Megan Ming Francis
1,310,262 views • 19:38

私は熱心な学部生たちに向けて アメリカ政治入門の授業を 終えたところでした 教えるのは その年が初めてでしたが 講義がすごくうまくいって とってもいい気分でした 講義室を出るときに 携帯電話を見ると 弟のケニーから不在着信が 5回あったことに気づきました 当時 ケニーは テンプル大学の学生で ノース・フィリーに住んでいました 知らない方のために 補足すると 主に黒人と低所得者が 住んでいる地域で 警察の存在が 目に付く場所です 私が電話を折り返すと ケニーは 電話口で大声でまくし立てました すごく悪いことが起こったのは 分かりましたが 何が起きたのかは 分かりませんでした ようやく弟を落ち着かせて 話を聞いてみると 弟が玄関前の階段に腰掛けて 友達と話していると 4人の警官が駆け寄ってきて 弟と他の3人を 地面に押し倒して 手錠をかけた後 壁に押さえつけたというのです その間ずっと 「何のドラッグを持ってるんだ?」と 繰り返していたそうです ドラッグなど持っていない弟は 警官たちに 何度もそう伝えたのに 持っていないと言うたびに ますます強く押さえ込まれ 警官は激昂していきます 手錠をかけられ レンガの壁にもたれて座りながら ケニーは自分はテンプル大学の学生で 理由なしに逮捕はできないはずだと 落ち着いて警官たちに伝えました 警官たちは最終的に 大学の学生証を探し出しました 歩道に押し倒されたときに ポケットから滑り落ちた財布に 入っていたんですね そこで 確かに大学生で ドラッグを持っていないと気づいて 弟を解放しました ケニーは一部始終を話してからも 大声で怒りに震えていました 私は身体が震えて なんとか電話を耳元に 持っているので精一杯でした 良い授業ができたという喜びは すっかり消え去って 無力感と不安で 胸がいっぱいでした 電話口からでも はっきりと伝わってくる ケニーの負った傷とやり場のない怒りを 取り除いてあげたくても アメリカにおける人種差別が いかに根深いかについて 弟に嘘を言いたくもなければ 言えもしませんでした 弟がドラッグ所持の疑いで 警官に制止され身体検査を受けるのは これが最後ではないと 私も弟も 言葉にせずとも分かっていたのです 弟を落ち着かせて 自分でコントロールできることに 意識を向けさせるために 良いことを思いつきました 学業に集中して 他のことを 考えないようにしたらいいと勧めたんです 学業に集中して 他のことを 考えないようにしたらいいと勧めたんです 弟は電話で怒鳴って言いました 「そんなことをして何になる? 警察があんなことをして許されるのに 勉強に集中したって どうにもならない」 こうも言いました 「僕は姉さんの学生じゃない 教科書を読んだって救われない」 私は電話口で 黙ってうなずきました それまでも弟とは 何度も口論にはなりましたが 私がこれほど間違っていて 弟がこれほど正しかったことは ありませんでした これはケニーだけの 話ではありません 黒人の男性や女性に対する 警察の暴力的な対応は アメリカ中の多くの都市や町で 見られるものです さらに悲惨な結果に終わることも よくあります 最新の統計によると 黒人が警察に射殺される可能性は 白人よりも3倍も高いのです 誰もが疑問に思い 私がよく聞かれるのは 「どうしたらこの問題を 解決できるか」です 正直言って こう聞かれるたびに 私はうんざりします それが良い質問でないからというよりも 間違った問いかけだと 思うからです どうしてこんな状況に なってしまったのかすら 私たちは理解していないのではと 思うからです 今の状況に至った根本的な原因を より良く理解することで 前へ進むのに必要なことが 見えてくるはずだと思うのです とはいえ 私だって 問題を理解するよりも 解決する方に 気を取られることもあります 数年前に 私はシェルターから コーギー犬を引き取って 『ザ・ホワイトハウス』にちなんで バートレット大統領と名付けました (笑) すっごくかわいいんですよ! でも虐待を受けたために 他の犬を見ると 非常に攻撃的になります 最初の1年は 犬が散歩しないような時間に 連れ出して しのぎました でも そこまで効果もなく 私はストレスで 疲れてしまいました 翌年はトレーナーを雇って 攻撃的な反応の裏にある問題を 解きほぐそうとしました 初顔合わせの日 トレーナーは 私の顔を見て こう言いました 「根本的な原因に働きかけない解決策は 本当の解決にならない」と バートレット大統領を 治そうと急いだせいで 事態を悪化させていたのです アメリカにおける 人種を巡る現在の危機的状況は 根本的な原因に目を向けないことで 悪化していると思います 根本的な原因に もっと目を向けることで 根本的な原因に もっと目を向けることで アメリカにおける 現在の人種差別問題について 現状を打破して前進する方法を 知ることができるはずです 武器を持たない黒人を死に至らしめる事件が 起こり続けるのは なぜでしょう こんな事件が続くのは 原因分析も解決法も 間違っているからだと思います 往々にして 人種差別による暴力は 少数の頑固な人種差別主義者が 先進的な考え方という魔法のドリンクに 口をつけないという 個別の問題だと考えられがちです また アメリカにおける 人種差別による不当な扱いを解決するには 常に教育が中心になるべきだと 考えられています ここからの時間を使って この2つの考え方に異議を唱えて 解決法だけでなく 問題を理解する上でも 新しい方法を提案します まず 武器を持たない黒人を 死に至らしめる事件が 憂慮すべき頻度で 起こり続ける理由の一部には アメリカにおける 人種に基づく恐怖の 長い歴史にきちんと 向き合ってこなかったことがあります 黒人であることを 犯罪性の尺度として つまり 犯罪性の代用語と 見なしてきたという歴史です 心が乱されるような 人種差別による不当な扱いに直面すると 私たちは人種差別主義の 腐ったリンゴのせいにしたがります 問題を個人のせいにして 自分たちには関係ないと思いたがるのです だからこそ ディラン・ルーフという 白人至上主義者が サウスカロライナ州チャールストンで 黒人の教会で銃乱射事件を起こしても 辻褄がつけられるのです でも 現代の 人種差別による暴力の問題は 数人の人種差別主義の 腐ったリンゴがいることではありません 問題なのはリンゴの木そのものが 病に冒されていることです 問題なのは この国のあまりに多くの人々が 人種と危険性が密接に結びついていると 思い込んでしまっていることです 警察官が 銃器の使用を 正当化するためには 正当な理由から自らの命が危険に さらされていると考えている必要があります 過去1年に起き 注目された 黒人の殺人事件すべてにおいて 警官は身の危険を感じたと 証言しています 武器を持たない市民に対して 彼らがこう考えたのは なぜなのでしょう 肌が黒いことで 危険が高まったと感じさせ 命の危険さえも感じさせるために 警官たちに銃器を使うという 決断をさせてしまうのです 最新の統計によると 警察が死に至らしめた黒人の 33%が武器を持っていませんでした 黒人は危険だという誤った考えを 持っているのは警察だけではありません この誤った考えは 日常的な接点の中で強化されて あたかも真実のように 信じられるようになります 黒人男性が通り過ぎると 女性がハンドバッグを握りしめたり 黒人の友達グループが 車の横を通り過ぎると 車内から扉にロックを掛けた音が 聞こえてきたりします 怖いからです 私の友人は こうした経験の両側面にいます 良い仕事に就いている 黒人男性の友人は 一日仕事で疲れた後では 脅威としてでなく 一人の人間として見られたいと 考えていますし 白人やアジア系の女性の友人は 薄暗い道で 黒人男性を見ると 思わず ハンドバッグを握りしめて 足早になってしまい 後からそれを恥じて 私に自分の行動の言い訳をするのです 私自身も経験があります 他人の勝手な判断で ただ 危険な存在としてだけ 扱われたのです 昨年 旅行から帰ろうとしたとき 運輸保安局の職員に目をつけられました 私はまた鞄に水のボトルでも 入れっぱなしだったのかなと思いました でも 私は離れた場所に連れて行かれて さらに もう2人の職員に囲まれて よくない状況に置かれていると 直感で感じました リーダー格の職員が私に質問― いえ 尋問して言いました 私が空港に 武器を持ち込んだと言うのです 空港に武器など 持ち込んでいないと主張すると 職員はアクセサリーをひとつ 取り出しました 休暇中に4ドルで買った ダブルリングです 向こうは「してやったり」という態度でしたが 私はひどく混乱しました (笑) その職員は私がアメリカの空港に 武器であるメリケンサックを 持ち込んだと責めたのです めったにないことですが 私は言葉を失いそうになりつつ 丁寧に指摘しました リングは金属ではなくて プラスチックだし メリケンサックではなく 2本の指に連なってつける 指輪なのだと 相手に話しているのに 自分がまるでいないかのような 全く聞き入れてもらえないような 経験はありませんか? まさにそんな感じでした 私が説明すると 職員はさらに激昂して 私の顔を見て言いました 「お前らはいつも嘘をつく これは武器だ お前のように危険な人間を 飛行機に乗せるわけにはいかない」 当然 震えてしまいますよね? 何かの映画で 肌の黒い女の子が武器を持って 空港に乗り込んで行って捕まったら もうこれは大ピンチです 良い結果にはなり得ません そこで私は本当は 使いたくない手ですが 身元証明を使って 状況を脱しようとしました 自分は大学講師で 憲法とアメリカ政治を 教えていると伝えたのです (笑) だって そうでしょ? (拍手) ええ それで― (拍手) 私はアメリカ刑法や 有名な最高裁判決や 国土安全保障の規定を そらんじました 市民的自由の権利についても 教えてますから すると その職員は そわそわし始めました (笑) どの大学で教えているかと言うので 伝えると 私の名前を検索して 今度は顔から血の気が引きました わかります? 私の話が作り話ではなく 私は権利についてよく知っており 大学講師だと分かったからです その時 彼は私の方を見て ようやく私の存在を目にしました 脅威ではなく 一人の人間として 目に入ったのです 数分後 私は解放され 遅延しているフライトに向かいました 空港のターミナルで 椅子に腰掛けると ひどい扱いに まだ怒りで震えていました 数分の間 座っていると 肩を叩く人がいました ひどい体験の一部始終を見ていた 女性の空港スタッフが あの職員は黒人の乗客に いつもあのような扱いをしていて あれほど早く解放されたのは ラッキーだったと言うのです でも大学のウェブサイトの プロフィールを見せないと 脅威ではないと思われないのは おかしいですよね? (拍手) この話や そのほかのエピソードを お伝えしたのは 現在の人種差別を巡る 危機について語るときには 警察に注目を向けるあまりに 黒人の命が対等に扱われない環境を 生み出すのに 自分も加担していることを 見逃しがちだからです 人種差別による暴力の解決策への 見解としては ボディカメラの使用にも 非武装警官の導入にも賛成です 街で人を呼び止めて身体検査を行う 警官に説明責任を求めるよう 法律を厳格化するのにも賛成です でも そもそも ボディカメラなんてものが 必要なのが腑に落ちません 黒人は まず危険で怪しい存在だと見なし 黒人は まず危険で怪しい存在だと見なし 市民だということをニの次にする 社会でなければ済む話です 警察や空港職員にほんの数人 人種差別的な人がいるからではなく 私たち全員が行動を通じて または何も言わないことで 大なり小なり この「嘘」を支持しているのです どういうわけか黒人は 他の人よりも危険だという嘘をです このように 私たちが問題を 見誤っているだけでなく 解決策も間違っていると 思います アメリカにおける 全ての人種問題への 解決策として いつでも 教育が必要だと考えます このことを私の授業では よくこう呼びます 「市民権の咳止めシロップ」と 小さい頃 母が咳止めシロップが好きで よく飲まされました 風邪にもインフルエンザにも 咳止めシロップ アレルギー? 咳止めシロップ なんで抗アレルギー薬じゃないの? (笑) 咳止めシロップが すべての病気に 効くわけではないのと同じで 教育もアメリカの人種を巡る悪の すべてに効くわけではありません それにもかかわらず 多くのアメリカ人が 現代の不当な人種差別を解決するのは 教育の責任であると考えているのです 人種間関係において どれほど進歩したかの指標は 学校がどれほど 多様性を示しているかや どれほどの革新的な教育的実験が 現在進行中か どれほどの税金が教育に費やされるかで 評価されることがほとんどです でも 武器を持たない黒人の殺人に まつわる現代の問題は でも 武器を持たない黒人の殺人に まつわる現代の問題は 黒人への教育機会を広げることで 解決できる類のものではありません これは誤った分析です 本を与えられてもシカゴの レキア・ボイドの身を貫いた弾は 防げません 授業時間を延ばしたところで ボルティモアでフレディ・グレイが 警察に不当かつ手荒な扱いを 受けるのを防ぎはしません 確かに言えることがあります 現在も継続する 人種差別による不当な扱いと闘うには 市民権とは何たるかに対する 私たちの視野と責任を 広げる必要があります 市民権とは何かについての 理解の広がりの中に 人種差別による暴力への反対を 取り込まなければなりません 教育の代わりに アメリカにおいて 自由かつ平等であることの核心に 「人種差別による暴力からの自由」を 含めてはどうでしょう だからといって 教育を追いやることにはなりません そうではなく 人種差別と 白人至上主義が岩の砦だとしたら それを打ち砕けるほど 強力な兵器を共に作るのです (拍手) 容易なことではありませんが 不可能ではありません 実生活では 私は政治科学者であり 歴史研究者ですが ここ10年間 驚くべき発見をめぐる調査に 時間を費やしてきました 市民権運動グループのNAACP (全米有色人種地位向上協議会)が 人種分離教育に反対して 歴史的なキャンペーンを行う前に NAACPは20世紀初頭の20年間 アメリカの南部 そして北部で 警察や政治家や白人の一般市民から 黒人たちが受けている 人種差別による暴力の拡大に 反対する闘いに 焦点を当てていました 人種差別による暴力に対する 一大キャンペーンのため NAACPは大規模な街頭デモを 行いました 反暴力法案を通過させるため 議会にも働きかけました 訴訟に持ち込み 最高裁判所で 重大な判決も勝ち取りました 暴力に反対する声明を出すように 3人の大統領に対して 請願もしました この大規模で並外れた これでもかというキャンペーンによって アフリカ系アメリカ人に対する リンチや集団暴行の問題に アメリカの人々の目を向けさせ アメリカに対して 黒人の命を守るという決意が どれほど固いのかと問うたのです 20世紀初頭の この運動のおかげで リンチや集団暴行の発生率は 大いに減少しました 人種差別による暴力に対する NAACPの歴史的なキャンペーンについて 今お話しするのは 過去の歴史によって 現在の暗闇から 抜け出す道が照らされると思うからです この歴史の教訓に 耳を傾けるなら 今 現在のこの瞬間に 闘わねばなりません 私たちの行動や制度が たとえ意図せずだったとしても 黒人を差別的に扱う方向へ 導いていることに向き合うべきです 現在 アメリカ全土の人々が 街頭デモに繰り出し 自分たちを 危険な存在として見るのではなく 価値ある命 守るべき命を持つ 人間として見ることを求めています こうしたグループの中には 直接的や間接的に ブラック・ライブズ・マターと 関連するものもあります こうしたグループの努力がなければ 武器を持たない黒人の 殺人事件の多くが 隠蔽され なかったことにされて ずっと前に人々の注意を 失っていたでしょう しかし多くの活動家たちが 沈黙をよしとはせず 問題を訴え続けています 彼らが そして私がお伝えしたい メッセージは 黒人の扱われ方にもっと 注意を向けるべきだということです 警察が残虐な行為をしたり 武器を持たない黒人を殺害する事件は 黒人だけの問題ではありません 全員に関わる問題です 人種問題の発展と頑固なまでに長く続いている アメリカの人種差別の問題です 過去の過ちを繰り返すのをやめて どういうわけか黒人が 他の人よりも危ないなどという アメリカの大きな嘘に加担してきたことに 向き合うべき時なのです そして最後に 私たちが 現在の人種差別に対して 共に立ち上がる勇気が あるかどうかという問題です 今年 私が人種と政治の 上級コースで 教えている学生のおよそ半数が ブラック・ライブズ・マターを支持して 授業を欠席する運動に参加しました 講義が中程にさしかかると ワシントン大学の広場で 学生や講師や地域の人々が集まり 声を上げているのが聞こえました 私は もう5年前になる ケニーとの会話を急に思い出して 思わず微笑みました 弟は正しかったのです 教科書と沈黙では 学生たちを救えません でも活動と 現状に対して異議を唱える勇気と この運動ならば 道を開くかもしれません ありがとうございました (拍手)