アレグザンダー・ベッツ
1,000,804 views • 18:09

時に ヨーロッパ人である自分が 非常に情けなくなることがあります この1年で 100万人以上が助けを求めて ヨーロッパにたどり着きました 我々の反応は 正直言って お粗末なものでした

もう本当に 矛盾だらけなのです 2歳のアラン・クルディ君の 悲惨な死を皆が悼みましたが しかし それ以降も 200人以上の子供たちが 次々に 地中海で 溺れ死んでいます 国際協定にて 難民の受け入れに関する 責任分担を認めていながらも 小国レバノンの難民受け入れ数が ヨーロッパ全体での総数を 上回るという事実を黙認しています 我々は密入船の存在を 嘆かわしく思いながらも それをヨーロッパへの 唯一の亡命経路にしてしまっています 労働力が不足しているのに 人材ニーズに 経済的にも人口層的にも合致する人々を 受け入れから除外しています イスラム原理主義に反対して 自由主義を謳いながらも それでいて— 抑圧的な政策で 幼い亡命者を拘留し 子供を家族から引き離し 難民の所有物を押収しています

おかしいと思いませんか? なぜ こんなにも 人道危機に対して 非人道的な対応を 採るようになってしまったのでしょうか?

私は 人々が無関心だからだとは 思いません 少なくとも それが理由であるとは 信じたくはありません 政治家たちに ビジョンが 欠けているせいだと思っています 50年以上前に作られた 国際的難民政策を 変わりゆくグローバル化時代に 適応させるビジョンです そこで 基本に立ち返り 非常に根本的な問いを2つ 投げかけたいと思います 我々 皆が考えるべき問いです まず 現行の制度が なぜ機能していないのか? そして どうすればこれを直せるのか?

現代の難民制度は 第二次世界大戦直後に この人たちが作ったものです そもそもの目的は 国家が崩壊したり 最悪の場合 国民に刃を向けたとき 人々に行き先を与え 帰還まで 安全に尊厳を持って 生活できる場所を与えることです まさに今日シリアに見られるような 状況に備え 作られたものでした 147ヶ国の政府間で調印された 国際協定である— 1951年の『難民の地位に関する条約』や 国際機関である 国連難民高等弁務官事務所を通じて 自国領への難民の相互受け入れを 公約しました 紛争や迫害から逃れる人々の 受け入れです

しかし今日 この制度は 機能していません 理論上は 難民には 亡命を求める権利がありますが 現実では 我々の移民政策が 安全への道を塞いでいます 理論上は 難民には 避難先への同化を求める権利があり 故郷に戻れるものですが 現実では ほぼ永遠に 行き詰まった状態になってしまいます 理論上は 難民は 世界各国で責任分担するものですが 現実では 地理的な問題で 紛争地域に隣接する国々が 世界中の難民のうち 圧倒的多数を引き受けています 制度が機能していないのは ルールがおかしいからではなく 変わりゆく世界に合わせて ルールをきちんと適用していないからで そこを考え直すべきなのです

ここで 現行の難民制度が 実際どういう仕組みなのか 少しご説明しましょう しかし 制度側から見た トップダウンの視点ではなく 難民の視点から説明します まず シリア人の女性を想像してください アミラと呼びましょう その地域のたくさんの人々を 象徴するような女性です アミラは 世界の難民の 25%がそうであるように 女性で 子連れです 家に戻れない理由は 住んでいた街がこんな状態だからです ご覧の通り アミラの街 ホムスはかつて 美しく歴史ある街でしたが 今は瓦礫に埋もれ 帰れる状況ではありません しかし アミラには 第三国に再定住するという道もありません 宝くじのようなもので 世界中の難民のうち 1%にしか 叶わないことだからです

だから アミラとその家族は ほとんど無理な選択を 迫られます 基本的な選択肢は3つしかありません 1つ目は 家族を連れて 難民キャンプに入ること そこでは 援助は受けられても アミラと家族の将来は ほぼ ないも同然です 難民キャンプは 荒涼とした不毛の地— 多くは砂漠の中です ヨルダンのザータリ難民キャンプでは 夜間 シリアとの国境で 銃弾の音が聞こえます 経済活動には制約があり 教育の質も良くありません そして 世界中で キャンプに収容中の難民のうち 約80%は こんな状態が最低5年は続きます そこでの暮らしは惨めなものです 多分 それが理由で 実際にこの道を選ぶシリア人は たったの9%なのです

次に 都会を目指すという 選択肢もあります 近隣の国にある アンマンやベイルートなどです 75%のシリア難民が選んだ 選択肢がこれです しかし そこでもまた 大きな困難に直面します 難民は通常 こういった都市部での 労働の権利を持たず 援助もたいして受けられません この場合 アミラと家族には それまでの貯蓄を使い果たしたあと ほとんど何も残らず 都会での貧困生活が待っています

3つ目の選択肢— これを選ぶシリア人は増えています 家族のために 一握りの希望を求め 命を賭けて 大変危険な旅路につき 他国を目指すという 今日 ヨーロッパで 見られている現象です

このような まず無理な選択を 世界中が難民に突きつけ 選択肢を3つに限っています キャンプ収容、都会での貧困生活 そして危険な旅です 難民にとっては これこそが 国際的な難民体制そのものなのです でも これしかないと思うのは錯覚で 再考の余地があると思います これらの選択肢に限られている理由は 我々の頭の中で 難民が選べる道は これだけしかないと思っているからですが それは間違いです 政治家たちは 難民問題を 「ゼロサム」な問題— つまり 難民のために何かすれば 市民に負担がかかると考えています 我々は共通の前提として 難民は負担がかかるものとか 社会の重荷であると考えがちですが 逆に難民が社会貢献する 方法もあるのです

私が言いたいのは 難民の選択の幅を広げながらも 皆が利益を得る方法は あるということです 受け入れ国やコミュニティ 我々の社会 そして難民自身もです 今からお話しする4つの方法で 難民についての考え方自体を 根本から変えられると思います 4つ全てに共通する点が1つ グローバリゼーションや 流動性や市場が生み出す機会を 利用した方法であり 我々の難民問題への見方を 変えるという点です

1つ目のアイデアは 難民のための環境整備です ごく基本的な認識から始まります 難民は皆と同じ人間であり ただ異常な状況に置かれているだけだ と言うことです 私はオックスフォード大学の同僚と ウガンダで調査を始め 難民の経済活動を調べました ウガンダを選んだのは 世界を代表する 受け入れ国だからではありません 大変優れた方針を採っているからです 世界中の 他の受け入れ国とは異なり ウガンダは 難民に経済機会を与えました 難民に 労働の権利や 移動の自由を与えたのです これで驚異的な成果が出ています 難民と難民居住地域の両方にです 首都カンパラでは 難民の21%が事業を持ち 労働者を雇っており 雇われる側の40%が 受け入れ国の国民だったのです つまり 難民が雇用を作り出し 受け入れ国の国民を雇っていたのです 難民キャンプの中でさえ 活発な個人事業の 素晴らしい実例が見られました

例えば ナキヴァレという 難民居住区では コンゴ人の難民が デジタル音楽を売買する事業に携わり あるルワンダ人難民が 立ち上げた事業は 青少年向けに コンピューターゲームを 再利用したゲーム機やテレビを使って 提供するというものでした 厳しい環境にもかかわらず 革新的な取り組みが行われてます この写真は デムーケイというコンゴ人で 居住区に到着したときは ほぼ文無しでしたが 映像制作者を志していました 彼は 友人や同僚と コミュニティラジオ局を開設し ビデオカメラを借りて 今や映像制作をしています ドキュメンタリー映像を2本 私のチームの依頼で共同制作し わずかな元手で 事業を成功させています こういった事例を参考にして 難民に対する我々の対応を 決めるべきです 難民のことを 必然的に人道支援に 依存するものと見るのではなく 人間として繁栄する機会を 提供する必要があります

もちろん 衣類、布団 寝る場所、食料などは 緊急事態においては 全て重要なものですが その先を見据える必要があります 通信、電力、教育、労働の権利や 資本や銀行へのアクセスといった機会を 提供しなければなりません 世界経済の恩恵を受けることは 我々にとっては当たり前のことです 難民にも可能なことだし そうであるべきです

2つ目は 経済区域に関するアイデアです 残念ながら 世界の 難民受け入れ国の全てが ウガンダのような方針を 採るわけではありません ほとんどの国は難民を ウガンダのような方法で 経済の一部に迎え入れたりはしません しかし 採用可能な実用案は 存在するのです

去年の4月 ヨルダンに行きました 同僚の開発経済学者 ポール・コリアーと一緒でした 滞在中 ブレインストーミングをして 国際社会やヨルダン政府と話し合って ヨルダンの国内開発戦略に沿った方法で シリア人に仕事を与える方法を 考え出しました 経済区域に関するアイデアで 難民の雇用を 受け入れ国の ヨルダン国民の雇用と共に 行う可能性を探ったものです 83,000人の難民が住む ザータリ難民キャンプから たった15分の距離に 経済区域が存在します キング・フセイン・ビン・タラール 開発区域です ヨルダン政府は 100万ドル以上を投入し この区域を 電力供給網と 道路網に繋ぎましたが 欠けているものが2つ 労働力と対内投資です ここで 難民が働けるとしたら? キャンプに閉じ込められず 家族を養い 職業訓練を通じて 技術を習得してから シリアに戻れるとしたら? これはヨルダンに有益だと考えました 中所得国としての ヨルダンの開発戦略には 国内製造業の発展が 必要だからです 難民にとっても有益ですが それだけでなく 紛争後のシリア再建にも 貢献します いずれはシリアを建て直す 最良の人的資源となる— 難民の保護・養成が必要だという 認識に基づいています

政治誌『フォーリン・アフェアーズ』に この案を掲載したところ アブドラ国王の目に止まり 2週間前にロンドンで行われた シリア支援会議で 今年の夏 試験的に実施されるという 発表がありました

(拍手)

皆さんに提案したい 3つ目のアイデアは 国と難民との間で行う マッチングシステムです この写真のような嬉しい結果に 繋がるものです シリア難民がアンゲラ・メルケル首相と 自撮りしていますね 難民に希望や行きたい先を訊くことって 滅多にありませんよね でも 難民の声を聞きながらも 皆が得することは可能です 経済学者 アルビン・ロスが発展させた マッチング理論という概念は 当事者の選好順位によって 最終的な組み合わせを決めることです 同僚のウィル・ジョーンズと アレックス・タイテルボイムが この概念を難民に当てはめる方法を 探りました 難民に 行きたい受け入れ先を 希望順に挙げてもらい 同時に 受け入れ国にも 希望する難民のタイプに 職務スキルや言語などの条件で 優先順位をつけてもらって 両者を引き合わせるという方法です さて もちろん 受け入れ枠の条件には 多様性や脆弱性などの要素も 考慮するべきですが それも マッチング率を高める 方法として考えていいでしょう マッチングの概念が うまく使われているのが 例えば 学生に対する 大学の受け入れ枠や 腎臓ドナーと患者などです 出会い系サイトで使われている アルゴリズムにも入っています これを難民の選択肢拡大のために 取り入れてはどうでしょう

国内規模でも使えます 我々が直面する大きな課題の1つは 地元コミュニティに難民受け入れを 納得してもらうことですからね 現在 例えば 私の国イギリスでは しばしば 技術者を田舎に 農家を都市に送るという 馬鹿げたことをしています そこで 市場のマッチングを行えば 両者の希望を合致させ 受け入れ先の住民からも 難民からも ニーズや要望を聞くことができます

そして4つ目のアイデアが 人道的ビザです ヨーロッパで起きている 悲劇や混乱のほとんどは 完全に回避可能です ヨーロッパの難民規定の 根本的な矛盾が原因で起きています どういうことかというと ヨーロッパで亡命者となるためには 例の危険な旅路につき 事前準備なしに到着しなければなりません でも なぜそんな旅が必要なのでしょうか 格安航空会社や領事サービスが 充実している今の時代 こういった旅は全く不要なはずですが 昨年 これで3,000人以上が 亡くなりました ヨーロッパの国境や ヨーロッパ国内でです

単純な話 難民に ヨーロッパに普通に渡航して 亡命者となることが許されていれば 避けられることです これを実現する方法が 人道的ビザと呼ばれるもので 近隣国の大使館や領事館で ビザが受け取れます そして単純に 自分で旅費を出して フェリーや飛行機で ヨーロッパへ渡航できるのです 密輸業者を使って トルコから ギリシャの島々に渡るのに1,000ユーロ ボドルムからフランクフルト行きの 格安航空券は200ユーロです 難民にこのような選択肢を解放することには 大きな利点があります たくさんの命が失われずに済み 難民密輸業界自体 商売上がったりとなり ギリシャの島々のような ヨーロッパの 第一線から混乱が消えます こういう手段を妨げているのは 合理的な策などではなく 政策の方です

このアイデアは実際に 取り入れられています ブラジルが先駆けて このアプローチを採り 2,000人以上のシリア人が 人道的ビザを取得してブラジルに入国 そして到着と同時に 難民の地位を得たのです この制度を利用したシリア人全員が 難民の地位を獲得し 正式な難民認定を受けています

歴史上の前例もあります 1922年と1942年の間に ナンセン旅券を 国際的な身分証明書として使って 45万人のアッシリア人や トルコ人、チェチェン人が ヨーロッパ内を移動し ヨーロッパ国内の他の国で 難民申請を行いました ナンセン国際難民事務所は ノーベル平和賞を受賞しました この現実的な戦略が 世に認められたのです

今お話した4つのアイデア全てが 冒頭に出てきた仮の難民 アミラの選択肢を増やす方法です 難民の選択肢の幅を広げる方法です これなら 最初にお話した3つの 無理な選択肢に限る必要はなく それでいて他の人達も得をするのです

結論を言うと 我々には 新しいビジョンが切に必要です 難民の選択肢を広げながらも 重荷である必要がないことを 理解したビジョンです 難民が必然的に負担になるという 考え方は間違っています 人道的な義務ではありますが 難民は 技術や才能 そして 意欲のある人間です 機会さえ提供すれば 社会貢献する力を持っています

これからの時代 世界で 移住する人は後を絶たないでしょう ヨーロッパで起こっていることは この先 何年も続きます 難民は変わらず移動を続け 居場所を求めてさまよい続けます この状況に対処する 合理的で現実的な方法— 人道支援という古い理論や 慈善という考え方に 基づいた方法ではなく グローバリゼーションや市場 流動性などが生み出す機会を 利用する方法を探るべきです 皆さん全員 そして 政治家の皆さんに訴えたい 目を覚まし この課題を直視してください

ありがとうございました

(拍手)