デイビッド・カマリロ
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脳震盪は 以前よりはるかに 恐ろしい言葉になっています 私自身も 身に染みて感じています わたしは アメフトをしてきた10年間で 何千回も頭を衝突されました これ以上にひどい経験をしたのは 自転車で何度かの事故を起こし 脳震盪に苦しんだことで― 今ここに立っている状態でも もっとも最近の事故の影響が残っています

脳震盪に関する不安には 証拠があります 何度も脳震盪を経験すると アルツハイマー病などの初期の認知症や 慢性外傷性脳症を 引き起こす可能性があります ウィル・スミス主演の『コンカッション』は このような題材を取り上げているので アメフトや軍隊で脳震盪が起きやすい ということはご存知でしょう しかし 皆さんの中では サイクリングが 子供のスポーツ関連脳震盪の第一原因だと 知っている人は 少ないかもしれません そのため もう1つ 皆さんがおそらく知らないことを お伝えします それは アメフトや自転車など 多くのスポーツで使用するヘルメットは 子供を脳震盪から 適切に守ることができるように 設計や試験されたものでは ないのです 実際は 頭がい骨骨折から守るための 設計や試験がなされたのです

そこで いつも親御さんから受けるのは こんな質問です 「あなたの子供に アメフトをさせたいと思いますか?」 または 「私の子供には サッカーをさせるべきでしょうか?」と それはまだ自信をもって 答を出せる領域ではありません

そのため 少し違う角度から この質問を見てみます どのようにすれば脳震盪が防げるのでしょうか または 防ぐことは可能なのでしょうか 殆どの専門家は 防げないと考えています しかし 私の研究室での研究によると 脳震盪に関する詳細な情報が 分かってきており これについてより深く 理解することができるようになっています 何故ヘルメットによって 頭がい骨骨折を防げるかというと 極めて単純なことだからです その仕組みが分かっています 脳震盪が起こる仕組みは ほとんど知られていません

脳震盪になったときに 何が起きるかイメージしやすいよう 動画をお見せします グーグルで 「脳震盪とは何?」と検索すると 見ることができます アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の ウェブサイトが出てくるので その動画を見ると 脳震盪の全体像が分かります 動画では まず 頭が前に動くと 脳は遅れて動きます 脳はだんだんスピードを上げ 頭がい骨に衝突します そして その場所で跳ね返って 頭がい骨の反対側に 衝突します そして このNFLから資金援助を受けた CDCの動画で はっきり分るように 脳の表層 ― つまり 頭がい骨に衝突した場所は ダメージを受けているように見えます さてこの動画について言えば 脳震盪が起こる仕組みとして 科学者が考えていることを 正しく描いている部分もあります でもこの動画は 間違っている点もたくさんあります

1つだけ 私も おそらく殆どの専門家も 共通の認識なのは 脳は様々な動きをする ということです 脳は頭がい骨の動きから遅れをとり 頭がい骨の動きに追いついた後 前後に動き そして振動もする この動きは本当だと思います しかし この動画で見られる 脳の動きの程度は おそらく 全く正しくありません 頭蓋内には ほとんど余分な空間はありません たった数ミリの空間に 満たされている脳髄液が 外傷から守る役割を果たしています そして 脳は恐らく 頭蓋骨の中で ほんの少ししか動いていません

また この動画では 脳が一つの固い塊として動いているように 見えますが 実際はそうではありません 脳は 私達の身体の中でも 最も柔らかいものの一つです ゼリーのようなイメージです そのため 頭が前後に動くと 脳は歪み 回り ねじれて 組織は引き伸ばされます 多くの専門家は 恐らく― 脳震盪は脳の表層で起きているものではなく より深いところで 脳の中心部のほうに起きている という考えに 同意するでしょう

そこで 脳震盪のメカニズムを 理解し 脳震盪を防ぐために このようなデバイスを使って 問題にアプローチしています マウスガードです この中に 携帯電話と同じような センサーが入っています 加速度計 姿勢制御装置といったもので 頭をぶつけた時に 1秒間に1000回測定をして 脳がどのように動いたかを示します マウスピースの原理はこうです これは歯にフィットします 歯は身体のなかで非常に硬い部分ですので がっしりと頭蓋骨に繋がっています これにより どのように頭蓋骨が動くか 最も正確に測定することができます ヘルメットを使った方法で 試した人もいます 肌に接触させる他のセンサーも 試みましたが どのセンサーも動きすぎてしまいました マウスピースで最も信頼できるデータを 取得できるということが 分かりました

このデバイスを手に入れたことで 死体から学べる以上のことが学べます これまでは 脳震盪について理解する 最善の方法は 死体からでしたが これからは 生きた人間から もっと多くのことを学べるのです しかし 日常的に外出時に頭をぶつけて 脳震盪を受ける 積極的なボランティアは― どこで見つかるのでしょうか 実は 私もその一人でした 我らがスタンフォード アメフトチームです

そして これが私達の実験室です 初めて私達が― このデバイスで脳震盪を測定した シーンをお見せします 注目していただきたいことは これには姿勢制御装置が入っていて 頭の回転運動を測定します 多くの専門家は 回転の測定が 脳震盪で何が起こっているかを知る上で 最も重要な要素だと考えています この動画を観て下さい

(実況) クーガーズは遅れて ラックは余裕のプレイ ウィンスローが激突 大丈夫でしょうか

(観客の歓声)

画面の上の方です ポストプレイで 抜きますが セーフティが来る 実際の速度ですと このような音が聞こえます ぶつかったのは―

(デイビッド・カマリロ) すみません 3回はちょっとやりすぎでした でも 見ての通りです

この動画を見る限り 彼は強く頭を打ち 負傷した ということしか分からないでしょう しかし 彼が着けていた マウスガードからデータを抽出すると より詳細で 多様な情報が 見えてきます その一つとして 彼はマスクの左下側から アタックされたことが分かります 直感から少し外れたことが起こったのです 彼の頭は右に動いたのではなく 実際は まず左側に回転したのです そして 首が圧縮された後 その力で右後方にしなったのです つまり この左右の動きが むち打ちの現象に似ていて これが結果的に脳の損傷に繋がる と考えられます

このデバイスで頭蓋骨の動きを測ることは できますが 脳の実際の動きについては 知ることはできません そこで私達は スウェーデンのスベイン・ クライベン氏のグループと共同研究をしました 彼らは脳の有限要素モデルを開発しました これがそのシミュレーションモデルです 先程お見せした マウスガードで得た 衝突のデータを使い 脳の変化が分かります これが脳前部の断面図です 先程お話しした ねじれや歪みが 見えるでしょう CDCの動画と大きくことなっていることが 分かると思います 今見えている色は― どれだけ脳の組織が伸びているかを 示しています 赤色は50%伸びています つまり 脳の特定の箇所は 通常の長さより― 50%伸びたということです

そして 一番見て頂きたいのが この赤い部分です ここは 脳の中心に非常に近いところです そして CDCの動画と較べて このような色は 表層には― あまり見られません

脳震盪がどのように起きているかを― 私達の見解をもう少し詳しく お伝えします お伝えしたいのは 私達や他の研究者が見つけたのは 頭がこの方向で回転する時に 脳震盪が起きる可能性が高いということです この動きはアメフトのようなスポーツで よく起こり― この動きはそれより危険に見えますが いったい何が起きているのでしょうか 一つ気づくことは 人間の脳は― 他の動物と異なり このように大きな半球が二つあります 右脳と左脳です この図で見て頂きたいポイントは 右脳と左脳の間に 脳の深部にまで達する 大きな溝があります この溝の中に この図では見えないのですが 信じて想像してください 線維性のシート状組織があります 鎌(かま)と呼ばれるものです これが前頭から後頭まで 続いています 大変強固なものです こんな構造であるので 衝突で 頭が左右に動いた時 その力が すぐに 脳の中心まで届きます

さて 溝の底はどうなっているのでしょうか これは脳の接続部であり― 実は 溝の底にあるこの赤い神経線維束は 最大の神経線維束で― 右脳と左脳のつながりなのです これを脳梁(のうりょう)といいます 私達は これが 脳震盪のメカニズムで 起こりうる可能性が最も高く 力は下の方に伝わって 脳梁に達し 右脳と左脳間での解離が起こると 考えられます これで いくつかの脳震盪の症状が説明できます

この結果は 先に述べた慢性外傷性脳症でも 同様に見られます これは中年の元アメフト選手の脳断面写真です ここで見て頂きたいのは 脳梁です こちらは通常の脳梁のサイズで ― こちらは慢性外傷性脳症のある脳梁です 大きく萎縮しています 全ての脳室内の空間も同様です これらの脳室は通常よりずっと大きく― 脳の中心近くの組織は 時間とともに死滅しました これらの情報は みごとに整合しています

良い情報もあります 私の話の終わりまでには 希望を持って頂けるようにします 私達が気付いたのは 特に損傷のメカニズムについてです 力はこの溝の底に素早く伝わるのですが それでも一定の時間がかかります そこで もし頭の運きのスピードを落として 脳が頭蓋骨の動きから遅れないで― 頭蓋骨と同時に動けば 脳震盪を防ぐことができるかもしれません

では どうすれば 頭の動きを減速できるのでしょうか?

(笑)

巨大なヘルメットです より広いスペースがあれば より時間を稼げます これはちょっとしたジョークですが 何人かの方々はこれを見たことがあるでしょう バブルサッカーと言われる れっきとしたスポーツです 実際に 先日 若者が― 近くでこのスポーツをしているところを 家から見ました 私が知る限り これまでこのスポーツで 脳震盪は報告されていません

(笑)

まじめな話 この原理で説明がつきます ただ この話は少し行きすぎでしたね これはサイクリングやアメフトでは 現実的ではありません そのため 私達は ホーブディングという スウェーデンの企業と連携しました 見たことがある方もいるでしょうが 彼らは 同様に空気をつかった原理で 頭を守るスペースを増やして 脳震盪を防ぐ方法をとっています 子供達は家で試さないでくださいね このスタントマンは ヘルメットを着けていませんが 代わりに首輪を着けています この首輪には マウスガードと同じタイプの センサーが付いていて 彼が転びそうになると それを察知し― エアバッグが飛び出します 車のエアバッグの動作と 基本的には同じ方法です そして 私の研究室で 彼らのデバイスを使った実験をした結果 いくつかのケースにおいて 通常の自転車用ヘルメットと比較して 脳震盪のリスクを大幅に減らせることが 分かりました 結構面白い製品だと思います

しかし 脳震盪を防ぐ技術の恩恵を― 実際に受けるには 基準を満たさなくてはなりません これが現実です このデバイスはヨーロッパでは すでに販売されていますが アメリカでは 今後もしばらくは 販売できないでしょう 理由をお教えします 良い理由とあまり良くない理由があります

自転車用ヘルメットは 連邦政府によって規制されています 消費者製品安全委員会の管轄により― 自転車用ヘルメットの販売が承認されます これが彼らの使う試験です これは 最初の方でお話しした 頭蓋骨折の話に戻ります この試験の目的はこの承認のためです もちろん この試験は重要なことです 人の命を守ることができます ただし 充分ではないと思います 例えば この試験では― エアバッグが必要な時と場所で作動し 不要な時には作動しないことを 評価しません 同様に ヘルメットが脳震盪を防ぐかどうかは この評価では分からないのです そして 規制の無いアメフトのヘルメットも 同じような試験をしています 政府による規制は無いのですが 産業団体の試験があり これは多くの産業製品でそうだと思います しかしこの団体は 基準を更新することに あまり前向きではありません そこで私の研究室では 脳震盪のメカニズムだけでなく― より良い試験基準を検討しています そして政府は このような情報を使って 技術の革新を推進してほしいと 願っています あるヘルメットがどれほど有効か 消費者に伝えることで 変わるはずです

そして最後に 最初の質問に戻りたいと思います 私の子供にアメフトや自転車をさせることに 抵抗はないかという― 質問のことです 私自身が怪我をした経験に 基づいた答えにはなりますが 私の娘のローズが自転車に乗ることには いささか不安があります 彼女は1歳半ですが すでにサンフランシスコの道を 自転車で走りたがっています これは その道の1つです 私の個人的な目標であり 実現可能だと信じていることは― これらの技術を更に発展させることです 実際 私の研究室では ヘルメット内の空間の最適な利用方法について 検討を進めています そして 彼女が二輪車を乗る準備が出来た時には 規制に適合して― 脳震盪のリスクを 実際に軽減することができる― 何らかの製品が出来ていることを 確信しています

そして ここにいる何人かの皆さんは もっとすぐに必要としていると思いますので 私があと数年で― 達成したいことがあります それは お子さんにこれらのアクティビティをさせることは 安全で健康的だと 親御さんや祖父母の方々に 伝えることができるようにすることです そして それを実現するために 日々切磋琢磨できる素晴らしい仲間が スタンフォードにいることは 非常に幸運なことです

数年後にここに戻ってきて 最終報告をしたいと思っています ただ 今の私がお伝えできることは― 脳震盪という言葉を聞いただけで 怖がらないでください 希望はありますから

ありがとうございました

(拍手)