クレイグ・ベンター
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本日 発表致しますのは 初の人工細胞です その細胞は コンピュータの デジタルコードとして誕生し 4本の化学物質の瓶から 染色体が作られ その染色体は イースト菌内で組み立てられ レシピエントとなる 細菌の細胞に 移植され その細胞が 別の種の細菌へと 形質転換したのです つまり これは この惑星上で初めての コンピュータを親にもつ 自己複製できる種なのです また Webサイトに エンコードした 遺伝情報を公開した 初めての種でもあります ウォーターマーク(目印)を 入れた話をあとでします

このプロジェクトの発端は 15年前に遡ります 我々のチームは その頃は TIGRと 呼んでいましたが 歴史上初めて 二つのゲノムの 塩基配列を解読する仕事に 取り組んでいました インフルエンザ菌と 自己複製する生物として 最小である マイコプラズマ=ジェニタリウムです これらの塩基配列を 解読し終えた後で 考えたことは これが自己複製する種として 最小のゲノムであるとすれば さらに小さなゲノムは 存在しうるだろうか そして 遺伝子レベルで 細胞の活動に関する基礎を 理解できないか ということです 15年間の探究を経て この問いに答えるための スタートに やっと たどり着くことができました 細胞から複数の遺伝子を 除去することは 非常に困難だからです 一度に一つずつ 除去するしかないのです そこで早い段階で 人工的な手段を 用いることにしました 誰も試していない方法では ありましたが 細菌の染色体を 合成できるのか確かめ どの遺伝子が必須であるかを 理解するため 遺伝子の内容を 様々に変えてみました それが15年の探究の 始まりだったのです

最初の実験を始める前に 我々は 当時ペンシルバニア大学にあった アート=カプランのチームに 検討を依頼しました 研究室で新しい種を 作ることに対して どのようなリスクや課題 倫理問題が 存在するかという検討です 初めての試みだったからです アート=カプランは 2年を費やして 独自に検討を行い 1999年にサイエンス誌に 結果を発表しました ハムと私は2年間 この研究から離れ ヒトゲノムを解析する 別のプロジェクトに参加しました しかし 解析が完了するや否や 直ちに この仕事に戻りました

2002年に 新たな研究所を設立しました それが代替生物エネルギー研究所です 目標は二つありました 一つ目は 我々の技術が 環境に与える影響を把握し 環境をより深く理解する 手法を見つけること 二つ目は 人工生命を作る 過程を経て 生命の基礎についての理解を 深めることです 2003年に 最初の成果を公開しました ハム=スミスと クライド=ハッチソンが 小規模に エラーのないDNAを作る 新しい手法を 開発したのです 最初の仕事の対象は バクテリオファージの 5000文字のコードでした これは大腸菌のみを 攻撃するウイルスです バクテリオファージφX174 を 使用しましたが その選択には 歴史的経緯があります 事実上 初めて解読された DNAファージであり DNAウイルス DNAゲノムだったのです 5000の塩基対でできている ウイルスサイズのピースを 作成することが可能なら これは最低限 連続する断片を 大量に作成する方法であり 最終的に 断片を つなぎ合わせれば このメガ塩基対の 染色体ができると考えました これは当初想定していたより かなり大きなサイズでした

幾つかの段階がありました  これには二つの課題がありました 大きなサイズの DNA分子を作るには 化学的な問題を 解決すると共に 生物学的な問題も 解決する必要がありました つまり この新たな化学物質を 作り出せたとして それをレシピエントの細胞内で どのように起動し 活性化するかということです そこで 二つのチームが 平行して作業を行いました 一つは化学チーム もう一つのチームは 染色体全体を 新しい細胞に 移植するための 研究をしていました 研究を始めた当初は 合成が最大の課題になると考え 最小のゲノムを 選択することにしました

お気づきのように 我々は最小のゲノムではなく ずっと大きなゲノムを 対象に変えました その理由をいくつか ご紹介することは出来ますが 基本的に 小さな細胞では 結果が判明するまでに 1~2ヶ月の単位で 時間がかかる一方 大きな細胞の場合は 分裂が早く 二日ほどで結果が 得られるからです 1サイクルに 6週間かかれば 1年間にできる実験数は たかが知れています さらに 我々の行った実験の 99パーセント 恐らく99パーセント以上が 失敗なのです これは所謂デバッグ作業です つまり当初から 問題解決型の シナリオであったのです なぜなら 成功への道筋は 見えなかったからです

最も重要な論文発表は 2007年に行ったものです キャロル=ラルティグのチームが 染色体を 一つの細菌から 別の細菌に移植することに 成功したのです 振り返って考えると これは我々が発表した成果の中で 最も重要なものだったと 思います 生命がいかにダイナミックなものかを 示していたからです そして これが上手くゆけば 本当にチャンスがあるのだと 考えていました 染色体を合成できれば あとは同じことをすれば 良かったのです あと数年で達成できるのか それとも さらに年月を要するのかは 分かっていませんでした

2008年に マイコプラズマ=ジェニタリウムのゲノム 50万文字を上回る 遺伝子コードを 完全に合成できたと 発表しました しかし 染色体を起動することには 成功していませんでした 理由として 一点目は成長の遅さ もう一点は 細胞がこのような事態を防ぐための 様々な防衛システムを 持っているためだと 考えました 我々が移植対象としていた 細胞の表面には ヌクレアーゼというDNA分解酵素が あることが分かったのです 我々が与えた合成DNAを 好んで消化してしまっており 移植の障害となっていたのです しかし当時は それが過去に作成された 定義された分子で 最大のものでした

どちらの面でも 進歩が見られました しかし一部の合成は イースト菌を使用し この物質をイースト菌に 入れることで 我々に変わって合成を 行ってくれるはずであり また それは達成されねば なりませんでした それは驚くべき 前進でしたが 問題もありました 細菌の染色体を イースト菌の中で育てていたからです 移植をおこなうためには 細菌の染色体を 真核性のイースト菌から レシピエントに 移植可能な形で 取り出す方法を見つける 必要があったのです

そこで我々のチームは 完全な細菌の染色体を イースト菌の中で成長させ クローンを作成する 新技術を開発しました そこでキャロルが 最初に移植に成功したのと同じ マイコイデスのゲノムを 人工染色体として イースト菌の中で 増やすことを試みました イースト菌から 染色体を取り出し 移植する方法を学ぶ上で 優れた試験台となると 考えたのです そして実験を行いましたが イースト菌から染色体を 取り出すことはできても それを移植し 細胞の中で 起動させることはできませんでした この小さな問題の解決に 2年費やしました

細菌の細胞に存在するDNAは メチル化されていることが 分かりました メチル化により 制限酵素による DNAの分解が起こりません つまり イースト菌から 染色体を取り出し メチル化することができれば 移植が可能になるということが 分かったのです レシピエントである マイコプラズマの細胞から 制限酵素の遺伝子を 取り除くことに成功し 研究はさらに進歩しました いったん これに成功して以降 酵母からとった裸のDNAを 移植することが可能となりました

昨秋 我々が 成果をサイエンス誌に公表した時 我々は自信過剰となり イースト菌から 取り出した染色体を あと数週間で 細胞内で起動させることが 実現可能であると 考えていました 移植にあたって必要な 生物学的技術が 解決しており 1年半前に マイコプラズマ=ジェニタリウムと その成長の遅さに関する問題を 経験していたので さらに大きな マイコイデスの染色体を 合成することにしました ダンのチームが この百万以上の 塩基対からなる染色体の 合成に挑みました しかしそれは後に それほど単純ではないことが分かったのです そして3ヶ月分 後戻り することになりました 合成した配列において 百万の塩基対のうち 1塩基対に間違いがあることが 分かったのです

そこでダンのチームは 合成断片が 野生型DNAの存在下で 増えることができるかどうか テストできる 新たなデバッグ用ソフトウエアを 開発しました 合成した10万の塩基対 11セット中10セットは 完全に正確で 生命を形成できる 配列であると 分かりました 残りの1断片に 焦点を絞り その配列を調べたところ 不可欠な遺伝子の たった一つの塩基対が 欠落していることが 分かりました このように 正確さが 不可欠なのです ゲノムには たった一つのエラーも 許されない部分がある一方 我々がウォーターマークとして 長い配列のDNAを 組み込んだように どんなエラーがあったとしても 許容される部分が 存在するのです エラーを発見して 修正するのに 3ヶ月かかりました そしてある朝の6時に ダンから 初めて青色のコロニーが 見つかったと メッセージを受け取ったのです

大変長い道のりでした 15年を費やしました この分野の研究において 守るべき基本原則の一つは 人工合成したDNAと 天然のDNAを 明確に見分けることが できるようにすることだと 考えていました 科学の新しい分野に取り組む時 早い段階では あらゆる落とし穴について 考慮する必要があります あるいは 達成していないことを 達成できたと思わせるようなものについて 注意を払うべきです 最悪の場合 他人にもそれを 信じさせてしまうことになります 最も考慮すべき問題は 自然に存在する染色体の たった一つの分子の 混入によって 単なる混入に 過ぎないというのに 細胞を合成することができたと 誤信してしまうことだと 考えていました

そこで早い段階から DNAに目印を付けて そのDNAが 合成のものであることが 絶対的に明確になる ようにしました 2008年に最初の染色体を 作った時は 50万塩基対の染色体に 染色体作成者の名前を 遺伝子コードとして 組み込みました しかし それはアミノ酸配列の 一文字表記を 利用したものであり アルファベットの特定の文字が 除外されたものでした このようにして コードの中にコードを その中に さらに別のコードを 埋め込みました DNAを解釈し メッセージを書き込むための 新しいコードです 長い間 遺伝子コードに メッセージを書き込む仕事は 数学者が行ってきました 数学者は生物学者ではありません 数学者が作成した 長いメッセージは 未知の機能を持った 新しいタンパク質の 合成につながる 可能性が大です

そこで マイク=モンタギューの チームが開発したコードでは 度々 終始コドンを加えています 異なった体系の アルファベッドですが これによって すべての英文字と 句読点 数字を 使用できるようになりました 千塩基対以上の 遺伝子コードの中に 主な目印が4つあります 一つ目は遺伝子コードの 残りの部分を 解読するためのコードを 含んだものです 目印の中の残りの情報は 確か46人の 論文著者と このプロジェクトを成功に導いた 主立った貢献者の名前です 名前だけではなく Webサイトのアドレスも 記してあります もし誰かが コードの中の コードの中の コードを解読したとしたら このアドレスに メールを送ることができます つまり 他の種とは明確に 区別できるということです 46名の名前を持ち ウェブのアドレスが 記されているのですから 引用句も3つ記してあります なぜなら 最初のゲノムの時には 深遠なことを言わずに 作品にサインをしただけだと 批判されたからです

残りのコードについて お教えしませんが 代わりに3つの引用句を ご紹介します 一つ目は “To live, to err, to fall, to triumph, and to recreate life out of life.” ジェイムズ・ジョイスの言葉です 二つ目は “See things, not as they are, but as they might be.” ロバート・オッペンハイマーの著書 「アメリカのプロメテウス」からの引用です 最後はリチャード=ファイマンの言葉で “What I cannot build, I cannot understand.” 今回の成果は科学における 技術的進歩であるとともに 哲学的な進歩でもある という観点から 技術的側面に加えて 哲学的側面にも 対応しようと 試みたというわけです

質疑に入る前に 一言付け加えたいと思います 我々は膨大な研究を 行ってきました これに関して 倫理的な検討を求め 技術的な面と同様に その面においても 限界を広げようと試みました 科学界および政界においても 広く議論がなされました 連邦政府でも最高レベルでの 検討がなされました 今回の発表についても 2003年の発表と同様 エネルギー省から 資金を得ていましたので 極秘にしておくか 公開するかの決定について ホワイトハウスのレベルでの 検討が行われたのです そして公開という正しい形で 実を結んだのです ホワイトハウスに 情報を提供し 連邦議員にも 情報を提供しました 科学的な進歩を 続けるとともに 政治的な問題についても 解決しようと 努めてきたのです

それでは ここで 皆様からの質問を 受けたいと思います では 後ろの方

(記者) 今回の発表が どのくらい革命的であるか 素人にも分かるように 説明していただけるでしょうか

(ベンター) 重要性についての質問ですね 重要性について私が説明すべき 立場にあるかどうかは分かりません 我々にとっては 重要なことです 我々の生命に対する とらえ方が 哲学的に極めて 大きく変わるでしょう 基本的なレベルで 生命を理解すべく 15年前に研究を 開始しました 15年間かけて 到達した現在の段階は まだ ほんの手始めでしか ないと思います しかし この成果は今後 非常に有効なツールとなると 確信しています すでに このツールを使った 研究をいくつか 開始しています

我々の研究機関において 現在 国立衛生研究所から 資金提供を受け ノバルティス社と共同で これらの合成DNAの ツールを使用した プロジェクトを行っています おそらく来年には インフルエンザの ワクチンを提供 できると思います 以前であれば数週間から 数ヶ月を要していたことを ダンのチームは 24時間以内で 完了できるように なったのです H1N1ワクチンができるまで どのくらい必要だったかと考えると 大幅に必要な時間を 短縮できると 考えられるのです ワクチンの分野では シンセティック=ジェノミクス社と共同で 会社を設立しようと してるところです その理由は このツールによって 今までは対応ができないと 思われていた病気のワクチン 進化が非常に早い ライノウイルスなどのワクチンを 開発できると 考えているためです 普通の風邪を防ぐ方法が 見つかったら素晴らしいでしょう HIVだと もっと素晴らしいはずです この病気では ウイルスが 急速に進化するために 現在の方法ではワクチンが ウイルスの進化による変化に 追いつけないのです

また シンセティック=ジェノミクス社では 重要な環境問題についても 取り組んでいます メキシコ湾での石油流出は 我々への警告です CO2は目に見えず 計測には科学的手法が 必要です そして CO2の排出量が 増えすぎている状況を 目の当たりにしています しかし現在 CO2の 前段階である 原油が海上や 湾岸地域の海岸を 汚染しているのです 石油の代替となるものが 必要です エクソン=モービル社と共同で 大気中や 濃縮された物質から 効果的に二酸化炭素を吸収し 新しい炭化水素を作る 新種の藻を 開発しようとしています その炭化水素を製油所で つまり CO2から 普通のガソリンや ディーゼル燃料を作るのです

これらは我々が 現在行っている 研究アプローチの 数例に過ぎません

(拍手)