと言ってもいいでしょう 私の家にいた小さな青い点が 北へ向かって走り出したのです 私を置き去りにして 私は動いていませんでした 移動する青い点が見せてくれたものは 大混乱の可能性でした 飛行機や船がコースから逸れて 機長や船長が異常に気づいても もう手遅れです ニューヨーク証券取引所の 時刻を合わせているGPSが ハッカーの餌食になるかもしれません GPSスプーファーを知ると それが起こしかねない大災害の規模など 想像もできません とはいえ GPSスプーファーには良い面も あるのです それはGPS発信機に対する 切り札となるのです たとえば あなたが追跡されているとします 本当は休暇中なのに仕事中のふりをして 追跡者をバカにすることもできます あなたがキャロルの立場なら 警官の待つ駐車場に 元彼を誘い出せるのです 差し迫るこの対立には目が離せません プライバシーと 妨害の無い電波の必要性との戦いには 興味をそそられます GPSの妨害やスプーファーを 許せないのは当然ですが とはいえ GPS発信機からプライバシーを守るのに 有効で合法な手段がまだありません 純粋にそのスイッチを入れたがるのは 本当にいけないことでしょうか? 私は期待しているのです まだ発明されていないテクノロジーが この対立を解消してくれると でも それまでは目が離せません これからもっと面白くなるんです 数年以内に 皆さんもGPSドットを手にして 喜んでいることでしょう 袋一杯ものGPSドットを 有するかもしれません 自分のものを失くすことは もはやありません GPSドットは皆さんの人生を 根本から変えてしまうでしょう しかし 友人を追跡したいという誘惑に 耐えられますか? プライバシーを守るために GPSスプーファーや ウェーブ・バブルのスイッチを入れるという誘惑に 耐えられますか? そして 例により 地平線の彼方に目をやると 希望と危険で溢れています これらがどうなっていくのか もう目が離せませんね ありがとう(拍手)