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Translated by Hiroko Kawano
Reviewed by Yasushi Aoki

0:11 教皇 フランシスコ バチカン市国において撮影 TED2017会場で初公開

0:15 「こんばんは」 それとも 「おはようございます」でしょうか そちらが何時なのか 分かりませんが 何時にせよ 皆さんのカンファレンスに 参加できて とても嬉しいです 私は このイベントのテーマがとても好きです “The Future You” (未来のあなた) なぜなら このテーマは 明日を見据えながら 今日 対話を始め あなた自身を通して 未来を洞察するよう誘っているからです 「未来のあなた」です 未来は 一人ひとりの「あなた」でできています 未来は たくさんの出会いでできています 人生というのは 他者との関係を通して 流れるものだからです 人生の長い年月をかけて 私が強く確信したことは 一人ひとりの存在が 他者の存在と深く結びついているということ 人生は 単に過ぎゆく時間ではなく 人生は 互いの交流だということです

1:27 私が人と出会い 耳を傾けるとき— それは病に苦しむ人だったり 明るい未来を求めて 大きな困難に直面している 移民だったり 心に地獄の痛みを抱える 囚人だったり 職を見つけられずにいる たくさんの若者だったりしますが そういう時 私がよく抱く 疑問があります 「なぜ彼らであって 私ではないのか?」 私自身 移民の家族に生まれました 父も祖父も 他の多くのイタリア人と同じく アルゼンチンを目指して祖国を離れ 着の身着のまま 取り残される人々の 運命に遭いしました 私は 今日の「捨てられた」人々と同じ羽目になっても おかしくありませんでした だからこそ 私はいつも 心の奥で自問します 「なぜ彼らであって 私ではないのか?」と

2:35 まず この集まりを機に 思い起してほしいと思います 私たちは皆 互いを必要としていること 誰一人として 他者から隔絶した孤島のように 自立し独立した存在ではないこと あらゆる人を含めた 皆が共に立つことで はじめて未来は築けること 普段あまり考えないかもしれませんが すべては繋がっており 私たちは 互いの健やかな関係を 取り戻す必要があります 兄弟姉妹に対して密かに抱く 辛辣な見解 癒えることのない開いた傷口 許されることのない過ち 自分を苛むばかりの怨恨 これは全て 私が心中に抱える 葛藤の例であり 燃え上がって全てを 焼き尽くしてしまわないよう 消し止めなければならない 心の奥にくすぶる炎です

3:38 こんにちでは 多くの人が 幸せな未来はあり得ないと 思っているようです そのような不安は 真剣に受け止められるべきですが 克服不能ではありません 外の世界への扉を閉ざさなければ 乗り越えられます 個々の要素が全体として 調和した結果としてのみ 幸福は実現します 科学でさえ — 皆さんの方が私よりお詳しいでしょうが 各々の要素が 他の全てと 繋がり合い 作用し合う場として 世界を理解しようとしています

4:27 ここで 2つ目のメッセージに移りましょう 科学や技術の発展が進むことで より平等で共生的な社会を もたらせるなら なんと素晴らしいことでしょう はるか彼方の惑星を発見する一方で 周囲にいる同胞の必要性を再認識できるなら なんと素晴らしいことでしょう 美しいけれども 時として不都合ともなる 「連帯」という言葉が 福祉事業に限らず 政治的、経済的、科学的な選択や 個人間、民族間、国家間の 関係における 基本姿勢となるなら なんと素晴らしいことでしょう 真の意味における連帯を目指す 教育によってのみ 人類は「無駄遣いの文化」を 克服することができるでしょう 無駄遣いというのは 食べ物や モノに関するだけではなく 何よりもまず 人についてです 今の技術・経済のシステムに 取り残された 人々です 知らず識らずのうちに 人間ではなく 人間の作ったモノが 中心に据えられてしまっています

6:08 「連帯」とは多くの人が 辞書から 消してしまいたいと願う言葉です でも 連帯とは 機械的なメカニズムではありません プログラムしたり 制御したりはできません 人々の心に生まれる 自由な反応なのです そうです 自由な反応です 多くの矛盾に満ちていても 人生は贈り物であり 愛が 人生の源であり意義であると 気づけば 他の同胞の役に立ちたいという衝動を どうして抑えられるでしょう?

6:50 良いことをするためには 記憶力と 勇気と 創造力が 必要になります TEDには 創造力溢れる多くの人が 集まることを私は知っています そうです 愛には 創造力を働かせ 具体的に 物事を工夫する 姿勢が必要です 善意と習慣は しばしば 私たちの 良心を満たすのに使われますが それだけでは不十分です 互いに助け合って 忘れないようにしましょう 相手は 統計や数値ではありません 相手には顔があるのです 「相手」というのは常に 実際の存在で 世話を焼くべき人間です

7:52 面倒を避けて生きる人と 他人の世話を焼く人との違いを 私たちが理解できるよう イエスが語った話があります みなさんご存知だと思いますが 『善きサマリア人のたとえ』です イエスが 「隣人とは誰のことですか?」 と問われた時 — つまり「誰の世話を焼くべきか?」 と聞かれたんですが イエスは こんな話をしました ある男が襲われて 身ぐるみを剥がれ 殴られて道にうち捨てられていました 当時の有力者層だった 祭司やレビ人は 彼を見ても 立ち止まることなく 通り過ぎました しばらくして 当時非常に蔑まれていた民族の サマリア人が通りかかりました 地面に横たわる 傷ついた男を見て サマリア人は その男をいないかのように 無視したりはしませんでした この男をあわれに思い いても立ってもいられず 具体的な行動に出ました サマリア人は この無力な男の 傷口にオイルとワインを注ぎ 男を 宿屋に連れて行き 男の治療費を 自分で払いました

9:26 『善きサマリア人』の物語は 今でいう 人道的問題の話です 全てが 人ではなく 金やモノを中心に回り 人々は苦難の道を歩んでいます そして 相当な地位を自認する人々に ありがちなこととして 彼らは 他人の世話を焼くことなく 何千人もの人や 時にはコミュニティ全体の人々を 道端に置き去りにします 幸いにも 自腹を切ってでも 他人の世話を焼いて 新しい世界を作ろうと している人たちもいます 実際マザー・テレサは言っています 「自分を犠牲にすることなく 誰かを愛することはできません」と

10:26 やるべきことは山ほどあり 私たちは協力しなければなりません しかしながら 毎日 様々な悪に接しながら どうやってそうできるのでしょう? ありがたいことに 善なるもの、思いやり、悪に立ち向う力に 心を開きたいと願う気持ちは どんな体制にも 消すことはできません 私たちの心の奥底に 由来するものだからです でも皆さんは思うかもしれません 「それは結構だけど 自分は 善きサマリア人でも マザー・テレサでもない」と それは逆で 私たちは一人ひとり 全てが尊い存在なんです 神の目には 私たちの一人ひとりが かけがえのない存在です 私たち一人ひとりがみんな 明るいロウソクとなって こんにちの不和がもたらす暗闇を照らす 明るい光となることができます 光は 暗闇に打ち勝ちこそすれ 負けることは決してないと 思い起こせるように

11:27 キリスト教徒にとって 未来には名前があります その名前とは「希望」です 希望を抱くのは 楽天的な世間知らずになることでも 人類が直面している悲劇に 見て見ぬふりをすることでもありません 「希望」は心の美徳であり 暗闇に閉じこもることなく 過去にしがみつくことなく 今をなんとか生き抜くだけではなく 明日を見据えることができる美徳です 「希望」は 未来へと開かれた扉です 「希望」は ひっそりと目立たなくとも やがて成長して大樹となる 生命の種です 希望は 目に見えないイースト菌が パンの生地全体を膨らませるように 人生のあらゆる局面に 香りや彩どりを添えるものです 希望には大きな力があります なぜなら 希望の糧であるところの光が ほんの少し閃くだけで 暗闇の盾を打ち砕くのに 十分だからです 希望を存続させるには 一人いれば十分であり その一人になるのは あなたかもしれません そこから 別の「あなた」や また別の「あなた」が加わって 「私たち」になるでしょう では希望は 「私たち」になると 始まるでしょうか? 違います 希望は「あなた」ひとりから 始まります 「私たち」になったときに 始まるのは改革です

13:16 今日お伝えしたい 3つ目のメッセージは 改革について — 優しさの改革です 「優しさ」とは何でしょうか? 優しさとは 近くにあって現実となる愛です それは私たちの心から始まって 目、耳、手へと伝わる動きです 優しさとは 自分の目で 他者を見つめ 自分の耳で 他者の言葉を聞き 子供たち、貧しい者、将来に不安を抱く人たちに 耳を傾けることです 私たち共通の住処である 病に侵され 汚染された地球の 声にならない嘆きに 耳を傾けることでもあります 優しさとは 自らの手と心でもって 他者をなぐさめることです 困っている者の世話を焼くことです

14:13 優しさは 幼い子供たちの言語であり 他者を必要とする者の言語です 両親に対する子供の愛は 両親の手 眼差し 声 優しさを通して 成長します 親が 自分の赤子に話しかけ 幼子に合わせて 同じレベルで意思疎通するのを 聞くのが 私は好きです これこそが優しさです 他者と同じ立場に立つこと 私たちと同じレベルに身を置くため 神は自ら イエスとなって現れました これは 「善きサマリア人」が 取ったのと同じ道— イエス自身が取ったのと 同じ道なのです 自らを人の身にやつし 人間としての人生を生き 真実で揺るぎない愛の教えを 実践しました

15:23 そうです 優しさは 最も強く 最も勇敢な男女が 選ぶ道です 優しさは弱さではなく 不屈の精神です それは連帯の道であり 謙虚の道です 声を大にしてはっきりと言わせてください 権力を持てば持つほど 自分の行動が人に及ぼす影響が 大きくなり 謙虚に振る舞うべき義務が 大きくなります 謙虚に振る舞わねば 権力はあなたを害し あなたは他者を害することになるでしょう アルゼンチンにことわざがあります 「権力は 空き腹に飲むジンの如し」 謙虚さと優しさをもって 権力を行使しないなら 目が眩み 酔いしれて バランスを失い 自分自身や周囲の人を 傷つける結果になります 一方 謙虚さと揺るぎない愛をもって 行使するなら 最高最強の権力にも 良い奉仕ができ 善への力となります

16:52 人類の未来は 政治家や 優れた指導者や 大企業の手にのみ 委ねられているのではありません 確かに彼らは 大きな責任を負っています でも 未来は何よりも 他者を相手として認識し 自分を全体の一員として認識する そういう人たちの手に かかっているのです 私たちは皆 互いを必要としています だから どうか私のことも 優しさをもって考えてください そうすれば 私は 他者のため ありとあらゆる人のため 皆さんのために 与えられた責務を 全うできるでしょう ありがとうございます