シオン・リア・バイロック
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誰かを語る際に使う言葉の中でも かなり屈辱的なものに 「あの人はプレッシャーに負けた」 というのがあります その気持ちを私も 痛いほど知っています 子供の頃の私は スポーツに没頭していました 主にしていたスポーツはサッカーで 私はゴールキーパーでした フィールド上で最高にして 最悪のポジションです というのも キーパーになれば 特別なユニフォームが貰え すごいシュートを止めた時は 栄光を独占できる一方で ゴールを決められた時は がっかりされるからです キーパーになると 全ての視線が自分に集中するため プレッシャーも大きいのです

今でも鮮明に覚えている 高校時代の試合があります 私はオリンピック候補 育成プログラムに属する カリフォルニア州選抜チームの メンバーでした 私はすごくいい試合をしていました... アメリカ代表チームのコーチが 後ろに立っていると気づくまでは その瞬間 全てが変わったのです 数秒もしないうちに 実力の頂点から どん底へと転落しました 自分が査定されていると知った瞬間は 私のプレー内容を変えただけでなく 人の行動のメンタル面に対する 私の考えを永遠に変えたのです 急にボールの動きがまるで スローモーションのように見え 自分のあらゆる動作を 意識しました 次のシュートを 私は取り損ねたのですが 幸いな事にゴールには 入りませんでした しかし幸運もそこまで 次に放たれたシュートを 私はゴールに弾き入れてしまったのです 私のチームは負け 代表チームのコーチは去って行きました 値踏みする視線のプレッシャーに 私は勝てなかったのです

ほとんどの人が一度は 経験した事があるはずです 日常でプレッシャーを感じる機会は たくさんありますから 例えば試験を受けた時 スピーチをした時 顧客に提案をした時 そして 拷問の一種であると言いたい 面接を受けた時

(笑)

しかし「なぜ」という 疑問が残ります なぜ私たちはプレッシャーの中で 実力を発揮できなくなるのでしょう? 多くの時間を費やして 身体的技術を極めているアスリートでも このような経験をするのは 不可解ですが メンタル面はどうでしょう? そこまで時間をかけていません これはスポーツだけでなく 他の分野に対しても当てはまります 試験を受けたり 人前で話をする時 「出来るぞ」 「絶好調だ」と思いながらも その後 一番大事な場面で 実力を発揮出来ない事があります しかし よく考えれば 私たちはほとんどの場合 本番のような環境で 練習をしていないのです 結果として 人の視線が全て自分に集中すると 実力を発揮できなくなるのです でも どうしてそうなるのでしょう? あのフィールド上での経験 そして人生での 他の重要な局面での経験は 私を認知科学へと導きました 私たちの限りない可能性を生かすには どうすればいいのか知りたかった 実力を発揮できるようにする 心理的方法を見つけるには 脳と心についての知識を どう活用すればいいのか 分かりたかったのです

では なぜなのでしょうか? プレッシャーを感じた時 なぜ私たちは実力を 発揮できないのでしょう? ストレスを感じる状況で不安になると聞いて 驚く方は少ないと思います 私たちは状況に対して 結果に対して 他人にどう思われるのかに対して 不安を覚えます しかし驚くべきなのは 不安により過度に集中する事で 私たちは自らの成功を 妨げてしまうという事です そうです 私たちは自分の行動を 意識しすぎてしまうのです 私たちは実力を 発揮しなければと思うとき 自然に任せ 意識の外に置いた方がいい物事を 出来るだけコントロールしようとします そして結果として 失敗してしまうのです

皆さんが階段を駆け下りているところを 想像してみてください もしその時 私が 膝をどう使っているか 考えてくださいとお願いしたら どうなると思いますか? 床に頭から突っ込みかねません 人間は一度にあまり多くの物事に 意識を向けられません ですから 運転しながらの 携帯電話の使用は 良い考えとは言えないのです そしてプレッシャーを感じ いい仕事をしなければと 不安になる時 意識しない方がいい事を コントロールしようとし その結果 失敗してしまうのです

私の研究チームでは この意識しすぎてしまう現象を 「分析麻痺」と呼び 研究を行いました その中のひとつで 大学のサッカー選手に ドリブルをしてる時に 普段は気を使わない動きに 意識を向けるように お願いしました 足のどの部分が ボールと接触しているのか 意識するよう指示したのです その結果 自分のプレーの 段階的詳細まで意識すると プレーが遅くなり ミスが多くなる事を 示すことができました プレッシャーの下 私たちは実力を 発揮できるか不安を覚え 自らの行動を 細部までコントロールする事で 無理矢理にでもいい結果を 引き出そうとします しかし結果的には 失敗してしまうのです

バスケットボールでは シュートミスしない選手を指して 「無意識」だと言います サン・アントニオ・スパーズの スター選手だったティム・ダンカンは 「止まって、考える時間がある時ほど ミスをしてしまう」と言ったそうです また優れた振付師だった ジョージ・バランシンは 自分の受け持つダンサーに 「考えるな、ただ踊れ」と アドバイスしたそうです プレッシャーを感じる時 最善を尽くそうと すればするほど 皮肉にも 私たちは 悪い結果をもたらすように 自らの行動をコントロールしてしまうのです

ではどうすればいいのか? 過剰に意識してしまう習性が ある事を踏まえ どうすれば大事な時に 実力を発揮できるようになるのか? ここで重要になってくるのが 前頭前皮質と呼ばれる 眼球の上の 脳の前部です 普段 この領域は集中する上で 色々と助けてくれますが 間違ったものに引き付けられることも よくあります じゃあそれを止める方法は? 簡単な事ではありますが 歌ったり プロゴルファーのジャック・ニクラウスが 実践したと言われているように 足の小指に意識を向けるのは 厄介な考えすぎから 意識を逸らすのに有効です

また本番を想定した環境で 練習をして 練習と本番の違いを 出来るだけ小さくする事で 人の視線に慣れるのも有益です これはスポーツ以外の 分野にも言える事です 試験に向けて勉強している時も プレッシャーについて 大事なスピーチをしなければいけない時も

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本番で起こりうる状況に慣れるのは すごく重要な事なのです テストを受ける際は本を閉じ 時間制限を設けた状態で 記憶から答えを引き出す練習をし スピーチをする時は 人前で練習してみてください もしそれが出来ない場合は ビデオカメラや鏡の前で 練習しても構いません 本番の環境に慣れる事は 私たちがその後プレッシャーに 勝つか 負けるかを 大きく左右します

また ストレスを感じる状況で 生じる 厄介な不安や 自信の喪失を 除く方法も私達は見つけました 研究者によると ストレスが予想される状況の前に 考えや 不安を書き出すと 意識から取り除くことができて 本番でそのような考えや不安に 苛まれる可能性を減らせるそうです 真夜中に目が覚め 翌日しなければ いけない事への心配や やり遂げなければ いけない事を書き出す事で また眠りにつけるように なるのと同じで この 日記に書き 考えを紙に書き出す行為は その後 本番で不安に襲われ 意識が散漫になる可能性を減らします その結果 ここ一番で 実力を発揮できるようになるのです

ここまで私は 自分に枷をかけると どうなるのかについてと 本来の実力を発揮するために 使えるコツについて話をしてきました しかし忘れてならないのは 私たちに枷をかけ 失敗に導くものは 自分自身だけではなく 周りの環境も プレッシャーに 勝てるかに影響するということです 親 先生 コーチ それに上司といった人々は 私たちがここ一番で実力を発揮できるか どうかに影響を及ぼすのです

数学がいい例です そうです 言った通り 数学です 多くの人が数学に関する失敗や 不安を告白しています 数学のテストを受けた時とか 会計時のチップの計算を 賢い友達の前でしなければ いけなかった時とか そして私たちは 数学のプレッシャーに 耐えられなかった時の経験を 人前で話す事を良しとしています 教養のある人が 読むのは苦手なんですと 自慢する光景は ほとんど見かけませんが 数学が得意じゃないと 豪語する人は山ほどいます そして残念ながら アメリカではこの傾向は 男子より 女子に 多く見受けれられます 私の研究チームでは 数学に対するこの不安が どこから来ているのかを 理解するために 数学に不安を覚えている人の脳内を fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)を使い 観察してみました その結果 数学恐怖症は 痛みなど 実際に人が感じる感覚と 関連している事が分かりました 人が不安を覚えるのは 当然とも言えるのです また数学に対し 不安を覚えている人が テストをこれから 受けようとしている時― 実際に受けている時ではなく あくまで準備している時に 痛みへの反応に関わる脳の領域が 活性化しているのです 数学は頭が痛くなるというのは 人によっては事実なのです

しかしこの数学恐怖症は 一体どこから来るのでしょうか? 実は数学恐怖症は 人から人へと伝染するのです 大人が数学に不安を覚えていると 周囲にいる子供も 心配し始めるのです 小学校一年生の 段階であっても 子供たちが 数学に自信のない先生と 同じ教室にいるだけで その子たちは学年を通して 算数の学習度が下がります そしてこの現象は女子に より多く見受けられるのです この年齢の子供達は 自分と同性の大人の 真似をする傾向があり そしてアメリカでは 小学校教師の9割が女性なのです

もちろん 教室内での出来事だけが 重要なのではありません ソーシャルメディアも また大きく関わってきます そう遠くない昔 販売されていた バービー人形で 糸を引くと しゃべるのがありました 「お洋服はいくらあっても足りないわ」とか 「算数の授業は難しいわ」と そしてほんの数年前 大手の小売店が女の子向けに売っていた Tシャツには こう書かれていました 「私は算数をするには可愛すぎる」 「私は宿題をするには可愛すぎるから 兄がやってくれるの」 そして 親の事も忘れてはいけません ええ 親です 実は数学の能力に不安を 覚えている親が 子供の算数の宿題を手伝うと 学年を通して子供の 算数の学習度が下がります ある親の曰く 「小学一年の我が子の算数の宿題を これはワイン1杯分だとか これは3杯分だとか判断してる」

(笑)

数学の能力に大人が 不安を覚えていると それが子供にも伝わり 彼らがプレッシャーに 勝てるかに影響するのです でも私たちが他人に 枷を掛けられるように それを取り除く事も できるのです 私の研究チームが 見つけたことですが 親と子供が楽しく算数を 出来るような遊びや方法を教えれば― 例えば 寝る前に おとぎ話をする代わりに 算数の問題を解く 楽しいお話をすることで 子供の算数に対する姿勢だけでなく 学年を通して算数の成績が 良くなるのです 私たちを取り巻く環境は重要です 教室から親 そしてメディアまでが 私たちがプレッシャーに勝つか 負けるかに大きな違いをもたらします

あの高校時代の試合から時がたち 大学一年生だった頃の話です 理学部で化学の授業を受けていましたが 私にはまったく不向きでした 最初の中間試験に向けて きちんと勉強した事で 「出来る」と 思っていたにもかかわらず 結果は散々でした 400人いる学生の中で 私の成績はビリでした 理学部では卒業できないと思い 大学を中退することさえ考えました しかし私はその後 勉強の仕方を変えました 一人で勉強する事をやめ 友達との勉強会に参加しました 勉強会の終わりには 本を閉じて 互いに問題を出し合いました ストレス下で練習をするように なったのです もし最初の中間試験の時の 私の脳の中を覗いたとしたら 多分 私の研究対象である 数学恐怖症の人に見られる 痛みの反応が見られたはずです ストレス下で勉強した時も その反応があったはずです しかし期末試験の会場に 足を踏み入れた時 私の心は落ち着いていて 結果的に私はクラス内でも 一、二を争う高得点を取ったのです 内容を理解するだけではなく ここ一番で自分の限界をどう乗り越えるか 学んだからこその結果でした

私たちの脳内で起きている事は すごく重要であり それを知る事で 私たちはフィールド上だけでなく 会議室や教室で 自分や周りの人が 成功できるための 準備の仕方を学べるのです

ありがとうございました

(拍手)