デイヴィッド・ベイカー
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世界で最もすばらしい機械と それで 現在何ができるかについて お話ししたいと思います タンパク質は ここにある 細胞の中に見られますが 基本的に 体の重要な機能の 全てを担っています タンパク質は 食べ物を消化し 筋肉を収縮させ 神経細胞を発火させ 免疫系を支えています 生物に起こる現象の ほとんどすべてが タンパク質のおかげで 起きています

タンパク質はアミノ酸と呼ばれる 構成要素が鎖状に並んだものです 自然界は 20種のアミノ酸を アルファベットとして使います いくつかは名前を聞いたことが あるかもしれません これはタンパク質の絵で それぞれの粒は原子です この長いひも状の分子は アミノ酸の間に作用する化学的な力によって 特有の3次元構造へと 折りたたまれます この折りたたみの過程には 規則性がないように 見えますが 実際はごく正確なもので それぞれのタンパク質は毎回 その特有な形へと折りたたまれ 折りたたみのプロセスは ほんの一瞬で終わります このタンパク質の形が その素晴らしい生物学的機能を 実現できるようにしています 例えば ヘモグロビンは 肺の中にあるときは 酸素の分子と結合するのに 適した形をしています ヘモグロビンが 筋肉へ移動すると 形がやや変わり 酸素が放出されます

タンパク質の形と それ故のすばらしい機能は タンパク質の鎖にあるアミノ酸の 配列によって完全に決まります この絵の上端の文字の 一つ一つがアミノ酸です この配列はどこから 来るのでしょうか? ゲノムにある遺伝子がタンパク質の アミノ酸配列を決めます 一つの遺伝子が一つのタンパク質の アミノ酸配列を符号化しています これらのアミノ酸配列を タンパク質の構造と機能へと 翻訳することは 「タンパク質折りたたみ問題」として 知られています これは非常に 難しい問題で 1つのタンパク質は多くの 異なった形になり得るからです この問題は 非常に複雑なため 人間は 自然界で 見つけたタンパク質の アミノ酸配列に 小さく手を加えることでしか タンパク質の力を 活用できませんでした

これは石器時代の我々の祖先が 自然界で見つけた棒や石から 道具その他の物を作っていたのに似ています しかし 人間が空を飛べるようになったのは 鳥を改造したからではありません

(笑)

科学者たちが鳥からヒントを得て 航空力学の法則を解明し エジニアがそれらの法則を使って 独自の飛べる機械を設計したのです これと同様にして 私たちはタンパク質の折りたたみの 基本法則を解明し その法則をRosettaというコンピューター プログラムに組み込もうと 何年にもわたって 取り組んできました そして 近年 大きな発展がありました 今ではコンピューター上で新しいタンパク質を 一から設計することができます 新しいタンパク質を 設計したら そのアミノ酸配列を合成遺伝子の中に 符号化します 合成遺伝子を 作らないといけないのは まったく新しい タンパク質なため それを符号化している遺伝子というのが 地球上の生物中に存在しないからです

タンパク質折りたたみ問題に対する 理解が進んで タンパク質の設計が できるようになり それと同時に 遺伝子合成の コストが下がり ムーアの法則に従って コンピューターの性能が向上したため 新しい形や機能を持つ 何万もの新しいタンパク質を コンピューター上で設計し 合成遺伝子の中に 符号化できるようになりました 合成遺伝子ができたら それを細菌に注入します その新しいタンパク質を作るよう 細菌をプログラムするのです そうして できたタンパク質を 抽出したら 設計した通りの 機能を果すか 安全かどうかを 見極めます

新しいタンパク質が作れる というのはワクワクします 自然界は多様性に満ちていますが 進化の過程で生み出されたタンパク質は 生成可能なタンパク質の中の ごく一部でしかないからです 先ほど自然界は20種のアミノ酸を アルファベットとして使うと言いましたが 典型的なタンパク質では100個ほどの アミノ酸が鎖上につながっているので あり得るタンパク質の数は 20を100回掛け合わせたもので これは10の130乗ほどになります 生命が誕生して以来 地球上に存在したタンパク質の数より 遥に大きい数です そしてこの想像を絶するほど 大きな領域を 今やコンピューターを使ったタンパク質設計技術で 探究することができます

地球上に存在する タンパク質は 進化の過程で直面した問題を 解決するために生まれました ゲノムの複製はその一例です 私たちは今日 新たな問題に直面しています 寿命が延びたため 新しい病気への 対応が必要になりました 環境を汚染し温暖化させており 生態系の問題を 山ほど抱えています 百万年 待てるのであれば 問題を解決してくれる新しいタンパク質が 進化してくるかもしれません しかし 私たちは 何百万年も待てません その代わりコンピューターを使った タンパク質設計によって 今日の問題に取り組むための 新しいタンパク質を設計できます

私達の野心的な考えは タンパク質設計という技術革命によって 生物学を石器時代から 脱却させるということです 新しい形や機能を持ったタンパク質を 設計できるということを 私達は既に証明しています 例えばワクチンは免疫系を 刺激することにより 病原菌に対する強い反応を 引き起こすものです より良いワクチンを作るため 病原菌のタンパク質と結合する タンパク質粒子を設計しました こちらでは青で示したRSウイルスの タンパク質と結合しています このようにウイルスのタンパク質が トゲトゲになっている ワクチン候補を作ることで 今まで試された どんなワクチンよりも ずっと強い免疫反応が 引き起こされるのが分かりました RSウイルスは世界の乳幼児の主な死因の 一つなので これは重要な発見です 他にもセリアック病のための 胃中のグルテン を分解する新しいタンパク質や 癌と戦うための免疫系を刺激する タンパク質などを設計しています こういった技術の進展は タンパク質設計革命の始まりにすぎません

私たちは以前に起きた 技術革命である デジタル革命に 刺激を受けました そこでは技術の進歩の大きな部分が ある1つの場所で起きました ベル研究所です ベル研究所は オープンで共同的な環境で 世界中の才能あふれる最高の人材を 引き付けることができました そしてそれが一連のすばらしい 発明につながったのです トランジスター レーザー 衛星通信 そしてインターネットの 基盤などです 私たちが目指しているのは 「ベル研究所のタンパク質設計版」です 世界中から才能ある 科学者を集め タンパク質設計革命を 加速させたいのです 私たちは5つの大いなる課題に 取り組んでいます

1つめは 世界各地のインフルエンザ株から タンパク質を抽出し 先ほどの 私たちが設計した タンパク質粒子と結合させることで 1回の接種で 生涯 インフルエンザから守ってくれる 万能インフルエンザワクチンを 開発しようとしています コンピューター上で―

(拍手)

コンピューター上で新しいタンパク質を 設計する技術が重要なのは 自然に起こるインフルエンザ流行から 守るためだけでなく 意図的な生物兵器テロの脅威から 守るためでもあります

2つめは たった20種のアミノ酸という 自然界が使うアルファベットの制限を はるかに超えて 何千種ものアミノ酸の アルファベットを使って 慢性痛などに効く 治療薬を作ることです

3つめは 既存の治療薬を それを必要とする体の部位へと運ぶ 高度な輸送手段を開発しています 例えば 化学療法薬を腫瘍へ 遺伝子治療薬を 遺伝子の修復を 必要とする組織へと運びます

4つめは 体の中で計算をしてくれる 賢い治療法を設計しています 非常に精度の悪い道具である 現在の薬よりも 遥に進んだ技術です 例えば自己免疫疾患を引き起こしている 免疫細胞のごく一部だけをターゲットにし 大部分の健康な免疫細胞には 影響しないようなものです

5つ目は シルクや アバロンシェルや 歯のような すばらしい生物材料をヒントに タンパク質を元にした新しい 生物材料を設計しています エネルギー問題や環境問題に 取り組むためです

これらの開発をするために 研究所を拡張しています 私たちは エネルギーに溢れた 才能ある 多様な科学者を求めています キャリアの様々な段階にいる 世界中の方に 参加してもらいたいのです タンパク質設計革命には オンライン設計ゲームの「Foldit」からも 参加できますし 分散コンピューティングプロジェクトの 「Rosetta@home」には パソコンやアンドロイド携帯から 参加できます

タンパク質設計によって世の中を良くすることは 私の生涯をかけた仕事です 皆さんと一緒に 何ができるか楽しみです 皆さんの参加を お待ちしております ありがとうございました

(拍手と歓声)