ヒュー・ハー

走り、登り、踊ることを可能にする新たなバイオニクス義肢

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Translated by Eriko T.
Reviewed by Akiko Hicks
0:12

科学という虫眼鏡を通して 自然を深く観察し デザイナーは その原理や デザイン体系の 基盤を築いている プロセスや素材を学び取り 自然は 生物由来の素材を模倣した 人工の構成物から 神経プロセスを模倣した 計算方法に至るまで デザインを進化させています 同時にデザインもまた 自然を進化させています 遺伝学や再生医学の分野で そして合成生物学で デザイナーは自然界では予期されなかった 全く新しい技術を生み出しています

0:51

バイオニクス(生体工学)は 生物学とデザインの 相互作用を探ります ご覧の通り 私の足はバイオニック義肢です 今日は人とバイオニック技術との 融合についてお話します 体に装着したり 体内に埋め込んだ 電子制御装置が いかに 障がいと健常の間を埋め いかに 障がいと健常の間を埋め 人間の限界と可能性の 溝を埋め始めているかという話です

1:23

バイオニクスは私の身体を定義しています 1982年に私は両脚を失いました 登山事故により凍傷で組織が 損傷してしまった為です その当時 私は自分の体を 壊れたものとして見ませんでした 人間の身体は 決して壊れるはずがないと考えたのです 壊れているのは技術の方で 技術が不十分だったのです このシンプルで強力なアイデアが 動機となって 私は 技術を前進させ 自分の障がいや さらには 他者の障がいをも なくそうと 心に決めたのです 私は まず自分が ロックやアイスクライミングの 垂直の世界に戻る為の 特殊な義足の開発から始めました すぐに気付いたのは 人工的な私の身体の部分は 自由自在に 好きな形態や機能を 持つことができ 白紙の状態で 固定概念に捕らわれず 生物学的限界を超える機能を持つ構造をも 創り出せるということでした 私は背丈を 調整可能にしてみました 150センチ程に低くも 好きなだけ高くもできるんです

2:32

(笑)

2:34

落ち込んでいたり 自信を無くしている時は背を高くしてみたり 自信に溢れ 余裕を感じている時は 相手にハンデを与えるために ちょっと身長を低くしてみたりしました

2:48

(笑)(拍手)

2:51

幅の狭いくさび形の足を使えば 普通では― 足場が確保出来ないような 急な岩の亀裂を登る事が出来たし スパイクのついた足で 垂直の氷の壁を 筋肉疲労無しに 登る事が出来ました 技術革新により 私は自分のスポーツに さらに強くなって復帰しました テクノロジーは私の障がいを取り除き 新しいクライミング能力を与えました 若かった私は 未来は 技術の進化により 障がいのない世界が実現し 神経移植により 視覚障害者が視力を取り戻したり 身体が麻痺した人が外骨格を装着して 再び歩く事が出来る世界を想像しました

3:31

残念な事に 技術が未熟な為に 障がいは世界で蔓延しています この男性は手足3本を失っています 現在の技術のおかげで 車いすからは 解放されていますが いつか彼のような 重度の障がいを持つ人が 完全に不自由さを克服できるように バイオニクスを さらに 進歩させなければなりません MITメディアラボでは エクストリーム・ バイオニクス・センターを設立しました 私たちのミッションは 生体機械工学や 再生機能を通じて 様々な脳や身体の機能障害を修復すべく 様々な脳や身体の機能障害を修復すべく 基礎科学の研究や技術力を 推進して行くことです

4:12

今日は このセンターの取り組みの 良い例として 皆さんに私の脚が どう動き機能するのかをお見せしましょう 昨夜 ちゃんと足を剃って来ました 皆さんに披露するのですからね バイオニクスは高度なインターフェース工学を伴います 私のバイオニック義肢には 3つのインターフェースが使われています 「機械的」なものは 義肢を私自身の身体に どう取り付けるかというもので 「動的」 なものは 生身の脚のようにどう動かすか 「電気的」なものは 神経系と情報交換する技術です

4:41

まず機械的なインターフェースから お話しします デザインの領域では 私達は未だに デバイスを上手く身体に 取付けることができません この時代にもなって 人類史上 最も成熟し 最も古い技術の一つである 「靴」が いまだに靴擦れを引き起こすなんて 信じられません 一体なぜなのでしょう? 私達は物を人体にうまく取付ける 方法を全くわかっていないのです これはMITメディアラボ ネリ・オックスマン教授の 美しく叙情的なデザイン作品です 外骨格の場所により異なる抵抗力を カラーバリエーションによって 3D プリントされたモデルで表したものです 場所や状況に応じて各部の硬さが変わり 場所や状況に応じて各部の硬さが変わり 最適なサポートと柔軟性をもたらすと同時に 常に快適な未来の衣服を想像してみて下さい

5:30

私のバイオニック義肢は私の身体に 人工の皮膚素材で装着されていますが その硬さは 装着部の組織の生体力学に対応して 変化します この対応を可能にするために まず 私の脚の数学的モデルを作りました まず 私の脚の数学的モデルを作りました その為にMRIなどのイメージングツールを使用して 体の内部の画像を得て さまざまな組織の形状構造や 位置を把握しました また ロボティック・ツールも使いました 14のアクチュエータ付きのサークルは 足の周りを囲み アクチュエータが伸びて脚の表面を見つけ 圧迫しない状態での形を測定します 次に組織を押し 脚の各部位のポイントで 組織の弾性(コンプライアンス)を測ります

6:14

これらの画像やロボットから 得たデータを統合し 左のように 私の下肢を 数学的に表します 画面上の多数の点はノードと呼ばれ 各ノードの色は組織の柔軟性を表しています これを数学的に変換して 右のような人工皮膚の デザインに使います 右のような人工皮膚の デザインに使います そして最適なのは 身体の硬い部分に当たる 人工皮膚は柔らかく 柔らかい部分では人工皮膚は硬い方が 良いとわかりました そしてこの組み合わせは どの組織にも見られました このフレームワークを基に 今まで私が試した中で 最も快適なバイオニック義肢を 生み出しました 明らかに 将来 私達の衣服や靴 矯正器具 そして義肢などのデザインや製造は 職人の技術に基づいた作業から データによる数学的アプローチへと 移行するでしょう 将来は 靴を履いて 靴擦れができる事は無いでしょう

7:07

人工皮膚には センサーやスマートマテリアルを 埋め込みました これはカリフォルニア州の SRIインターナショナルが 開発した素材です 静電効果により硬さが変化します 電圧がゼロなら素材は柔らかく 紙のようにしなります ところが ボタンを押し電圧を加えると 板のように硬くなります

7:32

我々はこの素材を 私の身体とバイオニック義肢とをつなぐ 人工皮膚に埋め込みました このように歩いている時は 電圧は掛かっておらず このインターフェイスは柔らかく柔軟です ボタンが押され電圧が加わると それは硬くなり バイオニック義肢の より自由な操作が可能になります

7:49

我々は 装着型の外骨格も作っています このエクソスケルトン(外骨格)は走行中に 必要な部分が硬くなったり 柔らかくなったりすることで 人の関節を 衝撃や磨耗から守ります 将来は皆 エクソスケルトンを装着して ランニングのような運動を するようになるでしょう

8:07

次に動的インターフェースですが 私のバイオニック義肢は何故 本物の脚のように動くのでしょう? 私のMITの研究室では 人が通常 どのように立ち、歩き、走るかを研究しています 筋肉がどう動いているか そして脊髄はそれらを どうコントロールしているか? この基本的な科学が 私達が作ろうとする物の基盤です バイオニックな足首、膝、股関節などの 身体のパーツを 一から造り出そうとしているのです 私の装着しているバイオニック義肢は BiOMと呼ばれ これまで1,000人近い患者に 装着されて来ました そのうち400名は負傷した米国軍兵士です

8:40

この仕組みは かかとが地に着くと コンピューター制御により システムが硬度をコントロールし 義肢が地面にあたる衝撃を和らげます 歩行動作の途中で義肢からの トルク(回転力)とパワーが増加し 体を押し上げ 前に進ませるのです これはふくらはぎ周辺の筋肉と 同じ働きです この生体工学による推進力は 実際 患者にとって 非常に重要です 左の女性が着用しているのが バイオニックデバイスです 右の同じ女性が着用する受動的デバイスは 通常の筋肉機能を模倣出来ていません これが誰もが通常出来るはずの 自宅の階段の昇降などを 可能にしています バイオニック義肢は 驚くべき運動も可能にします こちらは岩場を走る男性です 彼の名はスティーブ・マーティン 同名のコメディアンとは別人です 彼はアフガニスタンで被爆し 両足を失いました

9:33

私達は脚を囲むように装着する エクソスケルトンも 同じ原理に基づいて 作成しています この男性は脚に 何の問題も 障がいもありません 健常な体です このタイプのエクソスケルトンは 筋肉のような トルクとパワーを 脚に与えるので 自分の筋肉でそれらを 生み出す必要はありません これは史上初の歩行を強化する エクソスケルトンで 代謝コストを大幅に削減します その強力な増強力のために ごく普通の健康な人が 40分間デバイスを着用すると 取り外した時に 本物の脚は 途方も無く重くぎこちなく感じます 私達はいま 身体に装着した機械が 人間をより強く、速く、効率的にする 時代の始まりに差し掛かっているのです

10:26

次は電気的インターフェースです 私の義肢はどのように 神経系と情報をやりとりするのでしょう? 私に残された下肢に取付けられているのは 筋肉の発する電気的パルスを測る電極です このパルスが バイオニック義肢に伝わり 私が無いはずの下肢を動かす事を考えると ロボットはその動かしたいという意志に従います この図は基本的に バイオニック義肢の制御方法を説明しています 我々は失われた手足をモデル化し どのような反射運動があり どのように脊髄の反射が 筋肉を制御しているかを解明し その機能を バイオニック義肢のチップに埋め込みました 実際の仕組みとしては 反射の感度を調節し モデルの脊髄反射と 神経信号に合うよう調節し 私が残っている脚の筋肉をリラックスさせると トルクとパワーがとても弱まり 逆に筋肉を緊張させると より多くのトルクが得られ 走る事すらできるようにしたのです これが神経信号コマンドによる 走る動作の初めてのデモンストレーションでした 素晴らしい気分です

11:29

(拍手)

11:34

そして更には 人間と義肢とのやりとりを 双方向に繋ぎたいと考え 切り取った神経を マイクロチャネル・アレイの中を通って 成長させる実験をしています チャネルの反対側では 神経が皮膚細胞や筋細胞といった 細胞につながります 運動チャネルを見れば 人がどう動きたいかがわかるので それをワイヤレスで バイオニック義肢に送信したり バイオニック義肢のセンサー側の 信号を刺激として変換し 隣接する感覚チャネルに伝えます これが人間が使えるように 開発が進めば 私のような人間は本物の脚のように リアルに動く義肢を持つだけではなく リアルな感覚まで持つ事ができるのです

12:24

このビデオではリサ・マレットが 両脚に人工義肢を装着した 直後の様子を紹介しています 確かにバイオニクスは人々の 生活に大きな変化をもたらしています

12:34

(ビデオ) リサ・マレット: ああ 何て事でしょう 信じられないわ 本物の足があるみたい!

12:48

女性:走り出さないで

12:49

男性:振り返って 同じ事を登りながらやってみましょう 歩いて かかとからつま先へ 平らな地面を歩く時と同じようにして 斜面を登って行ってみて

13:00

リサ: ああ信じられない

13:02

男性: 体を押し上げてる?

13:04

リサ: ええ!もう - 例えようも無いわ

13:09

男性: ちゃんと押し上げていますね

13:11

次週 私は —

13:14

(拍手)ありがとうございます

13:18

ありがとう 次週 私は メディケア&メディケイド(公的医療保障制度)と サービスセンター(CMS)を訪ね この義肢が必要な患者に届くように 適切なコードや価格の設定をするように 説得しに行く予定です ありがとうございます(拍手)

13:38

あまり知られていませんが 世界の人口の半分以上が 何らかの認知、感情、感覚、運動の 機能障害の一形態に苦しんでいます そして技術の貧しさの為に そうした状態が障がいや 生活の質の低下に繋がることが あまりにも多いのです 基本的なレベルの生体機能は 人権の一部として保障されるべきなのです すべての人は望めば 障がいの無い一生を送る権利を 持つべきです — 重度の鬱を患う事無く生きる権利 視力障害のある人が 愛する人を見る権利 手足の麻痺や切断を経験した人が 歩き ダンスをする権利が 保障されるべきです 社会全体で このような人権を実現できるはずです もし人間に 障がいはないという考えを 受け入れれば 人は決して壊れる事はありません 私達が作った環境や技術が 壊れて機能していないのです 我々人間は限界を受け入れる 必要などありません 障害を技術革新によって 乗り越える事が出来るのです 今世紀に起こるバイオニクス技術の 進歩を通して 人としてのより高度な 経験のため そして障がいを根絶するために 技術を確立して行きます

14:52

もう一つの物語で締めくくりたいと思います 美しい物語 エイドリアン・ハスレット=デービスの物語です ボストン・テロ事件によって エイドリアンは左脚を失いました これは彼女に出会った時の写真です スポルディング・リハビリテーション病院です エイドリアンは 社交ダンスのダンサーです

15:10

エイドリアンはダンスの世界に生きています ダンスは彼女の表現であり アート フォームなのです ごく自然な事ですが 彼女はボストンテロで 足を失った時 ダンスフロアに戻りたいと思いました

15:22

彼女に会った後 車で家に戻る道中 こう考えました 私はMITの教授だし リソースがあるのだから バイオニック義肢を造って 彼女がダンスの世界に戻れるようにしよう 私は義肢学、ロボット工学、機械学習 そしてバイオメカニクスを専門とする MITの科学者達を集め 200日の間 ダンスというものを 研究しました 我々はダンサーを招き 彼らがどのように動くか ダンスフロアにどのような力を 加えるかを研究し それらのデータを収集しました そこからダンス時の基本原則や 反射的なダンス能力などを割り出し そうした知性をバイオニック義肢に 埋め込みました バイオニクスは人々を強く速くする だけではありません 感情の表現や人間性も ロボティクスに組み込むことができます

16:13

3.5秒の間に ボストンテロでは2つの爆弾が 爆発しました 3.5 秒の間に犯罪者である臆病者は エイドリアンからダンス・フロアを奪いました 我々は200日かけて 彼女をそこに再び立たせました 我々は暴力の脅迫に 怯えたり 屈服したり 軽んじられ 征服され 止められることはありません

16:36

(拍手)

16:43

皆様 ご紹介します エイドリアン・ハスレット=デービス 事件以来 初のパフォーマンスです クリスチャン・ライトナーと踊ります

16:53

(拍手)

17:04

(音楽:「リング・マイ・ベル」エンリケ・イグレシアス)

17:50

(拍手)

18:21

皆様 研究チームのメンバー エリオット・ラウズと ネイサン・ヴィラガレ・カルスキです エリオットとネイサンです

18:31

(拍手)

ヒュー・ハーは次世代のバイオニック義肢、自然にあるデザインをヒントに作られたロボティクスを駆使した義肢を作っています。ハーは30年前、両足を登山中の事故により失いました。現在MITメディアラボのバイオメカトロニクスグループを率いる彼は、専門的でもあり深くパーソナルでもあるトークの中で、驚くべきテクノロジーを紹介します。2013年のボストンマラソン爆破事件で左脚を失った社交ダンサーのエイドリアン・ハスレット=デービスが、このトークのために、事故後初めてのダンスをTEDステージで披露します。

About the speaker
Hugh Herr · Bionics designer

At MIT, Hugh Herr builds prosthetic knees, legs and ankles that fuse biomechanics with microprocessors to restore normal gait, balance, speed — and perhaps to enhance.

At MIT, Hugh Herr builds prosthetic knees, legs and ankles that fuse biomechanics with microprocessors to restore normal gait, balance, speed — and perhaps to enhance.