2,725,757 views • 17:09

これからの18分間で 皆様を旅にお連れします 私たちがこれまで何年も続けてきた旅です 約50年前 人類がこの惑星から最初の一歩を踏み出した時 この旅は始まりました この50年の間に 文字通り 我々は月に足を下ろしただけではなく すべての惑星に無人探査機を送り込みました "8つ"全部にです 小惑星に着陸し 彗星にも遭遇しました そして現在 冥王星へ探査機が向かっています 冥王星は 惑星であるとされていました こういった無人探査はすべて 人類の壮大な旅の一部なのです この旅によって 宇宙について感じ取り 我々の起源や 地球と そこに生きる我々が存在するようになった訳を 理解するのです

これから我々が訪れ 探索を行おうとする この太陽系の あらゆる場所が これらの疑問に対して答えてくれます 土星です 土星には1980年代初頭に 到達したことがありますが 今回は さらに詳細に渡った土星探査が可能になりました カッシーニ探査機は7年間 惑星間宇宙を旅して 2004年の夏 土星の軌道に乗ることができたからです それは無人探査機が到達した最遠の地点でした それは 人類が作り上げた 太陽を回る最前線の基地となったのです

土星系は 豊かな星系です 土星の神秘と科学的洞察 その荘厳さは比較できるものではありません この星系を調査することで 宇宙に対する理解を深めることができます 土星の輪だけでも 我々が渦巻銀河と呼ぶ 円盤状の星とガスの集まりについてたくさん学ぶことができます アンドロメダ星雲の美しい写真です アンドロメダは 天の川銀河の最も近くにある最大の渦巻銀河です 次は 子持ち銀河の美しい写真です ハッブル望遠鏡によって撮影されました

つまり土星への再訪は メタファーとしても 人類の壮大な旅の一部を成しているのです 我々を取り巻く全てのものが どのように結びつき その中で人類がいかに存在するのかを理解する壮大な旅です カッシーニ探査機で得たことをすべてお話しすることができないのを申し訳なく思っています 二年半の間に撮影した美しい写真を すべてを紹介するには時間が足りず残念です そこで もっとも興味深い話を二つしたいと思います この大探査で行われた発見についてです 発見は土星を回る周回軌道上で 過去二年半の間に行われました

土星は個性的な衛星を数多く従えています そのサイズは直径数キロから米国を横断するほどの大きさまで様々です 撮影した美しい土星の写真のほとんどには 衛星も一緒に写っています これはディオネを従えた土星です 土星の輪の先端部分が見えます いかに薄いものかお分かりいただけます エンケラドスが写っています 47の衛星のうち二つが際だった存在です

これはタイタンとエンケラドスです タイタンは土星最大の衛星であり カッシーニが到達するまでは 未探査の領域内で最大の存在として 太陽系の中に残されていました この星は その姿を見た人々を長い間 魅了してきました 非常に厚い大気で覆われており その地表での環境は 地球に類似していると信じられていました 少なくとも かつては 太陽系の他の星よりも地球に似ていると考えられていたのです 大気の大部分は窒素分子で構成されており この部屋で皆さんが呼吸しているものと同じものです 相違点は その大気の中に 単純な有機物であるメタンやプロパン エタンを含んでいるということです そして これらの分子がタイタン大気圏の上層で 分解され その結果生成された物質が結合して 煙霧粒子となっています 煙霧はタイタンのあらゆる場所に存在し 星を完全に覆い尽くしています そのため可視光線の領域においては 我々の目で地表を観察することはできません

しかし 煙霧の粒子については既に カッシーニ探査機の到達以前に 予測されていました 何十億年もかけて 粒子がゆっくりと落下し 有機物でできた厚い泥で 覆ってしまったのです いうなれば タイタンのタール あるいは石油 といったものが存在しているのです これは我々の予想通りでした 特にメタンやエタンの分子は タイタンの地表温度では液体となります タイタンのメタンは 地球の水に相当する存在であることが分かりました 大気中で凝縮可能な状態で存在しており その状況を考慮すると 非常に奇妙な世界が存在している可能性にたどりつきます メタンの雲です そしてこの雲の上空何百キロにわたって 粒子が存在し 太陽光線が地表に届くのを妨げています 地表の気温は 零下210℃程度

これほどの低温下でも タイタンの地表には雨が降る可能性があります 地球での雨と同じく タイタンでもこの雨が谷や川を形成し 滝もできます 峡谷を形成し 大規模な窪地やクレータに貯まることもあります 山頂や丘陵などの高地から 泥を 低地帯に押し流します ここで少し タイタンの地表を想像してください タイタンの正午は地球の夕暮れよりも暗いのです 寒く不気味で 霧でぼんやりして 雨が降っているかもしれません 塗料用シンナーで満たされたミシガン湖のほとりに立っているようです

カッシーニ到着以前には タイタンの地表をこのように想像していました 今回 タイタンについて発見したことをお話しします 少し異なった状況を示していますが たいへん魅力的な状況であることには変わりありません それはまるで カッシーニから見ると ジュール ベルヌの冒険物語が現実になったかのようです 厚く濃密な大気の存在は先ほど述べた通りです 後方にある太陽に照らし出されたタイタンの写真です リングが美しい背景になっています そして 別の衛星が見えます どの衛星かさえ分かりません 非常に厚い大気が存在しています カッシーニには ツールが装備されていて この大気を通してでも地表まで見渡すことができます このカメラもそういったツールの一つです このような写真を撮影しました 明るい部分と暗い部分がありますが 可能な範囲を撮影しました 神秘に包まれており 何が見えているのか判断することができませんでした この地域をよく見てみると 何かが見えてきます 波状の水路のようですが よくは分かりません 丸い物がものが見えます 後に これがクレータだと判明しました しかしタイタンの表面には あまりクレータは存在しません 地表がまだ若いことを意味します 地殻変動のような痕跡があります 引き離されたように見えます 星の上に直線上のものが存在する場合 それは 断層のような 裂け目の存在を意味します 構造的に大きく変形しています

この写真を理解することができたのは 周回軌道に入ってから6ヶ月を経過してからでした そして そこで行われたイベントは カッシーニによるタイタン探査のハイライトであると考えられました そのイベントとは ホイヘンス観測機(プローブ)の投下です このヨーロッパ製の観測機はカッシーニに積み込まれ 太陽系を7年間かけて運ばれ タイタンの大気中へ投下されました 観測機は二時間半をかけて降下し 地表に降り立ちました いかに素晴らしいイベントであったか ご理解いただきたいと思います 人類が作成した装置が 人類史上初めて 太陽系外縁部に着陸したのです 非常に大きな意味をもつイベントであり 米国やヨーロッパのあらゆる都市で 紙吹雪のパレードを行って 成功を祝福されるべきものでした 残念ながら そうはなりませんでした (笑い)

これにはもう一つ重要な意味があります これは国際的なミッションであり ヨーロッパ 特にドイツでも成功が祝されましたが 祝賀スピーチは 英国訛りや 米国訛りや ドイツ語 フランス語 イタリア語 オランダ語訛りで行われました これは正に 「国際連合」という言葉 本来の意味を表しています 壮大な善き試みのために国々が協力する 真の連合です 今回のケースでは その試みとは壮大な事業 つまり惑星を探査し 惑星系に関する理解を深めるための壮大な事業でありました 今まで人類の誰もが達成しえなかった事業なのです そして 今 人類はそれを達成することができました こうしてお話ししているだけで その興奮がよみがえってきます 本当に心を震わせる出来事でした 私はこの出来事を一生忘れることはありません 皆様も同じだと思います (拍手)

とにかく 観測機は降下中に大気の組成を調査し パノラマ画像の撮影も行いました 最初の写真を見たときの事は 言葉にできません 観測機から見たタイタンの地表の写真がこれです 衝撃的な写真でした なぜなら 我々が 望んでいた写真が撮れたからです はっきりとしたパターン 地質学的なパターンが見られます この樹木状の排水路のようなものは 液体が流れた時のみ形成される図形です こういった水路をたどると 一か所に集まっています この水路に合流して この地域に流れ出ます これは海岸線なのです 流体の海岸線なのかはわかりませんが いずれにせよ海岸線なのです

これは16km上空で撮影されました これは8km上空で 再び海岸線です 16km 8km つまり航空機が飛ぶ高度と同じくらいです 米国を飛行機で横断するとき このくらいの高度を飛行します つまり タイタン航空の機内から タイタンの地表を飛ぶ際に撮影した写真ということになります (笑い)

そして最終的に 観測機は地表に到達しました それでは お目にかけましょう 太陽系外縁部の衛星表面で初めて撮影された写真です ここが地平線ですね? 水が凍ってできた小石がありますね (拍手) 観測機が着陸したのは この平らな暗い地域のどこかです 水没はしませんでした つまり着陸点は液体ではなかったということです 観測機が降り立ったのは タイタンの干潟に相当する地域でした 液体のメタンで覆われた 柔らかな地面です ここにある物質はおそらく タイタンの高地から あの水路を通って 押し流されたのでしょう そして 何十億年もかけて 低地を満たしたのです そこへ ホイヘンス観測機は着地しました

しかし 我々が撮影した写真にも ホイヘンスが撮影した写真にも 液体の存在が確認できる兆候は存在していないのです どこに消えてしまったのでしょう?砂丘が発見され 我々の疑問はさらに深まりました タイタンの赤道地域で撮影した動画です 砂丘が写っています 高さは100mもあり 数キロずつ離れています こういった情景がずっと続いています 数百から1200マイル(約2000キロ)にわたり砂丘が存在しています タイタンのサハラ砂漠といえるでしょう 非常に乾燥した場所であることは明らかです でなければ砂丘は形成されません

ですから 液体の存在が確認できないことが問題なのです しかし 極地域に湖を発見することができました タイタンの南極地域にある湖です オンタリオ湖と同等の大きさです 一週間半前のことになりますが タイタンの北極を探査し カスピ海と同規模の地物を発見したのです つまり 液体は 原因は分かっていませんが また この季節特有の現象なのかもしれませんが タイタンの極地域に存在しているのです タイタンが注目に値することに 同意していただけるでしょう 神秘的で風変わりで なぜか地球にも似ています タイタンは地球のような地学的構造をもっており 地学的多様性にも富んでいるのです 太陽系において これほど魅力的で 複雑で多様性に富んだ世界は タイタンと地球にしか見ることができません

それでは エンケラドスに移りましょう 小さな衛星で タイタンの十分の一ほどの大きさです 英国と比較できる程度です 英国に激突する訳じゃありません (笑い) エンケラドスは真っ白で 非常に明るい星です 表面にははっきりしたひび割れがあります 地質学的に非常に活発な星なのです しかしエンケラドスで 主脈が発見されたのは 南極でした ここが南極になります 南極で ひび割れを発見したのです それぞれ色が異なっているのは 組成が異なるためです 表面はむき出しではなく 有機物に覆われています さらには 南極の全域が気温の高い地域となっており この星で最も気温の高い場所であるのです 地球の南極が熱帯地方より暑いくらいに 不思議なことです

さらに撮影を行った結果 ひび割れから 微細な氷の粒子が噴出していることを発見しました 何百マイルもの上空まで届いています 淡い部分も分かるように 写真の色を変えてみたところ この噴出が水煙であることが分かりました 写真によっては 地表から上空に向かって何千マイルも 噴き上がっています 私たちのチームは写真をチェックし カッシーニからもたらされた別の情報も検討しました そして 結論を得ることができました この噴出物は エンケラドスの地表下に存在する 水が液体として溜まっている場所から来ているのかもしれません

つまり 液体としての水 有機物 十分な熱が存在している可能性があるのです 言い換えれば 我々は偶然にも 現代の惑星探査における聖杯を見つけたのかもしれません または この環境は有機体に適している可能性もあります 生命を発見するということが それが太陽系のどこであれ エンケラドス あるいは他の場所であっても 文化的にも 科学的にも非常に大きな意味をもつことは言うまでもありません 創世が起こったということを示すことができれば 一度ではなく 二度も 太陽系の別の場所で起こったと示すことができれば 創世は何度でも起こりうるものだと考えられます なぜなら 宇宙は広大で137億年の歴史があるのですから

今のところ 命に満ちた星として知られているのは地球しかありません とても貴重で 唯一の存在です そして 唯一の我が家でもあります 1960年代を過ごした方がおられれば 過ごしておられなくても構いませんが この有名な写真が記憶に残っているのではないでしょうか 1968年にアポロ8号の飛行士が撮影したものです 宇宙から地球を見るのは初めてのことでした 宇宙の中の惑星に対する思いに衝撃をもたらしました この惑星を守らなければならないという責任感も強くなりました

そして カッシーニでも 同じような初めての 人類が今までに見ることがなかった写真が撮影されました 土星の反対側からみた皆既日食の様子です 信じられないほど美しく その輪が太陽の光に照らされ 屈折した太陽の姿が映っています そして この輪は エンケラドスからの放出物によって作られているのです これでは十分でないと言うかのように この美しいイメージに 我らの惑星が見られます 土星の輪の腕に抱かれているのです

遠く離れた場所から私たち自身を 眺めるのはジーンときます 小さな青い海の惑星の姿をとらえるということは 別世界の空から眺めているのです そして それによって得ることができる我々自体に対する見方は 半世紀前に始まった探査の旅において 得ることのできる 最も素晴らしいものかもしれません ありがとうございました (拍手)