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Translated by Kazunori Akashi
Reviewed by Emi Kamiya

0:12 アメリカ北西部 ― カナダ国境のすぐ近くに モンタナ州 リビーという 小さな町があります 松林と湖 そして 美しい野生動物と ― 天まで届く様な 巨大な木々に囲まれています こんな環境に囲まれた 小さな町 リビーを 訪れたのですが なんだか寂しい所で 孤島のようでした リビーにはゲイラ・ ベネフィールドという ― 個性的な女性がいます ロシア系の彼女は 人生のほとんどを この町で暮らして来ましたが 常に自分は どこか人と違うと 感じていました 学生時代 女子で機械製図を選択したのは 学生時代 女子で機械製図を選択したのは 彼女だけだったと 私に話してくれました その後 ゲイラは就職し 家を一軒ずつ回って ― ガスや電気の計量メーターを 検針する仕事を始めました 昼の仕事でしたが 彼女が気になったのは 昼間なのに男達が 家にいることでした それも40~50歳代の 中年の人たちで かなりの人々が 酸素ボンベをつけていました 彼女は何か変だと思いました 数年後 ゲイラの父親が 59才で亡くなりました 年金の受け取りが始まる わずか5日前のことでした 鉱夫だったので きつい仕事の結果だと ゲイラは思いました ところがその数年後 今度は母親が亡くなります 母の死は一層奇妙に思えました なぜなら母親の一族は 永久に生きると思うほど 長生きの家系だったのです 実際 ゲイラの伯父さんは 今も元気で ワルツを習っています 自分の母親が若くして亡くなる ― 理由が見つかりませんでした その死は「異常」だったので ゲイラは悩んだのです 考えるうちに いろいろ思い出しました 例えば こんな事がありました 母が足を骨折して病院に行った時 ― レントゲン写真を何枚も撮られました 2枚の足の写真は当然としても 胸部の写真が 6枚もあるのは不可解でした 彼女は自分と両親の人生の あらゆる瞬間を 思い出しながら考えて 自分が目にしたものを 理解しようとしました 自分の町のことを考えました 町にはバーミキュライトの 鉱山がありました バーミキュライトを 土壌改良土として使うと 植物は より早く大きく成長します 屋根裏の断熱にも使われました 大量に屋根裏に入れると 長いモンタナの冬でも 暖かく過ごせるのです バーミキュライトは 公園にも フットボール場にも スケートリンクにも ありました ゲイラは この問題に取り組んで初めて バーミキュライトに 非常に有害なアスベストが 含まれていた事を知りました 謎を解いた彼女は 皆に伝えようとしました 何が起きていたのか そして ― 彼女の両親や酸素ボンベをつけて 昼間も家にいる人々が どんな仕打ちにあってきたか ところが彼女は驚愕します 皆が事実を知れば 何かが始まると思っていたのに 誰も知りたがらなかったのです この話を近所の人や友人や コミュニティーの皆に 伝えようとすればするほど 嫌がられるようになり とうとう住民の一部が ステッカーを作って 誇らしげに車に貼るほどでした ステッカーを作って 誇らしげに車に貼るほどでした こんなステッカーです 「故郷はモンタナ州 リビー でもアスベスト症には かかってない」 それでもゲイラは あきらめず調査を続けました インターネットの普及が 調査を後押ししました できるだけ誰とでも話し ― 論争を重ねるうちに とうとう幸運をつかみます ある研究者が鉱山史の調査で 町を訪れることを知ったのです ある研究者が鉱山史の調査で 町を訪れることを知ったのです 彼女はその人に話をしました 最初は信じてもらえませんでしたが その研究者がシアトルに戻って 調査する過程で 話が本当だとわかったのです こうして仲間が出来ました それでも住民は知ろうとしません 彼らの言い分はこうです 「そんなに危険だったら ― 誰かが教えてくれるはずだ」 「それが皆が死んでいく 本当の理由だとしたら ― 医者が警告したはずだ」 過酷な労働に慣れた 男達はこう言いました 「犠牲者になんて 絶対になりたくない ― でも どんな産業にも 事故はつきものさ」 それでもゲイラはあきらめず とうとう ― 町に連邦政府機関を呼んで 住民1万5千人の 健康診断に こぎつけたのです それでわかったことは この町の死亡率が アメリカ全体の死亡率の 80倍にも上ることでした 2002年のことでした でもその時でさえ 進んで警告を発する人は 誰一人いませんでした 「あなたの孫が遊んでいる 公園を調べてごらん ― バーミキュライトだらけだよ」 などと言う人はいませんでした これは無知のせいではありません 「意図的な無視」によるものです 意図的な無視とは法律用語で 知り得るだけでなく 知るべき情報なのに 知らずに済まそうとする場合 ― 法律上は意図的な無視と見なされます 知らずにいることを 自分から選択したのです 最近 意図的な無視の例が 身の回りにたくさん見られます お金のない人々に 住宅ローンを売りつける人が 何千人もいるのは 銀行による意図的な無視です 金利が操作されていると 誰もが知りながら わざと放置していたのも 誰もが知りながら わざと放置していたのも 銀行の意図的な無視です カトリック教会内の児童虐待が 何十年にも渡り 放置されていたのも 意図的な無視です 意図的な無視は イラク戦争の 準備段階でも見られました このように意図的な無視は 大規模に存在する一方 ― ごく小規模のものが 家族や家庭やコミュニティー または 組織や団体にも見られます 企業の意図的な無視を 調査する時には こんな質問をします 「職場に社員が指摘するのを 恐れる様な問題がありますか」 研究者がアメリカの企業を対象に 調査したところ ― 研究者がアメリカの企業を対象に 調査したところ ― こうした質問に 85%の人が「はい」と答えました 85%もの人が 問題の存在を知りながら 何も言わないのです 私がヨーロッパで 同じ質問項目を使って 同じ調査をしたところ ― まったく同じ割合になりました 85%です とても多くの沈黙 ― とても多くの無視です 面白いと思ったのは スイスの企業に行くと 「これはスイス特有の問題です」 と言われ ドイツに行けば 「これはドイツ病です」と言われ イギリスの企業では 「イギリス人が苦手とする ところです」と言われます でも本当は 人間固有の問題なのです 環境がそろうと私達は誰でも 意図的に無視します 調査で明らかになったのは 恐怖や報復への恐れから 無視する人もいれば 目を向ける事は無駄で どうせ何も変わらないから 無視する人もいることです 例えばイラク戦争に抗議しても 何も変わらない やるだけ無駄 見ない方がいいと思うのです 私が繰り返し耳にするのは 人々のこんな言葉です 「目を向ける人々は タレ込み屋で 奴らがどうなるか 誰だって知っている」 内部告発する人については 根深い誤解があります まず彼らは 「頭がおかしい」という誤解です 私が世界中を巡って ― 内部告発者と話して 気づいたのは 彼らが とても誠実で 保守的な人も多いことです 自分が所属する団体への 深い忠誠心を持っています 彼らが声をあげる理由 ― 目を逸らすまいとする理由は その団体を心から大切に思い 健全であってほしいと 願っているからです 内部告発者について こんなことも言われます 「奴らの活動は無意味だ 奴らの身に何が起こったか 見るがいい 潰されてしまうんだ 誰だってそんな経験は したくないだろう」 一方 告発者達に話を聞くと 彼らの口調には 常にプライドがあります 例えば ジョー・ダービーです 誰もがアブグレイブ刑務所の 写真を覚えているでしょう 世界を震撼させ イラクで行われた戦争が どんなものだったかを 示したのです でもジョー・ダービーは 記憶にあるでしょうか 従順で優秀な兵士だった彼が 例の写真を発見して 告発したのです 彼の言葉です 「私は他人を 売るような人間ではありません でも もう最後の一線を 超えていました 知らない方が身のためだと 言われましたが そんな事には耐えられません」 イギリスの医師 スティーブ・ボルシンとも話しました 彼が5年に渡って 人々に知らせようとしたのは 赤ちゃんを殺していた 危険な外科医のことでした 彼にきっかけを尋ねると こう答えてくれました 「私の背中を押したのは娘なんです ある晩 娘が来て言ったんです 『パパ 子ども達を死なせないで』って」 シンシア・トーマスは ― とても誠実な 軍人の娘であり妻です 彼女は イラク戦争から帰還した ― 友人や親せきに会って 彼らの精神状態のひどさと 心的外傷後ストレス症候群を 軍が認めようとしないことに 衝撃を受けました そこで軍人ばかりの町の 真ん中にカフェをオープンして 法律面 精神面 医療面での 支援を始めました 彼女はこんなことを言っていました 「私はいつも 将来 何になりたいか ― わからないと言ってきました でも この仕事を始めて ― 自分が変わったことに 気づきました」 今 私達は様々な 自由を享受しています 苦労の末 手にした自由です 例えば検閲を恐れず 書いたものを出版する自由 ― 以前 ここハンガリーに 来た時には存在しなかった自由です そして投票の自由 ― 特に女性にとっては 闘わなければ 得られませんでした いろいろな人種や文化背景 ― 性的志向をもつ人々が 望み通りに生きる自由・・・ でも自由は行使しなければ 存在しません ゲイラ・ベネフィールドのような 内部告発者達の行いは 自分達の持つ自由を 行使することに他なりません 彼らは起こりうる事態への 覚悟を決めています 「これから議論が起こり 隣人や同僚や友人達と 言い争うことになるだろうが こんな争いにも強くなろう」 「否定的な人々の相手もしよう 彼らが 私の主張をもっと優れた 強固なものにするのだから」 「よりよい活動にするために 反対の立場の人とも協力しよう」 彼らはとても粘り強く 強い忍耐力をもち 無視も沈黙もしないと 決意しています 私はモンタナ州 リビーに行った時 ― アスベスト症診療所を訪れました ゲイラ・ベネフィールドのおかげで 生まれたものです 最初は治療を必要として 助けを求めに来た人でさえ 裏口から入ることがありました 彼女が正しいと 認めたくなかったのです 彼女が正しいと 認めたくなかったのです 私が食堂の席から 外を眺めていると 幹線道路をトラックが 行き来するのが見えました 家々の庭から土を運び出し 汚染のない新しい土と 入れ替えていたのです 私は12才の娘を連れて行きました ゲイラに会わせようと思ったのです 「なんで?」と娘が聞くので 私はこう言いました 「ゲイラは映画スターでも セレブでも専門家でもないし ゲイラ自身が言うとおり ― 聖人なんかじゃない でも彼女が普通の人だということが とっても大事なの 彼女は私達と同じ 普通の人 ― 自由を持っていて それを行使しようとした」 ありがとうございました (拍手)