アンソニー・アタラ
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これはハーバード大学医学部の 図書館に飾ってある絵画です 初めての臓器移植の様子が 描かれています 手前ではジョー・マレイが 患者の移植準備をし そして 向こうの部屋では ハーバードの泌尿器科科長である ハートウェル・ハリソンが腎臓を 摘出している様子が 描かれています 実は腎臓が人間に移植された 最初の臓器なのです

それは1954年のことでした 55年も前の話です 我々は何十年も経った今も 同じ難題に挑戦しています もちろん たくさんの医学的進歩があり たくさんの命が救われました しかし 私たちは深刻な 臓器不足に直面しています 臓器移植の順番を待つ患者は ここ10年で2倍に増えています その一方で臓器移植の 手術数はほとんど増えていません これは高齢化が関っているためで 寿命が延びているからです 医学の進歩によって 私たちは長生きできているのです しかし 私たちが年を重ねるとともに 臓器は機能を失いがちです

これは難題で 臓器だけではなく 組織も衰えます 膵臓の移植や パーキンソン病緩和のための 神経移植に挑戦しています これらは重大な問題です 驚くべき統計データがあります 体の一部を再生させたり 移植をすれば助かる患者が 30秒に1人の割合で 亡くなっているのです では私たちに 何ができるのでしょうか? 今晩は幹細胞について お話ししています それこそ私たちが 取るべき手段なのです しかし 幹細胞治療を 臨床応用するには 長い道のりがあります

自分の体が再生できたら 素晴らしいと思いませんか? もし 私たち自身の 体の力を活用して 回復させることが実際にできたら 素晴らしいと思いませんか? これは日常からかけ離れた 概念なのではなく 実は地球上で日々 起こっていることなのです これはサンショウウオの写真です サンショウウオは驚くべき 再生能力を持っています ビデオでご覧になっているのは サンショウウオの けがをした足です 実際に サンショウウオの足が 数日のうちに再生する様子を 時間を追って撮影した写真です 瘢痕ができているのが見えますね 瘢痕の部分から 新たな足が伸びてきます

サンショウウオには このような事が出来るのです なぜ人間には再生能力がないのかと 思うでしょうが 我々も再生する力を持っています 皆さんの体にはたくさん臓器があり それぞれの臓器には 傷ついたときに働きだす 細胞群が備わっており 再生は日常的に起きています 皆さんが年をとるにつれて 皆さんの骨は10年ごとに 再生されています 皆さんの皮膚も2週間ごとに 再生されています 皆さんの体は常に 再生され続けているのです 再生への挑戦が始まるのは 体が傷ついたときです 怪我をしたり 病気になると まず体は傷や病気が ほかの部分に広がらないように 封じ込めようとします 体の他の部分へ感染が 広がらないよう 封じ込めようとします それは臓器であれ皮膚であれ 最初の反応は 外部と遮断するために 瘢痕組織がつくられます ではこの傷を封じ込めようとする力を

利用する方法はあるのでしょうか? 現に スマートな生体材料を用いて 実用化されているのがその一つです どのように役立つのか 見てみましょう 左の写真は損傷した尿道です これは膀胱から 体の外につながる管です このように傷ついています まず そのスマートな生体材料を 橋(ブリッジ)のように 利用できることを発見しました ブリッジをつくり 外部の環境から 隔離することができれば 細胞が再生して ブリッジを渡り 尿道ができるのです

これがその様子です これが 私たちが実際に この患者の治療に用いた スマートな生体材料です 左に見えるのは 損傷した尿道です 真ん中の生体材料を用い そして 6ヶ月後・・・ 右に見えるのが 再生された尿道です 短い距離に限ってだけですが 私たちの体は再生できるのです 1cmまでの距離しか 再生できないと言われています スマート生体材料を使っても 1cmまでしか 橋渡しできないのです

私たちは短い距離に限って 再生することができるのです より大きな臓器が損傷した場合 どうすれば良いのでしょうか 組織の損傷が 1cmよりずっと大きい場合 どうすれば良いのでしょうか? このような時には細胞の出番です ここで取る戦略は 次のようなものです 患者が臓器に問題を抱えて 来院します その患者の臓器から ほんの小さな組織を採取します 切手の半分以下の大きさです そして組織を細かくほぐし そこにある細胞の 基本的な構成に目を向け 細胞を体外で 大量に培養します ここで 臓器の骨組みとなる 物質を用います

肉眼では洋服の 切れ端のように見えますが 実はこの物質は きわめて複雑で 体内で分解されるように できています 数カ月後には 分解されてしまいます つまり 細胞を適切な場所に 配置するのに使います 体内に細胞を運んで 新しい組織を 再生できるようにします そして組織が再生されると 骨組みは消えてしまいます

筋肉を使った方法をお見せします これは筋組織と その構造を使って 新しい筋肉を作る方法を示しています 細胞を取り出し増やした後に 細胞を骨組みに乗せ その骨組みを患者の体に戻します しかし その骨組みを 患者の体に戻す前に 骨組みに運動をさせるのです 移植した筋組織が患者の体内で 本来の動きができるように 運動させておくのです 運動の様子がこれです 筋肉バイオリアクターが 筋肉を前後に運動させている様子を ご覧いただいています

これは平らな組織— 筋肉です それでは他の組織では どうでしょうか? これは再生医学によって つくられた血管です 筋肉をつくる工程と似ていますが もう少し複雑です まず骨組みを準備します 骨組みはまるで 一枚の紙のようです それを筒状にして 同じようなやり方で 血管をつくります 血管は2種類の細胞で 構成されています 筋肉の細胞を使って レイヤーケーキをつくるように 筒の外側に筋細胞を

貼りつけていきます 内側には血管内皮細胞を配置します 細胞が植え付けられた骨組みを オーブンのような装置に入れます 人間の体内環境と同じで 摂氏37度 酸素95%にしてあります 先ほどの映像のように 血管を運動させます

右に見えるのは人工頸動脈です 頸動脈は首から脳につながる動脈です このレントゲン写真では 作った血管が開通し 機能している様子が見えます 血管や尿道などは より複雑な組織です なぜなら2種の異なる細胞を 導入することになるからです これらは 導管としての役割を 果たしています 液体や空気が 安定して流れるように なっています 管状の組織は 内腔を持つ臓器ほど 複雑ではありません 内腔を持つ臓器は 状況に反応して機能するからです

膀胱がそのような臓器のひとつです やり方は同様で 膀胱から切手の半分以下の 大きさを切り取り その組織をほぐし 筋肉と膀胱に特化した 2つの細胞成分に分けます 体外で細胞を大量に増やします 臓器から取り出した細胞は 約4週間で培養できます そして骨組みを 膀胱のような形に整えます 内面を膀胱の内側の細胞で覆います そして外側を筋肉の細胞で 覆います そしてオーブンのような 装置へ入れます 組織の一部を採取してから 6~8週間後に 人工臓器を患者の体に 戻す事ができます

これが実際の骨組みです この物質は細胞で 覆ってあります 臨床実験を 最初に行った時は 各患者に合わせた 骨組みを作りました 手術の6~8週間前に 患者に来てもらい レントゲン撮影の後 患者の骨盤腔の大きさに合った 骨組みを特別につくりました そして臨床試験の第2期には あらかじめ 小 中 大 特大サイズで 骨組みをつくりました (笑) 本当です 皆さんは特大がいいんでしょう? (笑)

膀胱は明らかに他の臓器よりも 少々複雑なのです さらに複雑な内腔を持つ 臓器もあります これは私たちが再生医学でつくった 人工心臓弁です 心臓弁の作り方も 同様の方法です 骨組みに細胞を蒔きます ご覧のとおり 弁が開いたり 閉じたりしています 同じ方法を用いて移植の前に これらの臓器に 運動をさせます

そして最も複雑なのは 実質臓器です 実質臓器がより複雑なのは 立方センチあたりに必要な細胞が 格段に多いからです 例えば 耳です 軟骨細胞を蒔いたところです その後は オーブンのような装置に 入れます そして数週間後 軟骨の骨組みを取り出せます

こちらは 指を つくっているところです 一層 一層 積み重ねられています 最初に骨 そして隙間を軟骨でふさぎ 筋肉を上にのせて 隙間なく組織の層を 積み重ねます 繰り返しますが かなり複雑な臓器です しかし 他とは比べ物にならない 複雑な実質臓器は 血管が多い臓器です 血管が多いのは 心臓 肝臓 腎臓などの 臓器です 実質臓器をつくる方法は いくつかありますが これはその一例です

私たちはプリンターを 使っていますが インクの代わりに 細胞を使います これは普通のプリンターです これは二心室心臓のモデルを 一層ずつプリントしているところです 心臓が出来ていきます 約40分で印刷が終了し 4時間から6時間後には 筋収縮をし始めます (拍手) 私達の研究所にいた タオ・ジュが開発した技術です この技術は 実験段階で まだ患者に使用できません

また 脱細胞化した臓器も 使用しました ドナー提供された臓器を用いて 刺激の少ない界面活性剤で すべての細胞成分を これらの臓器から 取り除きます 左図と 上図は肝臓です ドナー提供された肝臓を使い 刺激の少ない界面活性剤で すべての細胞を 肝臓から取り除くのです

2週間後にはこの臓器を 持ち上げる事ができます 見た目も感触も 本物の肝臓のようですが 細胞はありません 肝臓を取り除くと コラーゲン製の 骨組みが残ります コラーゲンは 体内にある物質なので 拒絶反応を起こしません どの患者にも使用できます そしてこの血管組織を使って 血管の分布が維持できるのを 示せます

これは蛍光血管造影です ご覧になっているのは 脱細胞化した肝臓に 造影剤を注入しているところです 血管樹が損なわれて いないのが見えます そこで 木のように 枝分かれした血管に 患者自身の細胞を灌流します 肝臓の外側に 患者自身の肝臓の細胞を 灌流します すると機能する肝臓を作れます ご覧になっているのが それです まだ実験段階ですが 肝臓機能の再現を 成功させています

腎臓に話を移します 講演の最初のスライドで 初の腎臓移植の絵画を お見せしましたが 臓器移植が必要な患者の90%は 腎臓移植が必要な方たちです 私たちが試みている もう一つの方法は ウェハーをつくり それをアコーディオンのように 積み重ねる方法です 腎臓の細胞でできた ウェハーを重ねます これは私たちがつくった 小さな腎臓です 実際に尿を作ります 小さな構造を どうやって大きくするかという難題に 今 私達の研究所で 取り組んでいます 皆さんにお話ししたかった 事のひとつは 再生医療が取ろうとしている 戦略です

もし可能ならば 既製のスマート生体材料を使って 患者の臓器を 再生させたいと思っています 再生できる間隙は 限られていますが 目標は その距離を 広げていくことです スマート生体材料の 使用がだめなら 自分の細胞を使うことです

拒絶反応を起こさないからです 皆さんから細胞を取り出し 構造を作り それを皆さんに戻す そうすれば拒絶反応は起きません もし可能なら 作ろうとする 臓器の細胞が好ましいのです 気管に問題がある場合は その人の気管の細胞を 使いたいと思います 膵臓に問題がある場合は 膵臓の細胞を取り出すわけです

理由は 採取する細胞は 自らが何の細胞なのか わかっているからです 気管の細胞は自身が気管の 細胞だとわかっているので どんな細胞になるのか 教える必要がありません だから 臓器特異的な 細胞がいいのです 今では 大半の臓器から 細胞を得ることができますが 例外は 心臓 肝臓 神経 膵臓などで それについては依然として 幹細胞が必要です もし患者自身の幹細胞を 使えない場合は ドナーの幹細胞を使います 拒絶反応を起こさず 腫瘍を形成しない細胞を選びます

そのような特性を持つものに 私たちが2年前に報告した 幹細胞があります その幹細胞は 羊水や胎盤から 採取できるもので 私たちはその研究に 取り組んでいます いくつかの難題について お話したいと思います 紹介したものは すべて順調に見えますが 実際には違います これらの技術は それほど簡単ではありません 今日 紹介した内容のいくつかは 我々の研究所で20年の間に 700人以上の研究者が携わったものです

とても難しい技術です 正しい実験方法を見出せば 再現できますが 道のりは長いのです よくこの漫画を お見せしてるんですが 暴走した馬車の止め方です 上の絵では 馬車の御者が 馬の背をたどって 先頭の馬まで進んでいき 最後に暴走した馬車を止めます 科学者のやり方です 下の方は外科医のやり方です (笑) 外科医の私には笑えません (笑)

でも 上の方法が 正しい取り組み方なのです それが意味するのは このような技術を 病院で患者に使い始める時は どんな時でも絶対に 研究室でやれる事の すべてをやってからにするよう 徹底しているということです また これらの技術を患者に施す前に 自らにとても難しい問いかけを するように徹底しています 自分の大切な人に この臓器移植を しても差し支えないかを問い その答えがイエスなら事を進めます なぜなら私たちの 第一の目標は 危害を与えないことだからです

では とても短いのですが 培養した臓器の移植を 受けた患者の ビデオをお見せします このような組織の移植は 14年以上前に始めました ですからこのような 人工臓器を移植されて 10年以上元気に歩きまわっている 患者がいるというわけです これからお見せする 若い女性患者は 脊髄の先天異常である 二分脊髄症で苦しんでいました 彼女には排尿障害がありました CNNの番組のひとコマです 5秒間だけお時間頂きます サンジェイ・グプタが 携わっている番組です

幸せです 私は困ったことか何かが 起こるのではないかと いつも恐れていました でも 今は友達と 外へ繰り出し やりたい事ができるのです

結局のところ 再生医療がやろうとしているのは ひとつのことです それはとてもシンプルなこと 患者を良くする ということなんです ご清聴ありがとうございました (拍手)