ナンフー・ワン
3,124,744 views • 5:56

私の名はナンフーです 中国語で「ナン」は「男」 「フー」は「柱」という意味です 家族はその柱となるよう育つ 男の子の誕生を望んでいました 女の子が生まれたのですが それでも「ナンフー」と 名付けられました

(笑)

私は1985年に生まれました 中国が一人っ子政策を発表する 6年前です 私が生まれた直後に 地元の役人がやって来て 母に不妊手術をするよう命じました 祖父は役人に立ち向かいました 孫息子に家族の名を 継がせたかったからです 結局 両親は2人目の子供を 持つことが許されましたが 5年待たされた上に 相当な罰金を払わされました

私と弟が成長する中で 周囲は一人っ子の家庭ばかりでした 私には 恥の感情があったのを 覚えています 弟がいたからです 子供が2人いることで 家族が 何か悪い事をしたような気がしました 当時は その恥や罪の感覚が どこから芽生えるのか 疑問に思っていませんでした

1年半前 私に第一子が誕生しました それは これまでの人生で 最高の出来事でした 母親になる事で 自分自身の子供時代をすっかり違った見方で 見られるようになり 中国での子供時代の記憶が よみがえって来たのです 過去30年間 私の家族は皆 子供を持つのに 政府に許可を申請せねばなりませんでした 一人っ子政策の下で 生きた人達にとって それは どんなものなのかと思いました

そこで そのドキュメンタリーを 制作する事にしました インタビューをした人の1人に 私の故郷の村の赤ん坊全員を 取り上げた助産師がいました 私もその1人です インタビューを行った当時 彼女は 84歳でした 私はこう訊きました 「これまで 何人の赤ん坊を取り上げたか 覚えていますか?」 彼女は 分娩の数は 覚えていませんでした 彼女がその代わりに語ったのは 自分が行った6万件の強制堕胎や 不妊手術のことでした 彼女が言うには 時折 妊娠後期の胎児は 堕胎しても 生き延びるので 産まれた後に 殺したこともあったそうです それを行う時 自分の手が どんなに震えたかを 彼女は覚えていたのです

それを聞いて 衝撃を受けました 映画制作に着手した時 その映画を加害者と被害者の 単純なストーリーにしようと思っていました 政策を実行した人々と その影響の下で 生きた人々の話です しかし 私が目にしたものは 違っていました

助産師への インタビューが終わった時 彼女の家の ある一角に気づきました そこには 丹念に作られた お手製の旗が 飾られていました 旗にはそれぞれ 赤ん坊の写真が 貼られていました それらの旗は 彼女が 不妊治療の手助けをした家族から 送られてきたものでした 彼女はうんざりするような数の 強制堕胎と不妊手術を 過去に行ってきたので 今は家族が子供を持つ手助けしか しないのだと説明しました 一人っ子政策の 実行に手を貸したという― 罪の意識に苛まれていると 彼女は言いました そして 家族が子供を持つ 手助けをする事で 過去に行った事への罪を 償えたらと願っていました 彼女もまた この政策の犠牲者であると 私には はっきり分かりました 誰もが 彼女にこう言いました あなたのしている事は 中国が生き残るためには正しく必要な事なのだと そして国のために 正しいと思う事をすべきなのだと

このメッセージが どんなに強烈だったか分かります それは 私が幼い時もずっと そこら中に溢れていました マッチ箱や トランプ 教科書やポスターにも 印刷されていました 一人っ子政策を讃える プロパガンダが 私の周囲に溢れていたのです

[不妊手術を拒否する者は 皆逮捕される]

それに背くことに対する 脅しも溢れていました そのメッセージが 人々に浸透し過ぎたために 私は弟がいる事が 恥ずかしいと感じながら 育ったのです

フィルムに収めた人達 一人一人と接し 彼らの魂と心が如何に プロパガンダに影響されうるか 多くの人々の利益のために 犠牲を厭わない気持ちが 如何に邪悪で悲劇的なものに 捻じ曲げられうるか分かったのです

このような事が起きているのは 中国だけではありません プロパガンダが存在しない国など 地球上 どこにもありません 中国よりもっとオープンで 自由な国であるはずの社会では プロパガンダがどんなものかを認識する事が むしろ難しくなるかもしれません ニュース報道、テレビのコマーシャル 政治キャンペーン そして SNSといった 何気なく見かけるものの中に それは潜んでいるのです 知識がなければ それは 私達の考えを変えてしまいます どの社会も プロパガンダを 真実として受け入れる危うさがあります プロパガンダが 真実に 取って替わる事がなくなる社会に 真の自由が訪れるのです

ありがとうございました

(拍手)