Mina Bissell
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漫画ってあまり好きじゃないんです 面白いって思うものも 少ないし 変なのも多いと思うのですが このニューヨーカーの漫画は気に入っています

「箱の外は考えるな (慣用句: はみ出た事をするな)」

飼い主が猫に決まった場所にしか 絶対するなと 言っているわけです 飼い主が猫に決まった場所にしか 絶対するなと 言っているわけです 実は私はこの猫に似ていたんです 「当たり前」からはみ出して 考えるのが好きでした 普通と違った経路でこんな研究をすることに なったからかもしれません もともと化学や細菌遺伝学が専門だったので 当時 癌の原因や要因と考えられていたものや 当時 癌の原因や要因と考えられていたものや 私達の体がどう作られているのかという事に 納得できませんでした

この様な疑問の背景や その疑問にどう取り組んだか お話しましょう この様な疑問の背景や その疑問にどう取り組んだか お話しましょう 本題に入る前にとても簡単に 発生生物学の話をします 発生生物学の話をします 生物に詳しい方は我慢して聞いて下さいね ママとパパが一緒になると このような受精卵がつくられます この丸く ちょっと何かが飛び出しているものです これが育って 育って このようなハンサムな人間になります

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この人の体にある細胞は全て どれも同じ遺伝子情報を持っています ではなぜ鼻は鼻になり 肘は肘になるのでしょう? なぜ朝起きてみたら鼻が足になっていた なんて事が起こらないのでしょう? なぜ朝起きてみたら鼻が足になっていた なんて事が起こらないのでしょう? そうなってもおかしくありません 持っている遺伝子情報は同じなのです あの羊のドリーですが 元となったのはたった一つの乳腺細胞です あの羊のドリーですが 元となったのはたった一つの乳腺細胞です なぜ きちんとした羊になるのでしょうか? 彼の体全体に幾つ細胞があると思いますか? 10兆から70兆だと言われています 兆なんてすごい数です これらの細胞は皆おなじ遺伝子を持っていながら どうやって違う組織となるのでしょう? 先ほどの疑問は 我々一人一人の体の規模を考えると ますます興味深いものになります

従来の癌の理論では がん遺伝子 一つを含む がん細胞が 一つでもあると 癌になってしまうというのが定説です 癌になってしまうというのが定説です でも これには納得できませんでした 兆という数がどんなものか 見なおしてみましょう 桁の部分にゼロがこれだけ並ぶのです もしこの数の0.0001にあたる細胞が 突然変異を起こし そのうちの0.00001が癌化しても 人間は癌の固まりになってしまうというのです 皆 癌だらけになるかというと 実際はそうではありません なぜでしょう?

長年の実験を重ねるうちに解ったのは 長年の実験を重ねるうちに解ったのは こうならないのは 環境と構造の影響だという事です

それでは 簡単に この考えを裏付ける鍵となった 幾つかの実験を紹介しましょう 本来 私は このウイルスを研究していました 鶏に醜い腫瘍を発生させるウイルスです 1911年に病理学者のラウスにより 発見されたものです 発がん性ウイルスの元祖ともいえます がん遺伝子という言葉は 癌化を起こす遺伝子を意味します ラウスが ろ過液 つまり 腫瘍をフィルターでろ過した液体を 正常な鶏に注射すると 新しい腫瘍が発生しました

この結果に当時の科学者はとても興奮して がん遺伝子 一つで癌ができる がん遺伝子たった一つが 癌の原因だとしたのです そして鶏の培養細胞に このウイルスをふりかけ 細胞が増えて塊になると これが悪性で これは良性だと 皆はそんな実験をしたのです

これにも納得がいきませんでした 我々のチームは様々な理由から このがん遺伝子に青いマーカーをくっつけて 我々のチームは様々な理由から このがん遺伝子に青いマーカーをくっつけて 鶏の胚胎に注入してみました 見て下さい この胚胎内の美しい羽毛一本一本の 青くなっている部分の細胞に がん遺伝子が入っているのです つまりこれらの癌細胞が 羽の一部になっているわけです 羽を分離しシャーレに入れると 青い細胞の塊になりました 成熟した鶏のなかで癌になるものが 胚胎内では癌になりません それを分離し シャーレにいれると また癌になります なぜでしょう? ここから解る事は 微小環境や 細胞を取り巻く周囲の状況が がん遺伝子や癌細胞に何をすべきか 伝えているということです

それでは正常な細胞の例を見てみましょう ヒトの乳腺細胞です 私は乳癌を研究をしています これは美しいヒトの乳房です 外側からは見慣れていますが 中の樹のような美しい構造は あまり知られていません 中の樹のような美しい構造は あまり知られていません 我々の研究ではこの乳腺の ほんの一部を 見てみることにしました これは腺房です 乳房の中にはこの様に腺房が沢山あって ミルクが作られ 菅の先にある乳頭を 赤ちゃんが吸うとミルクが出てくるのです ミルクが作られ 菅の先にある乳頭を 赤ちゃんが吸うとミルクが出てくるのです

素晴らしい! 我々はこの素敵な構造を見て考えました この構造を人工的に作ってみたいけれど 細胞はどうやっているのだろう? この構造を人工的に作ってみたいけれど 細胞はどうやっているのだろう? 試しに 赤い細胞を取り出しました 赤い細胞は青い細胞に囲まれています 青い細胞は赤い細胞を絞る役割をします その周りにあるのは不活性な物質で 形状を保つための構造か何かだと 思われてきたものです 取り出したばかりの細胞の 写真を撮りました これは何年も何年も前に撮った 電子顕微鏡を使ったイメージです この細胞はとても美しいものです 細胞極性があり 妊娠初期のマウスから採った細胞ですから 沢山のミルクを分泌しています 妊娠初期のマウスから採った細胞ですから 沢山のミルクを分泌しています

これらの細胞を取り出し シャーレに入れ 3日も経つと このようになってしまいます なんだかすっかり忘れてしまうのです 取り出して シャーレに入れると ミルクを作りません すっかり役割を忘れてしまいます この美しい黄色のミルクの雫が 左側にはありますが 右側は何もありません 細胞核を見てみましょう 左側の細胞核は 生体内にあるもの 右側のはシャーレにあるものです まったく同じものとは思えません

いったい何が起こっているのでしょう? ここでも環境が鍵となっているのです 違う環境では細胞が違う振る舞いをするのです でも環境がどうやって信号を送ったりするのでしょう? アインシュタインは言いました 「一見して馬鹿げていないアイデアは見込みがない」 もちろん私のアイデアも懐疑的な目で見られました 研究費も出なかったので 出来なかった事も多かったのですが なんとか上手く行って良かったです

マウスの乳腺の一部を作ることにしました 美しい腺房が並んでいます 赤で囲まれているのは全部腺房です これを作ってみようということになりました この腺房を囲む赤い部分は 単なる構造的な足場だと思われていますが 何か情報を持っていて 細胞に何をするか 細胞核に何をするか 伝えているのかもしれないと考えたのです この細胞外マトリックス、ECMと呼ばれるものが 細胞に何をすべきか信号を送っているのではないかと 仮定したのです

そこで これと似た物を作ることにしました 丁度良いECM を含んだ ドロリとした物質をみつけ 丁度良いECM を含んだ ドロリとした物質をみつけ そこに細胞を入れると驚いた事に 4日程経つと細胞が構成を変え 右にあるようなものを培養することができました 左側は動物の中 つまり「生体内」のものです 培養細胞もミルクで一杯で あの素晴らしい赤い部分はミルクであふれています アメリカの牛乳の宣伝を真似すると 「Got Milk(ミルクあるよ)」です ここにあるのは 美しい人間の細胞です ご想像の通り ここでも環境が大切です

そこで何をしたかというと 革新的な仮定をしたのです 構造が何をするか決めるものだとしたら 構造が補正された癌細胞は 正常な細胞のように振る舞うだろうと 考えたのです そんなこと出来るでしょうか 試しにやってみました そのためには 正常な細胞と悪性な細胞を 区別する方法が必要でした 左側は正常な細胞 ヒトの乳細胞です ECMを含んだ ドロリとしたゲルの中で 3次元培養すると この様な美しい構造になります 右は とても醜いもので 細胞は増え続けます 正常なものなら自然に止まります 細胞は増え続けます 正常なものなら自然に止まります これは拡大したイメージ 正常な腺房と醜い腫瘍です

いったいこの醜い腫瘍の表面にあるのは何でしょう これを落ち着かせる方法はあるでしょうか 信号を狂ったように送り 経路が滅茶苦茶になっています これを通常のレベルに戻せるでしょうか? 素晴らしい事が起こりました これには私も びっくりしました これがその結果です 悪性形質が正常に戻ったのです

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この悪性形質を皆さんに見せるのに 特別に一つ選んだわけではありません ここにちょっとボケた動画がありますが 左側は悪性細胞で ここにある全てが悪性です 実験の始めに一つ抑制要素を加えると こうなります 全てこうなるのです マウスにこれを注射しても 右にありますが どれも腫瘍を形成しません もう一方をマウスに注射すると 百パーセント腫瘍になります

これは癌に対する新しい見方といえます 希望の持てる見方です 私たちは癌にこのレベルで立ち向かうことができるはずです これらの実験の結果から 細胞の増加や悪性な習性は 組織形成のレベルで決まるもので 組織形成はECMや微小環境に 左右されていると考えられます 組織形成はECMや微小環境に 左右されていると考えられます つまり 形態と機能は動的に相互関連し合うのです ここで5秒間 とってまた繰り返しますが 「形態と機能」 です ここで5秒間 とってまた繰り返しますが 「形態と機能」 です

この先どう研究を進めるかというと このような考え方を臨床に持っていきたいのです でもその前に ここに座っている間でも常に 皆さんの体内にある70兆の細胞の ECMが核に信号を送っているのを 考えてみて下さい 核もECMに信号を送っています こうして皆さんの体内の バランスがとれているのです

我々のチームはいろいろな発見をしてきました ECMがクロマチンと作用する事を証明し 乳腺の ある特定の遺伝子上のDNA配列が 乳腺の ある特定の遺伝子上のDNA配列が ECMに反応することも実証しました 研究には何年もかかりましたが 有意義なものでした

次のスライドに移る前に 未発見の物がまだ沢山あることを お伝えしたいのです まだまだわからないことが沢山残っています 学生や研究生に常に言うのは 高慢になるなということです 高慢になると好奇心が失われてしまいます 好奇心と情熱が失われてしまいます まだどんな発見が必要か 常に考える事が大切です 私の発見だって追加や修正が 必要かもしれません 私の発見だって追加や修正が 必要かもしれません

最近 こんな素晴らしい発見をしました 物理学者でもある研究生が こんな質問をしてきました ここに細胞を入れると 細胞に何が起こるか? まず最初に どんな変化が起こるのか と訊かれたのですが 見たことがないからわからないと答えました かつてそれを見る良い方法は なかったからです 彼女は物理に加えイメージングも専門だったので こんな素晴らしい事をしました これはヒトの乳房細胞を ひとつ取り出して3Dで見たものです 常にこういう動きをしているのです 一貫した動きをしています 癌細胞を見てみると この動きが滅茶苦茶になっています こうなります この様には動きません 癌細胞を修正すれば このような動きに戻ります 全く不思議です 細胞が胚胎のように振舞うこともわかりました すごい発見です

詩を読んで終わりにしたいと思います 若い頃 英文学が大好きでした 大学ではどちらを専攻しようか 悩んだ程です 幸か不幸か化学が勝ったわけです イェイツの詩から最後の2行だけ紹介します 『学童たちの間で』という題です 「おお、音楽に揺れ動く肉体よ、おお、輝く眼ざしよ、 どうして踊り手と踊りを分つことができようか」 これは マース・カニングハムです 若かった頃 彼のもとで踊る機会に恵まれました これは彼が踊っているところです 踊っているとき 彼は踊り手と踊りの両方です 踊りをやめると どちらも 存在しなくなってしまいます 「形態と機能」のようなものです

これは現在の私のグループです この様な素晴らしい学生や 研究生に恵まれました 長年の研究の過程で 何人ものメンバーが 巣立っていきました 彼らがこれからの未来を担うのです あの猫のように 箱の外を考えるなと言われても 言いなりになって型にはまる必要はない と教えてきたつもりです 言いなりになって型にはまる必要はない と教えてきたつもりです

最後にこれをお見せします 左はNASAの人工衛星が撮った 浜辺に流れこむ水流です 左はNASAの人工衛星が撮った 浜辺に流れこむ水流です 右は珊瑚です 乳腺を取り出してシャーレに広げ 脂肪を取り除くと こんな感じに見えます 同じように見えますね 同じパターンを持っていますね 自然にはこのようなパターンが 繰り返し見られます 何故でしょう?

ここで考えて頂きたいのですが ヒトの遺伝子の配列が解読され 遺伝子の塩基配列がすっかり解っています 遺伝子の言葉である 遺伝子の文字列が 解っています でも形態がどのような言葉や文字で 書かれているかは 全く解っていないのです でも形態がどのような言葉や文字で 書かれているかは 全く解っていないのです まだ 素晴らしい未知の世界が広がっています 若い人たちが発見していくものです 熱心な古い人間もやめられません — 私もです 若い人たちが発見していくものです 熱心な古い人間もやめられません — 私もです

がんばりましょう

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